【インタビュー】ハナフサマユ、2ndアルバムに描いた等身大の物語「ひとりの人生と結晶の輝きを」

■たくさんの人に届けないと
■結晶として輝けないなって

──自然体で歌われていることが、いい効果をもたらしているんですね。ハナフサさんご自身がボーカリストとして印象の強い曲をあえて挙げるとしたら？

ハナフサ：強いて言えば「夕焼けカタルシス」ですね。もともとは、AメロBメロとサビが別々の曲で、それをひとつにしたんです。まず、AメロBメロの土台を作った曲が「夕焼けカタルシス」の基になっているんですが、“サビはこれじゃない”ってずっと感じていまして。そのとき、“サビはすごくいいけどAメロBメロは違う”と思っていた曲があって（笑）。その両方のいいところを組み合わせることにしたんです。

──パズルがうまく組み合わさったということだと思うんですけど、「メッセージ、キーワード、主人公からイメージを膨らませて」という作り方が進化した形でしょうか。

ハナフサ：はい。なので、これは奇跡かもしれないと（笑）。普通だったらそんなことをしたら合うわけがないんですけど、歌詞を変えたり、ストーリー自体を見直したら、すごくきれいにはまってくれたんです。結果、曲としてすごくいいものができたと思っています。ところが、Aメロの低音域から、最後のフェイクのハイトーンまで、感情を込めて1曲として歌うことが難しい曲になってしまったという。ボーカリストとして挑戦の曲でもあります。



──Aメロのアンニュイな雰囲気と感情が高まるサビの対比は聴き応えがあります。また、たとえば「メリーゴーランド」のAメロでは、他の曲とは異なるクールな歌を聴くことができますね。

ハナフサ：少しヤケになっているような歌い方をしているんです。全体として私は、言葉を伝えたい、メッセージを届けたいという思いのもとに歌うんですけど、「メリーゴーランド」ではそれをやめて。グルーヴ感を大事にしたかったので、わりと言葉を切らないようにしています。

──結果、普段は柔和な人が今日は刺々しくて怖い…というような新たな一面も垣間見られました。

ハナフサ：そうかもしれませんね（笑）。

──ニュアンスという意味では、「だらしない」では間奏のリーディングとラップの中間のようなボーカルも聴くことができます。

ハナフサ：ドラマ『今夜、わたしはカラダで恋をする。』主題歌として書き下ろした曲だったんですが、制作期間がすごく短かったので、ホテルに缶詰め状態で作ったんです。このドラマ自体が少し大人のドラマで、私の恋愛経験にないようなお話だったので、最初は書けない！と思っていたんですね。そうしたら、ドラマの主人公が憑依したといいますか。書けないでは許されないとなったときに、主人公になりきるしかないと。すると筆が走って、ここはセリフだなというアイデアも自然と湧いてきまして。なので、アイディアとして面白いとか、頭で考えたわけではないんです。


──『結晶』には新たな挑戦も、ハナフサさんならではの世界観も詰まった良質なアルバムに仕上がりました。完成した今、どんなことを感じていますか？

ハナフサ：ジャケットとかも決まって、収録曲のレコーディングも全部終わってちょっとホッとしている反面、これをたくさんの人に届けないと結晶として輝けないなというのがあって。

──アートワークはもちろんですが、メガネを外したりとか髪型とかスタイリングを含めてハナフサさんご自身も変化して輝いています。

ハナフサ：それこそチームの方々と相談しながら、新たなスタイルにしました。私のことを知ってくださっている方には、『結晶』を聴くと、また新たなハナフサマユを感じてもらえると思いますし、初めての方にはハナフサマユにはいろいろな表情があると感じていただけるような楽曲が詰まっていると思うんですね。私の中には伝えたいメッセージがたくさんあるので。それをスタイルからも感じ取っていただけたら嬉しいですね。

──この秋のフェスやイベントなどでいろいろな方々と出会うことになるでしょうし。

ハナフサ：はい。フェスでは私を観に来てくれた方にもそうでない方にも、メッセージを受け取ってほしいですね。私のライブは、ひとりで弾き語り、バイオリンの方とふたり、ピアノの方とふたり、などのバリエーションがあるんですが、バンドをバックにという形はあまり多くないんです。というのも、よりシンプルな形で伝えることや、声とバイオリンが混ざったサウンドも好きなので。より多くの人に届けられるように、精いっぱい歌いたいと思っています。

取材・文◎村上孝之
撮影◎緒車寿一





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