【インタビュー】MARSBERG SUBWAY SYSTEMは、なぜ敢えてロックバンドを選んだのか?「ロマンを忘れたくない」
今年2022年5月8日、新たなロックバンドが誕生した。その名は、MARSBERG SUBWAY SYSTEM。2021年11月24日に活動休止したTHE PINBALLSの古川貴之(Vo, G)と2019年11月22日に解散したOutside dandyの松本翔(G)が中心となり結成。そこにJake stone garageを経て、現在はbrainchild’s、Uniollaでもプレイしている岩中英明(Dr)とOutside dandy時代の松本の盟友、鈴木勇真(B)が加わり、本格的に動き出したバンドは5月8日、第1弾MV「太陽と雲雀」を発表。その約1か月後の6月12日に渋谷Spotify O-Crestでデビューライブ<Pathfinder>を開催し、200人を超える動員を記録するという幸先の良いスタートを切った。そして彼らは現在、ライブ活動を続けながら、会場限定の1st EPに続くアルバムの制作に取り組んでいるという。
◆MARSBERG SUBWAY SYSTEM 画像 / 動画
ライブハウスを拠点にしているロックバンドに興味がある人なら、きっと気になるに違いない顔ぶれが揃ったいきさつもさることながら、インタビューをオファーした筆者の一番の興味は、なぜまたロックバンドだったのか、その理由だった。メンバーそれぞれにソロやセッションプレイヤーという選択肢もあったはずだが、この時代に、なぜ敢えてロックバンドを選んだのか? その理由を聞きたいと思っていたところ、バンドを代表して古川と松本がはっきりと答えてくれた。
それを聞けただけで大満足。ロックバンドがこの世で一番カッコいいものだと考えている筆者は、第2の音楽人生をまっとうするため、情熱と信念を持って、活動を始めたMARSBERG SUBWAY SYSTEMを心から応援していこうと思ったのだった。
◆ ◆ ◆
■楽器ってこんなにすごいんだって
■これがバンドなんだってゾクゾクしてます
──MARSBERG SUBWAY SYSTEM(以下MARSBERG)の結成は、今年2022年に入ってからだったんでしょうか?
古川:結成は2022年の5月8日になると思うんですけど、僕個人としてはTHE PINBALLSが活動休止することがはっきりした頃から新しいバンドのことは考えながら、曲も作り始めていました。「太陽と雲雀」もこのバンドを始めてから作ったわけではなくて、2021年の冬から2022年の春にかけてくらいには作っていた気がします。
──つまり、古川さんはTHE PINBALLSの活動休止後もまたバンドがやりたかったということですよね?
古川:はい。バンドはやりたかったです。ちなみにMARSBERGのメンバー3人はTHE PINBALLSが活動休止前にZepp DiverCityでやったラストライブ(2021年11月24日)を観に来てくれたんですよ。
──そうだったんですか。
古川:まだバンドは始まってなかったですけど、その頃にはまっつん(松本翔)、勇真君(鈴木勇真)、英さん(岩中英明)には声をかけていたんです。
▲古川貴之(Vo, G)
──となると、MARSBERGの4人のそもそもの出会いはいつなんですか?
松本:けっこう前ですよ。
古川:2012年ぐらいかな。
松本:僕が以前活動していたOutside dandyがTHE PINBALLSと対バンした時に知り合いました。
古川:1stミニアルバム『ten bear(s)』を出した後だったから、2011年か、2012年には知り合っていると思います。
松本:ただ、その時はそんなに仲良くならなくて。先輩バンドだったから「これからもよろしくお願いします」とか、形通りの挨拶をした程度でした。それから対バンを重ねていくうちに自然と仲良くなっていって、連絡先を交換して、2人で食事に行ったりする機会が増えていったんです。
古川:僕が彼のファンだったんですよ(笑)。初めて対バンした時から、Outside dandy良いなって。メンバー4人とも素晴らしかったけど、特にギターとベースがすごいと思ってました。僕はその頃から一生、ミュージシャンとして生きていくという気持ちを持っていたので、この2人は要チェック。いつか何かを頼むだろうと思ってたんです。対バンで、いいプレイヤーを見ると、この人の名前は覚えておこうと思っていたんですけど、まっつんと勇真君の名前は真っ先に憶えましたね。
松本:チェック入りました(笑)。
──じゃあ、THE PINBALLSの活動休止が決まったとき、まず松本さんと鈴木さんに声を掛けたわけですね。
古川:はい。もちろん、英さんにも。全員、僕のドラフト1位なんですよ(笑)。
松本:ははは。
──岩中さんと知り合ったのも、どこかで対バンして?
古川:そうです。Jake stone garage時代に対バンしました。その時も、この人の名前は憶えておこうって(笑)。
松本:チェック入りました(笑)。
▲松本翔(G)
──松本さん、鈴木さん、岩中さんはTHE PINBALLSの活動休止前のラストライブを観に来ていたそうですが、その時にはすでに4人で会って、新バンド結成の話はしていたんですか?
古川:スタジオに入ってたよね?
松本:1回くらいは入ってたかな。遊び程度に入ってみようって感じで。
古川:どんな感じか、曲は聴いてもらっていた気はします。ドラムだけオーディションじゃないですけど、やっぱり一番大事だから、感触を実際に確かめてからやりたいという話になったので、何人かとスタジオに入って合わせましたけど。
──その中で岩中さんが一番しっくり来た。
古川:みんな、上手な人ばかりだったんですけど、このバンドは英さんが一番合ったんですよ。
──松本さんはOutside dandyが2019年11月に解散してからは、どんな活動をしていたんですか?
