【インタビュー】MARSBERG SUBWAY SYSTEMは、なぜ敢えてロックバンドを選んだのか?「ロマンを忘れたくない」

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■この人、まだこんな曲が書けるんだって
■だからこのバンドのきっけかけになった曲

──今現在、レパートリーが9曲ぐらいある中から5月8日に「太陽と雲雀」を第1弾ミュージックビデオとして発表したのはどんな理由からだったんですか?

古川:いつ音楽をやめてもいい状況だったと思うんですよ。僕がやめても困る人がいるわけではなかったので。もちろん、みんな応援してくれてたとは思うんですけど、THE PINBALLSという15年ぐらいがんばったバンドが終わるなら、一緒にやめるほうが美しいと思うんですよね。そのほうがカッコいいし、いい思い出だけが残るし、これから失敗しないで済むじゃないですか。だけど、たとえ醜いことになってもやりたいという気持ちが全然消えなくて、しがみついたり、無様な姿を見せたりしても、まだ掴みきれてないものがある気がしたんです。歌もまだうまくなっている気がして、まだやりたいという気持ちが大きかったんです。正直、もったいないと思いました。もっと上手になれるという気持ちがまだあったんです。上手になれるっていうか、楽しんで歌えているっていう。そんな状況が、飛べないのにがんばって飛ぼうとしている鳥のような気がして、翼のない鳥が太陽の中に突っ込んでいって、体を焼きながら消えてしまうイメージが自分の中に浮かんできたんです。蝋の翼で飛んでいったイカロスの話じゃないですけど、最後は太陽の光に身を焦がして、消えていきたい。その太陽に突入する気持ちを歌ったのが「太陽と雲雀」って曲で、まっつんに「この曲を最初のミュージックビデオにしたい」と言ったら、「もう少しテンポがある曲のほうがわかりやすい」と言われたんですけど、「この曲だったらあと15年、人を説得して回れる気がする」って言って、1曲目にさせてもらいました。

松本:今までやってきた活動の流れを考えると、アップテンポの曲のほうがインパクトはあるんじゃないかという印象はどうしてもあったんですけど、それを超える気持ちが古川にあったから。彼と新しいバンドをやることになったとき、最初に弾き語りで聴かせてくれた曲が「太陽と雲雀」だったんです。その時、泣きそうになっちゃって。正直、一緒にやろうと決めたものの、ほんの少しだけ不安があったんですよ。大丈夫なんだろうかって。

古川:曲もなかったしね。

松本:それもあるし、やりたいという気持ちはあるんだけど、どうしてもTHE PINBALLSのイメージがある中、どんなふうに活動していけばいいんだろうと考えていたとき、「太陽と雲雀」を聴いて、これならできると思えたんです。「この人、まだこんな曲が書けるんだ」って素直に思いました。だからこのバンドのきっけかけになった曲。僕の中でも大事な曲なんです。今でも「太陽と雲雀」を演奏していると、2人でスタジオに入っていた時のことを思い出すんですよ。結局、音楽ってインパクトじゃなくて、そういう気持ちが一番大事なんだと思います。今では「太陽と雲雀」を最初に発表してよかったし、それしかなかったと思います。


──「太陽と雲雀」を最初に作ってから、その後、曲は速いペースで作っていったんですか?

古川:その次に「シャーリーブラウン」ができた気がします。

──EPにはその2曲に「MARSBERG SUBWAY SYSTEM」と「0.14パーセントの星屑」を加えた計4曲が収録されています。「太陽と雲雀」以外の3曲は、どんなふうに選んだんですか?

古川:その時あったのが、その3曲だったんです。

松本:どれをリードにしてもいいと思えるくらい良い作品に仕上がったと思います。

古川:頭の中にはもうちょっと宇宙が広がっているんですけど、それは現在、制作を進めているアルバムで表現できたらいいなと思っています。

──どんな宇宙が広がっているんですか?

