【インタビュー】FAKE TYPE.、異形の傑作『FAKE SWING』完成「日本でエレクトロスウィングを流行らせたい」

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FAKE TYPE.が11月16日、メジャー1stアルバム『FAKE SWING』をリリースした。同アルバムにはメジャーデビュー前の「At Atelier」や「Deep See Swing」ほか、9月に配信開始された「Beauty Unique Boutique」を含む10曲を収録。映画『ONE PIECE FILM RED』ではAdoが劇中で歌姫ウタとして歌唱する楽曲を提供したことでも話題を集める音楽ユニットの最新作の完成だ。

◆FAKE TYPE. 画像 / 動画

ラップもロックもジャズもダンスも越えた、独創的な音のカタマリが有無を言わさず体を揺さぶる。超絶スキルの早口ラップが、フロウとライムと意味をごちゃまぜにした言葉の快感を運んでくる。そして何度も聴くうちに、秘めた言葉の意味深さに気づいて感動の波が押し寄せる。日本のラップ界が生んだ二つの才能、トップハムハット狂とDYES IWASAKIによるユニット、FAKE TYPE.のメジャーレーベル初アルバム『FAKE SWING』は、全編エレクトロスウィングでリスナーの耳を撃ち抜く強烈な一撃だ。彼らはいかにしてこの異形の傑作を作り上げたのか?

YouTube、サブスク、SNSを日常とする若い世代の圧倒的な支持を受けて新たなシーンの扉を開く、二人の鬼才の言葉を聞こう。

   ◆   ◆   ◆

■FAKE TYPE.の代表作になるアルバム
■大きな可能性を感じてやったみた

──個人的には僕がFAKE TYPE.を認知したのは5年前とかで、当時はネットラップ出身という言い方があったと思うんですけど、さすがにもう言われないですよね。

トップハムハット狂:そうですね。たまに「ルーツ的には?」という質問をされて、こんな感じでネットラップやってたんですよって言うことはあります。たまにですけど。

DYES IWASAKI:たぶんシーンとしては、もうないんじゃないかな。

トップハムハット狂:でもね、面白いのが、昔のネットラップって、インターネットにオリジナルのラップをアップロードする言葉だったんですけど、今の“ネットラップ”って、インターネット上でMCバトルをするという意味合いで使われてるんですよ。

DYES IWASAKI:そうなの?

トップハムハット狂:ヤバくないですか? 数年前に生まれた言葉の意味合いが、もう変わってる。


▲トップハムハット狂(ラッパー)

──しまった。知らなかった。

DYES IWASAKI:僕も知らなかった(笑)。

トップハムハット狂:それもちょっと前のことで、ショートとかTikTokが流行りに流行って生まれたカルチャーなんですよ。Discordで通話を繋いでMCバトルするみたいなことを、若い子たちがネットラップと呼ぶみたいな。

──そう考えると、もはや二人もベテランの域ですよね。

トップハムハット狂:そうですよね。僕らはネットラップの初期からいたので、ニコニコ動画が始まる前からやってたもんね? ニコラップ以前のネットラッパーなんで。

DYES IWASAKI:2004年ぐらいに、“歌詞” “ヒップホップ”で検索すると、一番上に出てくるサイトがあって、そこにUnderground Theaterzという自作の曲を投稿する掲示板があって、そこで活動してました。

──あの頃描いた未来に、今立っているわけですけど、どうですか。こんな未来を想像していましたか。

トップハムハット狂:本当にありがたいことに、FAKE TYPE.を聴いてくれてる人が増えてるなということを肌で感じるので。あの頃思ってたような展開かはわからないですけど、いい方向には進めてるのかな?と感じます。

DYES IWASAKI:間違いない。

──どんな未来を描いていたんですか。

DYES IWASAKI:たぶん、今のような未来は描けてないです。“チャンネル登録10万人行ったらいいな”とか、そのくらいの夢でしたね。

トップハムハット狂:そもそもネットラップをやってたから、いちラッパーとして活躍できたらうれしいなという、根本的なところはそれだったと思うんですけど、途中から変わりましたね。ラッパーというのは、生きざまを伴ってないと説得力がない。でも自分にはそんな生き様も過去もないし、だから自分なりの表現として何かできないかな?と探してる時に、DYESが誘ってくれて、その中に自分なりのラッパー像をみつけていった感じだと思うんですね。


▲DYES IWASAKI (トラックメーカー)

──そして、いよいよリリースされるメジャーレーベルからの初アルバム『FAKE SWING』。マジでヤバいです。爆音で聴くと頭がくらくらするような、ヤバイ何かが入ってる感じの、すごい中毒性の強いアルバム。

トップハムハット狂:初の全編エレクトロスウィングですね。

──エレクトロスウィングで押しまくるというアイデアは、最初からDYESさんの頭の中にあったわけですか。

DYES IWASAKI:そうですね。エレクトロスウィングのアルバムを作ろうということを去年11月ぐらいに構想して、そこから制作を始めました。エレクトロスウィングを作るのがすごく楽しくて、もっとやりたい、日本でエレクトロスウィングを流行らせたいという気持ちがあったんです。もともとFAKE TYPE.が2013年頃に、当時日本では誰もやってなかったエレクトロスウィングをやり始めて、そこからのスタートだったんですけど、最初は苦手意識が強かったんですよ。ブラス(管楽器)を人に頼む頭が全然なくて、サンプリング主体で作ってたんで、ネタありきみたいなところがあって、作るのが苦しかったんですよね。そのあと活動休止(2017~2020年)してから、打ち込みでエレクトロスウィングを作るようになっていって、ようやく自分のやりたいことをできるようになってきたなと感じ始めたタイミングが、活動再開した直後ぐらい。最近は、若い世代でエレクトロスウィングを作ってる子も現れてきてるから、ここでFAKE TYPE.の代表作になるようなアルバムを作りたいと思って、そこからスタートしました。

──お手本はこれだぞと。実際、作り終えて、アルバムの手ごたえは?

DYES IWASAKI:わりかし良くできたんじゃないかな?と思ってはいるんですけどね。自分の表現したいことを一通り表現できたのかなとは思っているので。

──前作『FAKE LAND』(2021年/通算4thフルアルバム)と比べて、何が一番違いますか。

DYES IWASAKI:『FAKE LAND』の延長線上ではあるんですけど、あの時よりもエレクトロスウィングを作れるようになってるんで、音の入れ方とかは変わってるのかなと思いますね。細かい部分がアップデートされてるイメージですかね。

──音数が増えた印象はありますね。分厚くなった。

DYES IWASAKI:増えましたね。そこはたぶん意識してると思います。

──エレクトロスウィングって、ロカビリーっぽくもあるし、ジャズっぽさもあって、ダンスミュージックだから、巻き込み力がすごいんですよ。

DYES IWASAKI:未だに日本では、エレクトロスウィングというものが流行り切っていないので、そこに大きな可能性を感じてやったみたところもあります。ようやく最近になって、「エレクトロスウィングを作れます」と言えるようになったんじゃないかなと思ってます。ビッグバンドはまだ苦手で、そこまで行っちゃうと専門外なんですけど、エレクトロスウィングなら無限に作れるなという気持ちにはなれました。

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