松本:大阪で活動していたバンドからオファーを受けて、そのメンバーとして活動していました。ただ、コロナ禍と重なってしまい思うように活動できない時期が続いていた中、2021年6月に活動休止することになったんです。バンドの活動拠点が大阪だったのでそれなりの覚悟を持って移住しましたが、バンドが動かなくなってしまった以上、元々生活していた場所ではない大阪に残る理由がなくなってしまい、活動休止と同時に脱退を決め、一度フリーになる決意で、また東京に戻ってきたんです。
──そこで古川さんから声を掛けられた。
松本:ええ。本当に奇跡的なタイミングだったと思います。古川は元々、大好きなボーカリストだったし、Outside dandyの解散が決まった時も「ギターを続けてほしい」と、それだけを伝えるために会いに来てくれたり。
古川:そうだったね。
松本:僕はギタリストなので、誰かが歌ってくれないと、ギターが弾けない。でも、だからと言って、誰でもいいわけではない。そんな時、昔から好きだったボーカリストと一緒にできるチャンスが訪れるなんて、本当に奇跡だったと思います。
古川:「何か一緒にやりたい」とか、「君、すごいよ」とかっていうのは、僕からずっと言ってたと思います。僕は一生音楽が好きだから、プロアマ関係なく、たぶんずっとやり続けるだろうなと思っていたので、良いプレイヤーを見ると、何かいつか一緒にできたらいいねって話を良くするんです。実は、まっつんと(THE PINBALLSの)中屋(智裕)に声を掛けたんですけど、中屋は「うれしいけど、THE PINBALLSがどうしてもイメージされちゃうから」って。5人もありだと思っていたんです。まっつんともうひとり、凄腕ギタリストを2人入れて、僕は弾かなくてもいいかなって。華のあるギタリストが2人いるバンドも好きなんですよ。
▲MARSBERG SUBWAY SYSTEM
──ところで、なぜバンドだったのでしょうか? たとえば、古川さんだったらソロでバックバンドを付けてという選択肢もあったと思うし、松本さんだったらセッションギタリスト、サポートギタリストという選択肢もあったと思うんですよ。おふたりともバンドを経験してきて、バンドゆえのデメリットと言うか、メンバー全員の気持ちが1つにならないとうまく転がっていかないということもわかっているんじゃないかと思うのですが、それでもなおバンドを組みたかったのは、なぜなのでしょうか?
古川:THE PINBALLSは良いバンドだったんですけど、あのバンドを進めるにあたって、僕はけっこううるさい嫁みたいな感じだったと思うんですよ。「もっとこっち見てよ」とか、「もっとお出かけしましょうよ」とか、「家庭内をもっと明るくするためにこんなルールを考えたんだけど」とかみたいに(笑)。それで、お父さんは「うんうん、わかった。家庭のことはおまえに任せる」って感じだったと思うんですけど、どこかで、そういう奥さんが夢を見てるみたいに「私もたまにはパーティドレスを着て、だんなさんと出かけてみたい」という悔いがずっとあったんです。「もっとキャピキャピしたい」とか、「もっとガチガチにぶつかってみたい」とか、バンドという家庭内にやってみたいことはいっぱいあったんですよ。「メンバー4人で暮らしてみたい」とか、「そうしたらバンドはどうなるんだろう」とか。そこは自分がうるさかったと思うんですよ。実際、「メンバー4人で住んだら絶対いいよ」って言ったら、「いや、絶対ムリだ。24時間バンドになっちゃうよ」って言われましたけど(笑)。だから、THE PINBALLSが活動休止した時もバンドという夢が宙ぶらりんのままだったんです。
──古川さんの中で、バンドとしてできる可能性をまだ全部やりきっていない、と?
古川:やりきっていない気がします。逆に言うと、THE PINBALLSのほうがちょっとソロバンドっぽかった感じが自分の中ではあります。個々のこだわりが強い人達と対等にやり合ってみたらどうなるんだろうという気持ちがずっとあったんですよ。THE PINBALLSの場合は、みんな、僕の意見を尊重してくれたんですけど、僕に食ってかかるような人だったらどうなんだろうっていうのはありました。育ててもらったという気持ちもあるんですけど、バンドであるからには、僕は自分についてきてくれるか、そうでなければ対等なミュージシャンを求めていたんだと思います。中屋との関係はヒリヒリする感じがあったとは思います。良い緊張感を持った関係でいれたというか、良いライバル同士、ミュージシャンとして対等だったのかもしれないです。
──MARSBERGの3人に対しては、それが期待できる。
古川:もう期待以上ですね。ずっとスタジオで、「すごい!すごい!」ってバカみたいに言ってますから(笑)。楽器ってこんなにすごいんだって改めて思いました。歌が食われますね。言葉とメロディで“愛してる”って歌っても、“愛してる”ってそれ以上に訴えかける音が鳴っているから持って行かれる。やばいってなります。でも、これがバンドなんだってゾクゾクもしています。
──松本さんはバンドに対して、どんなこだわりや愛着がありますか?
松本:僕は元々、バンドのギタリストとしてがんばっていきたいという目標があって上京してきました。だから、バンド以外の場所でギターを弾くことに興味がない。スタジオミュージシャン、サポートギタリストという選択肢もなかったです。ギターが弾けるなら何でもいいという考えは全然なくて、やっぱりバンドのギタリストとして生きていきたいという気持ちは何十年経った今でも変わってないんですよね。以前やっていたOutside dandyというバンドも夢半ば解散してしまい、その後、声を掛けてくれたバンドも情勢との兼ね合いでうまく行かなかった中で、さっきの話に戻りますけど、古川貴之というボーカリストが声を掛けてくれた今っていうのは、僕の中では、やる以外の選択肢はなかったタイミングだったと思います。
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