【インタビュー】MARSBERG SUBWAY SYSTEMは、なぜ敢えてロックバンドを選んだのか?「ロマンを忘れたくない」
■今までの活動って足し算ばっかだった
■無駄な味付けはしないほうがいい
──P-90搭載のレスポールスタンダードって、その多くがゴールドトップだと思うんですけど、エボニーカラーってなかなか珍しくないですか?
松本:すごく良いところ突いてくれますね(笑)。
古川:こだわりだもんね。
松本:エボニーで'56年のリイシューってなくて、それこそ元々のゴールドトップだけなんですよ。つまりリフィニッシュしたんです。
──えっ⁉ ゴールドトップをオールリフィニッシュですか。それぐらいエボニーにしたかったということですよね?
松本:メンバーのみんなも「ゴールドトップ渋いね」と言ってくれてて、僕も好きだからそのままでも良かったんですけど、なんとなくエボニーのレスポールスタンダードって昔から好きで。そんなに持っている人いないじゃないですか。それこそハムバッカーが付いているものだったりとか、レスポールカスタムとかだったらありますけど、スタンダードで特にP-90が載っているエボニーはなかなか見ないから、人が持っていないものを持ちたいという考えでした。
──めちゃめちゃ熱いじゃないですか。
松本:実はネックも削っていて、シェイプを薄くしているんです。このバンドのために作ったギターみたいなもんですかね。
▲松本翔(G)
──足元のエフェクターにも変化はありましたか?
松本:足元は今まで使っていた機材とほとんど変わってないんですけど、足元はそんなに要らない気がしてきて。エフェクターはベーシック、リード、空間系、ワウなど、8個くらい繋いでますけど、このバンドをやってるうちに4つぐらいあればいいと思うようになったので、今は減らしたいんですよね。
古川:それは楽しいからじゃない?
松本:そう。
古川:僕もギターの音作りに関しては、ギタリストじゃないからコンプレックスとか、不安とかがあって、確信が持てなかったんですけど、今は出た音が気持ちいいから、これで良いんだって思えるんです。何か引き算できるよね。
松本:そうそう。今までの活動って足し算ばっかだったんです。それってたぶん不安だったと言うか、自信が持てなかったからだと思うんですよ。
──よけいな調味料は要らない。
松本:そういう話もよくするんですけど、素材の味を生かすじゃないですけど、調味料を入れ始めると、元の味がわからなくなってくる。だから、無駄な味付けはしないほうがいい。
──そのほうが4人の個性も見えてきますよね。
古川:俺らロックバンドが生きてる意味ってこれだよね。ケミカルなことってできると思うんですけど、塩で食えるのは、プレイヤーだからだよねみたいな。譜面には起こせないけど、気持ちいい。この感覚って超大事だと思うんですよ。
松本:バンドって忙しくなってくると、そういう気持ちを忘れがちになってしまうんですけど、絶対に忘れないようにしないと。
古川:何たって再婚だからね(笑)。大事にできると思います。結婚したことないですけど、結婚ってこういうものだと思うんですよ。再婚だからこそできることもある。
松本:酸いも甘いもそれぞれ味わってきたので。だからって遠慮するわけではないですけど、ぶつかるところはぶつかって、感謝と尊敬は忘れずにバンドをやりたい。結局、みんなバンドがやりたいんですよ。バンドのロマンを忘れたくない。
古川:MARSBERGをやりながら、「本当にバンド好きなんだな、こいつら」と思いますもん(笑)。
松本:僕らがMARSBERGとしてどんどん進んでいくことが、それぞれが今まで活動してきたバンドに対する恩返しにもなると思っています。
▲古川貴之(Vo, G)
──古川さんは曲を作るにあたっては、何か変化は?
