【インタビュー】Plane、磨きをかけたバンドサウンドとみずみずしい言葉のニューアルバム『2020 TOKYO』

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その飛行機は今も止まることなく、果てのない空の上を自分達の速度でゆったりと飛んでいる。今年で結成25周年を迎えるPLANE、7年ぶりのニューアルバム『2020 TOKYO』。優れたソングライター&ボーカリスト・キクチユースケを中心に、良質なポップソングとぬくもりあるバンドサウンドに磨きをかけた、みずみずしい歌と言葉にぐっと心をつかまれる全10曲。コーヒー好きの趣味が高じて、今や「コーヒーミュージシャン」として知られるキクチのライフスタイル、バンドへの思い、そして未来への展望について、キクチが経営するギフトスタンド「電波赤丸」からリモート取材でお届けしよう。

■「衣食住」に「音楽」を加えて
■「衣食住音」にしたい


──「コーヒーミュージシャン」を名乗ってるのって、たぶん世界でキクチさん一人ですよね。

キクチユースケ(以下、キクチ):コーヒー豆を売ってるミュージシャンはいますけど、実際に挽いて淹れて売っているミュージシャンはいないと思います(笑)。今はツアー中にコーヒーを売って、次の日にライブをさせてもらえたりとか、コーヒー屋さんとしても呼んでもらえて、ミュージシャンとしても呼んでもらえてという新しい形ができてきました。


▲キクチユースケ

──そもそも、なぜそういう生活スタイルに?

キクチ:きっかけは、2011年の震災のあとから「弾き語りで来てください」と言われる機会が増えて、それまで弾き語りはやっていなかったんですけど、大柴(広己)くんと全国を旅させてもらって、小さなカフェとか、お客さんとすごい近い距離でライブをしました。最初は戸惑ったんですけど、地方に行けば行くほど人が優しいんですよ。近づいてくれる感覚がすごくあって、たとえばライブが終わってからお客さんも一緒にご飯を食べるとか、そういう感覚がだんだんわかってきて、そこでコーヒーを売ろうと思って「コーヒーミュージシャン」と名乗りはじめたんです。コーヒーを売りながら音楽を届ける人という意味で。それにプラスして、2年前ぐらいから内装やデザインのお仕事も始めて、洋服屋、美容室、飲食店、いろんなお店を作ってきて、現場に立たせてもらって。お店の空間をプロデュースするようなことをやりながら、そこに音楽が流れればいいなと思っているんですよね。「衣食住」に「音楽」を加えて「衣食住音」にしたいというのは、昔から僕のテーマとしてあったので、そういうふうになればいいなと最近は考えています。


▲電波赤丸

──その拠点になるのが、今いる場所(祐天寺のギフトスタンド「電波赤丸」)?

キクチ:そうです。もともと「コミュニティラジオでも作れば」と言われて始まった場所なんですけど、内装の仕事をしている時に余った廃材を持って来て壁に貼って、自分好みの内装にして。いろんな人がここを使って、家ではできない配信をしたりとか、アクセサリーを売ってみるとか、自由に使ってもらえればいいなと思っています。一坪しかないので、ギャラリーにするには狭いけど、こういうインタビューを録ったり、映像で話もできるし、小さい公民館みたいになればいいと思って。僕も今(5月中旬)は毎朝5時半に来て、掃除して、8時からツイキャスで配信しているんですよ。LOVE LOVE LOVEというバンドの寺井くんと、お互いひとりっ子なんで、「ひとりっ子クラブ」ということで、そこにゲストも呼んで。だから今、人生始まって以来昼と夜がひっくり返っています。朝型になりました。

──曲作りもそこで?

キクチ:曲は基本的に…ここ数年は大柴くんと近野(淳一/鴉)くんと一緒にツアーに出ているんですけど、オムニバスのCDを作るんですよ。彼らはデスクトップが得意なんですけど、僕はキッチンで一発録りしたみたいな音源で、それをお客さんに買ってもらうんです。、自分だけの作品だったらたぶん売る自信はなかったんですよね。要は大柴くんと近野くんの作品があって、おまけで僕の弾き語りが入っているという(笑)。そういう認識にしてたので、ライブ中に歌詞もメロディも変わるんですけど、そこで曲が育っていったものが7年ぶんぐらいたまってきて。「オリンピックが終わる頃」という曲ができた時に、大柴くんが「この曲を世の中に出したほうがいいんじゃないですか」「この曲をバンドでやったらどうですか」と言ってくれて、それで決まった感じです。


──そもそもバンドとソロは、キクチさんの中でははっきり分けていたもの?

キクチ:バンドで演奏する時は、Planeは三連(音符)が好きなんですよ。今回のアルバムで言うと、「いつかあなたに花束を」という曲は、バンドで鳴らせばこういう仕上がりになるだろうなと思っていた通りになったし、「はじまりのうた」もけっこう前に作った歌なんですけど、バンドでの仕上がりが見えてい。「ここで逆回転のギターが鳴るだろうな」とか、メンバーのクセや個性はだいたいわかるので。そういう意味で言うと、「ぼくたちがやりました」のイントロのギターのフレーズは意外でしたね。新しかった。ちょうど僕がレコーディングに行けなかった日で、あとで聴いて「こういうフレーズが出て来るのはすごいな」と思いましたね。逆に「東京タワー」「夜風」とかは、バンドで鳴るイメージはまったくなくて、「ワーゲンにのって」もそうなんですけど、バンドとしてやったことのないジャンルでした。だから「どっちが伝わるのかな?」という考えで始まったんですけど、どっちも違うものなんだなというふうになりましたね。結局どっちが好きかで、お客さんによって「バンドのほうがいい」という人もいれば「ソロのほうがいい」という人もいるんで、難しいんですけど、でもバンドは一度聴いてほしかったんですよ。この7年間。

──はい。

キクチ:僕のソロを知っているお客さんが多くなって、バンドを知らない人が多くなってきたんですよね。2011年からバンドよりも弾き語りのライブが増えて、弾き語りの人みたいになってきて。でもそこで「バンドを見てみたい」と言ってくれる人もいて、それは非常にうれしいことで、そういう意味では弾き語りをやっていればバンドにも返ってくるし、Planeをやっていたらソロにも返ってくるんだなと思いました。


──このアルバム、歌詞で言うと、タイトルの『2020 TOKYO』もそうだし、「東京タワー」「オリンピックが終わる頃」とか、東京をテーマにした曲がけっこうあります。これは自然に?

キクチ:「東京タワー」という曲は、大柴くんが「東京タワー」という曲を書いてよ、というので書いたんです。アルバムタイトルの『2020 TOKYO』は、僕は今年ちょうど40歳なので、僕の中では二十歳を2回やっている感覚があって、20+20=2020という意味もあります。ただ僕としては、個人的には東京に長く住んでますし、友達も増えたし、住んでる時間も大阪より長くなる現実もありますけど、やっぱり大阪が良いと思うこともあり、四国に行ったら四国はいいなと思うこともあり、東北もいい九州もいいと思うんで。車で旅している時に、よく大柴くんと「将来どこに住みたい?」という話をするんですけど、「ひと月に10日ずつ違うところに住めればいいね」というのが理想なので(笑)。それでこういう場所(電波赤丸)を各地に作れば、泊まるお金もいらないし、人ともゆっくり会話できるし、いろんなことが考えられるかなと思って、今その準備を徐々にしている感じです。もともと一つのところにいられない人間なんで、場所を作ったら一つ終わりなんですよ。満足しちゃう。そこに毎日行って何かしたいというタイプではなくて、今はコロナがあったらから毎日ここに来てるけど、という感じなんですよね。

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