【インタビュー】FAKE TYPE.、異形の傑作『FAKE SWING』完成「日本でエレクトロスウィングを流行らせたい」

■『ONE PIECE』に楽曲提供させてもらったり
■今度はFAKE TYPE.として作品に携われたら

──あと、リリックで思うことは、アオさんがすごいストーリーテラーだということ。物語を作って、言葉にするのがめちゃくちゃうまい。

トップハムハット狂：ありがとうございます。もともと自分はBUMP OF CHICKENが好きで、バンプの曲って物語のものがあるじゃないですか。あれはすごいなとずっと思ってて、いつか自分も挑戦してみたいなということで、エレクトロスウィングとも親和性が高かったので、ストレートに伝わるものではないですけど、ちょっとシニカルなストーリーとの相性がとてもいいと思って、挑戦していくうちに、身に付いたかなという感じですね。

──「Nightmare Parade 2020s」も、物語タイプの曲ですよね。

トップハムハット狂：これもリバイバルで、過去に「Nightmare Parade」という曲があって、悪夢を連想させるような曲調になってるんですけど、それを現代版に落とし込んだ曲ですね。

DYES IWASAKI：令和版『日本昔話』みたいな。

トップハムハット狂：そうそう。“SNSで有名になるぜ”と思ってた人が、調子に乗りすぎて、最後は引退に追い込まれるみたいな簡単なストーリーがあるんですけど。SNSは身近なものなので、共感しやすいかなと思うんですね。



──「Beauty Unique Boutique」も物語ですよね。

トップハムハット狂：そうですね。おしゃれしたことのない女子がおしゃれに目覚めて、おしゃれ中毒になって、おしゃれしてない自分は駄目だと思ったり、周りがもっときれいに見えたり、どんどん追い込まれていって。最後は玄関から家の外に出ることが、ショーの幕が開くみたいな感覚に陥っちゃうくらいヤバくなる、というストーリーです。

──すごい。風刺とメッセージが効いてる。

トップハムハット狂：この曲には裏話的なものがあって、最後はトラップの展開で終わるんですけど、トラップの曲調ってダークな感じになるじゃないですか。ラストがトラップだと、バッドエンドに落とし込まないと歌詞との整合性がとれないなというのがあって、だからこそ生まれた歌詞なのかなと思いますね。

DYES IWASAKI：まず最初に僕がトラックを作るんで。

トップハムハット狂：そのトラックが良かったら、その通りにやりたいと思うんで。そうすると、自然と“ラストがトラップならバッドエンドだ”ってなる。

DYES IWASAKI：それを聞いて、今もう次の曲を作ってるんですけど、最後はトラップで終わらないように、盛り上がって終わる曲にしました（笑）。



──「Deep Sea Swing」や「Knickknack Kingdom」とかも、比喩表現や物語の描写が冴えわたってます。

トップハムハット狂：「Knickknack Kingdom」は、アラジンみたいな世界観で、マーケットでお宝を売買して成り上がる女の子の物語。アラジンといえば魔法のランプ、というところをサンプリングして、魔法のレコードということにして、レコードが廻ってる時に蓄音機のラッパの中から魔神が出て来て、物の真価がわかる目を与えてくれる。マーケットにあるものの真価がわかるから、安く売られているものの中からそれを見つけて、買い占めて、高く売るんだけど。「やりすぎたら駄目」だと魔神がいさめても、女の子は稼ぐことに夢中になって、魔神が離れてしまって、見分ける目をなくしてしまったのみならず、でたらめな価値を持つようになってしまって。偉い人に献上するものを選ぶ時に、全然価値のないものを価値があるものだと思い込んで、それが偉い人にバレて、牢屋に入れられるみたいな、そういう物語なんですよ。これはミュージックビデオを見てもらったらわかりやすいと思います。

──もうこれは現代のグリム童話ですよ。この歌詞にそれだけの情報量を詰め込むなんて、本当にすごい。

DYES IWASAKI：よく書けるなと思います。

トップハムハット狂：もともと童話とか好きなんですよね。現代で起きていることもネタにしたり、自分が書いたテーマとは違う解釈で腑に落ちて、聴いてくれるパターンというか。今回のアルバムはわりと普遍的な内容になってると思うので、それぞれの目線で納得して聴いてもらえる内容になってるのかなと思います。

──ミュージックビデオと並行して楽しんでもらうと、よりFAKE TYPE.の世界がわかる仕掛けになってます。それと同時に、最近は生で見せるライブも積極的にやってますよね。

トップハムハット狂：やっぱりライブを見たいという子がいるので、そういう人たちに対して楽しませてあげたいという気持ちと、正直大変なんですけど、やってみたら楽しいというのがあるんで。

DYES IWASAKI：準備まではけっこう大変なんですけど、当日は超楽しいんですよ。無双ですからね。何を言っても反応あるし、受け入れてくれるし、あったかい感じなんで。

トップハムハット狂：FAKE TYPE.のライブに来てくれる人って、みんなあったかい、いい子が多いので。こっちもすごく安心して楽しくできるので、チャンスがあればライブはやれたらいいなと思いますね。



──12月から始まるツアー＜VIVA LA SWING 2020s＞は、どんな感じになりそうですか。

トップハムハット狂：『FAKE SWING』からの新しい曲もわりとやる予定でいるんですけど、サウンド面もしっかり進化してるし、箱(会場)の鳴りも良くなってると思うんで。そこを体感してほしいという思いです。

──では最後に。10年前には想像もしなかった未来に今立っていて、さらに今後については、どんな夢や目標を描いてますか。

DYES IWASAKI：ずっと言ってるんですけど、YouTubeのチャンネル登録者が100万人にいきたいです。今33万ぐらいかな？ 100万人にいきたくて、それにともなってライブをやる会場も徐々に大きくしていきたいし、Zeppだったり、武道館だったり、大きいステージに立てるようになれたらいいよなって思います。

トップハムハット狂：違う角度で言うと、この間『ONE PIECE』の楽曲提供をさせてもらったんですけど(※Adoが歌う劇場版「ONE PIECE FILM RED」劇中歌「ウタカタララバイ」)、今度はFAKE TYPE.として歌って、何かの作品に携われたらいいのかなというのはありますね。それはすごくやりたいです。

DYES IWASAKI：そうだね。

トップハムハット狂：そういう縁があればいいなと思います。

DYES IWASAKI：あと、機材を豪華にしていきたいですね。

トップハムハット狂：誰か海外のラッパーが言ってたんですけど、「金を稼いだら、まずスタジオを作れ」と。「そこがお金を生み出す工場になるから、売れたら自分のスタジオを作るのが一番スマートなやり方だぞ」って。

DYES IWASAKI：スタジオ作りたいです。作ります。

──いい夢ですね。ぜひ叶えましょう。

DYES IWASAKI：今はぼんやりと、どうしようかなということを考え始めてるところです。頑張ります。

取材・文◎宮本英夫
撮影◎野村雄治




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