古川:まったくないです。ピアノでも作るようになりましたけど、いつもと同じことをしています。何も考えてない(笑)。ただ、バンドで合わせていく中で、こういうものが欲しいという話し合いはすごくしていて、こうやってバンドの音って出来上がっていくんだなって改めて実感しています。僕にとって、プロとして真剣にやる2個目のバンドなんですよ。「こういう感じで」って言うと、みんなレスポンスが早いから、スタジオで曲を作るのがすごく楽しいんですよ。だから、いろいろなことを試しているんです。
松本:バンドって楽しく曲を作ることがめちゃめちゃ大事ですよね。行き詰った時の空気感って何も良いものを生まない。
古川:今日のスタジオでも、ここからどうしようかなってモヤモヤしていたネタを持っていって、みんなでやったらどんどん広がっていって、曲作りって楽だなって思いました(笑)。広がり方が早いと言うか、熱がすぐ伝わる。燃え広がるのが早いんですよ。音楽って響く相手がいないとわからない。そこがおもしろい。
──それはバンドならではですよね?
松本:そうですね。EPの「MARSBERG SUBWAY SYSTEM」と「0.14パーセントの星屑」は、みんなで作っていったような気がします。
古川:「MARSBERG SUBWAY SYSTEM」に関しては別のリフがあったんですけど、まっつんが新しいリフを付けてくれて、そっちのほうがカッコいいからって、今のイントロになったりね。
松本:「0.14パーセントの星屑」のAメロのコードもそうだよね。
古川:曲に関してはTHE PINBALLSよりも全員で作っている感覚が強いかな。
──アルバムがとても楽しみになりました。アルバムは2023年にリリースしたいと考えているそうですね?
松本:はい。そこを目指してがんばります。
──アルバムの制作も含め、今後はどんな活動をしていきたいと考えていますか?
古川: 3人が「Zepp DiverCityに、また立たせてやりたい」と言ってくれるんですよ。だから、それを見据えて、「今度ツアーするとしたら、そのファイナルは新代田FEVERかな」って言ったら、みんなが「小さいよ」って。新代田FEVER、もちろん良いハコだと思いますけど、キャパという意味で、「だったら渋谷CLUB QUATTROだろう」と英さんが言ってくれたんです。すごいなと思いました。THE PINBALLSの時は、いつも僕がそういうことを言う立場だったんですよ。そしたら、「QUATTROを目指そう。目標は高く行こう」って僕よりも高い熱量が返ってきて、バンドって良いなって思いました。なので、とりあえずはZepp DiverCityを目指してがんばっていきます。
──古川さんはTHE PINBALLS時代よりも気持ちが楽なんじゃないですか?
松本:明るくなったって言われるよね。
古川:THE PINBALLSの時はバンドを背負ってたところもちょっとあったんですよ。今は4人の内の1人って気持ちなんです。ちょっと楽させてもらってます(笑)。
松本:彼の目利きも良かったと思うんですけど、結果本当に良いメンバーが揃ったと思います。
古川:はまったね。
松本:演奏の腕前は事前にチェックできても、人間性までは、実際に同じ時間を過ごしてみないとわからないじゃないですか。そういう意味では、たまたま人間的にみんな近しい部分があったんですよ。そこも奇跡だったと思います。みんな、なんだかんだ暑苦しいタイプなんだと思います(笑)。その中でも僕ら2人は特に温度が高い的な。
古川:そんなメンバーにまた出会えるなんてすごいと思います。本当に無駄にしちゃいけないと言うか、理想のバンドって、なかなか組めないと思うんですけど、僕は2つ組めた。臨死体験したみたいな感じもあるんです(笑)。1回、天国のお花畑を見て、あの先には安らぎがあるって思ったところから目が覚めたみたいな。だからTHE PINBALLSも含め、すべてがありがたい。普通、蘇ることができずに天国に行くと思うんですよ。天国を垣間見たからこそ、今、全てが生き生きとして見えるみたいな気がしますね。
松本:バンドは本当に奇跡だと思います。でも、このメンバーが揃ったのも古川の魅力と彼の今までのがんばりがあったからだと思うので、まずはそこに感謝したいですね。
取材・文◎山口智男
■1st E.P.『MARSBERG SUBWAY SYSTEM』
MBSS-0001 / 1,500yen (tax-in)
※会場限定販売
1. MARSBERG SUBWAY SYSTEM
2. 0.14パーセントの星屑
3. シャーリーブラウン
4. 太陽と雲雀
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