古川:MRASBERG SUBWAY SYSTEMというバンド名を考えたとき、僕のクセなんですけど、「太陽と雲雀」からの連想で、銀河系みたいなと言うか、太陽を中心に水金地火木土天海冥という惑星があるような曲の並びにできたらいなと思ったんです。だから、バンドのロゴマークにも惑星の軌道みたいなものを描いてもらったんですけど、まずはアルバムに向けて、僕らが住む太陽系を意識して、曲を作っているんです。

──あぁ、それで「金星」という曲があったり、「廃棄物の月」という曲があったりするわけですね。

古川:そうです。「シャーリーブラウン」と、まだライブでしかやっていない「昨日の未来」は、地上の暮らしを描いているという意味で、地球なんですけど、「0.14パーセントの星屑」は惑星と言うよりは、地球から見ている夜空のイメージです。

──0.14%というのは、太陽系の中で太陽以外の惑星が占めている割合だそうですね。

古川:そうなんです。その他、これから銀河系の他の天体や彗星の曲も作りたいと思っているんです。


──MARSBERG SUBWAT SYSTEMというバンド名はどんなところから?

古川:火星の地下に氷山が眠っていて、そこに地下鉄が通ってたり、廃墟があったりしたらおもしろいというイメージから付けました。

──あ、MARSBERGのMARSは火星だったんですね。

古川:そうです。MARSと氷山を意味するICEBERGをくっつけたんです。BERGだけだと、山という意味にしかならないんですけど、そこはまあいいかな。そしたらドイツにMARSBERGって町があるらしくて。

──MARSBERGで調べたら、マルスベルクというドイツの町が出てきて、バンド名はそこから付けたんだとばかり思っていました。

古川:いえ、偶然です。僕もびっくりしました。熱い面と冷たい面とか、優しさと狂気とか、そういう二面性が好きなので、火と氷の山、良いなと思いました。

──そして、そこに地下鉄が走っている、と。

古川:そういうちょっとわけがわからないものに出会いたいんです。

──現在、銀河や太陽系をイメージしながら作っている曲は、さらにアプローチも広がっているんですか?

古川:そうですね。どの曲もカッコよくて(笑)。早く音源にしたいんですよ。みんな、ビビると思います。一風変わったリズムの曲もあるし、ちょっとアダルトな雰囲気の曲もあるし、良い曲と言うか、良い惑星がいっぱい集まってるんですよ(笑)。メンバーはみんな上手だから、僕がやりたいことを噛み砕いて、形にしてくれるんです。

──そこは自由に発想を広げて?

松本:そうですね。そこで制限を作ってしまったら楽しくないと思うんですよ。せっかくそれぞれ第2の音楽人生じゃないですけど、もう1回、夢を掴みにいこうと思えるメンバーが揃って、走り始めている以上、迎合しちゃいけないと言うか、流行の音楽を意識して媚を売っても意味がないと思うんですよね。そこに価値は見出していない。それよりも古川が生み出したものに僕ら3人ができる最大のアプローチで完成される曲がMARSBERGの曲だと思うので、それが正解なのか、不正解なのかということは考えずに100%の力で精一杯作っています。


──ところで、鈴木さんはOutside dandy時代、ベースを構える位置がけっこう上だったという印象があるのですが。

松本:あぁ、今はちょっと下げてますね。彼は今まで指弾きしかやらなかったんですけど、ピック弾きもこのバンドで挑戦して、Outside dandy時代とは違うアプローチをしていくための変化だと思います。それも含め、MARSBERGにおける彼の音のこだわりはなかなかすごいものがありますよ。

──松本さんはいかがですか。プレイや音作りに変化はありましたか?

松本:ギターもアンプも初めて使うものに変えました。古川がこれまでに作ってきた楽曲を聴いてきた中で、こういう音が合うなってイメージがあったので、それに合わせて、機材を変えたんです。

──どういう方向に変えたんですか?

松本:これまではずっとフェンダーのストラトキャスターだったんですけど、現在はピックアップにP-90を搭載したギブソンのレスポールスタンダードを使っています。実は昔からレスポールが好きなんですよ(笑)。だから、ずっとレスポールを使いたいと思っていて、このバンドはP-90の音が合うイメージがだったので、それならずっと持ちたかったレスポールでP-90を鳴らしてみたいと思いました。ただ、結局、バンドの音って正解がないから、一生追求するものだし、いまだにどうしたら、もっと良くなるだろうって考えてますけどね。

古川:持ちたい楽器を持てるバンドっていいよね。

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