【ライブレポート】V系を盛り上げる覚悟を持ったバンド、0.1gの誤算
9月2日の朝、0.1gの誤算・緑川裕宇(Vo)のもとに最高の誕生日プレゼントが届いていた。バズりまくったSNS──先月末に行われた小学生以下限定ワンマンのニュースに、大きな反響があったのだ。
◆ライブ写真
小学生以下の子どもと保護者を対象とした、この斬新すぎるライブは「本当にライブハウスに子どもたちが来るのだろうか」という関係者の心配をよそに大成功を収めた。あらゆる層が楽しめる仕掛けを施しながら、多くのファンを獲得してきた無類のV系バンド。彼らがまた一歩大きく前進した瞬間だった。
「V系バンドが好きなことを、家族や友達に言えない」なんていうのは遠い昔の話。今や、幼い子どもが保護者公認で、V系のライブを全力で楽しめる時代だ。
コロナ陽性でライブを欠席していた水田魔梨(G)も復活し、今日9月2日はメンバー全員が揃った状態で緑川裕宇バースデーライブを開催。今朝の嬉しいホットな話題を携え、渋谷WWW Xに臨む。
フロア後方まで埋まる大盛況のなか、V系ライブのノリを一挙に詰め込んだ「Act of rebellion~支配ト破壊ノ血印~」から勢い良く演奏をスタートさせ、会場を熱くしていく0.1gの誤算。前半戦はそのまま暴れ曲を畳みかけるスタイルかと思いきや、この日は少し違った。ピンスポを浴び、シンセサイザーを鳴らしながらゆっくりと歌う緑川裕宇。息づかいが響き渡るほど静かな空気が流れ、そこから一気にエネルギーを爆発させた「利己的メルヘン症候群」、同じくシンセを鳴らしながら切ない恋模様を歌った「196番地の女」など、要所要所でじっくりと曲を聴かせる演出が用意されていたのだった。
「虹彩の遺書」でも、優しい歌い出しから広がるドラマティックな展開に引き込まれ、普段とは一味違うステージを楽しむことができた。とはいえ、「桜花爛漫!天晴れサムライ応援歌」や「獣猛者戦争卍轟け!超誤算狩猟卍」など、みんなで賑わう曲もサンドイッチ形式でしっかりとセットリストに組み込まれており、結果的には全体を通してボリューム満点の0.1gの誤算らしいライブ。
新衣装や新曲のお披露目に加え、MCでは緑川裕宇が過去に行ったV系ライブに、この会場にいるファンの方も行っていたかという検証をする。さらに、この日のMCで語られた裏話として、緑川裕宇が使っていた2段式のシンセサイザーにも触れておきたい。上段が「購入したばかりのヤマハの最新型シンセ」、下段が「高校の入学祝いで購入したシンセ」とのこと。そのうち、下段の古いシンセは今日で見納め。200曲以上もの曲を作ってきたという「相棒」との別れは感慨深いものがある。そのエピソードを知った後に聴く、古いシンセ一択で歌い上げられた「この声が届くまで…」は、実に感動的な一幕だった。
アンコールでは、シンセに代わりギターを持って登場した緑川裕宇。「これが新しい誤算だ」と、アンコール前にスクリーンでミュージックビデオが公開されたばかりの新曲を披露した。「手応えを感じる曲、魂を込めて作った曲です(緑川裕宇)」という言葉通り、今後のライブの中でも要となる楽曲に仕上がった新曲。ライブでの演奏を重ねる毎に、どう進化していくのか楽しみだ。
続く「救済バタフライ」では、緑川裕宇が河村友雪(G)の肩に腕を回して寄り添ったり、水田魔梨(G)と眞崎大輔(B)が向かい合って目を合わせたりと、ハッピーな空気をつくった。また、「獣猛者戦争卍轟け!超誤算狩猟卍」では、上手と下手のチームに分かれてウェーブをつくったり、学生時代にやっていた部活動の動きをみんなでやったりと、大フィーバー。恥ずかしがらず全力でメンバーのリクエストに応えるファンの姿が、最高に格好良かった。
今日のライブのチケット完売記念として、<緑川バースデー後夜祭「絶対プリティ生命体・改-15kgの誤算-」>と銘打ったワンマンが翌日に行われるが、最後まで攻めの姿勢を崩さないのが、このバンド。「最後、本気で暴れて帰りませんか」と、ラストは「超旋律的疾走暴曲-ネオヴィジュアロックパロディウス-」で豪快に暴れ、ライブを締め括った。
さらに、この日はちょっとしたおまけも。フロアが明るくなり、ファンが既に移動を始めているタイミングで、「裕宇さん、おめでとう」と、メンバーがステージに現れ、「有害メンヘラドール」を歌い出すというドッキリがあったのだ。聴かせるライブを意識しつつ、魂を込めた新曲を武器に、最後まで遊び心が詰まったライブを届けたのだった。
0.1gの誤算は、音楽活動以外にも、SNSの配信、テレビ番組やドラマの出演など、マルチな活躍が目立つバンドではあるが、「V系が大好きで、自身が先導者としてシーンを盛り上げる覚悟を持ったバンド」だということを忘れてはいけない。
写真◎上野宏幸(株式会社LINKSOLU)
文◎藤代冬馬
セットリスト
2.2008年高田馬場AREA
3.利己的メルヘン症候群
4.196番地の女
5.Desire
6.廃課金式ラブストーリー
7.虹彩の遺書
8.希少種達の運命
9.桜花爛漫!天晴れサムライ応援歌
10.フルニトラゼパム
11.絶望メンブレガール
12.この声が届くまで…
(encore)
1.嘘とシアン
2.新曲
3.救済バタフライ
4.獣猛者戦争卍轟け!超誤算狩猟卍
5.アストライアの転生
6.超旋律的疾走暴曲-ネオヴィジュアロックパロディウス-
ライブ情報
<眞崎プロデュースワンマン「スポーツの秋〜誤算大運動会〜」>
会場:池袋EDGE
2022年10月2日(日)
<水田プロデュース「全員水田!?-2022-」>
会場:池袋EDGE
2022年10月8日(土)
<河村プロデュース「河村友雪に煽られてみない?-2022-」>
会場:池袋EDGE
2022年10月9日(日)
<緑川プロデュース「痛服限定ワンマン-2022-」>
会場:池袋EDGE
2022年10月29日(土)
<0.1gの誤算ハロウィンワンマン「ate 1000 candies ~本当の飴と鞭~」>
会場:池袋EDGE
<クリスマスワンマンツアー【2022】有害サンタは玄関からやってくる【クリスマス】>
12月11日(日)福岡DRUM SON
12月17日(土)大阪RUIDO
12月18日(日)HOLIDAY NEXT NAGOYA
12月23日(金)池袋EDGE
2022年12月30日(金)
<水田魔梨Birthdayワンマン「水田計画第2段階~幾久しく~」>
会場:西川口Hearts
2022年12月31日(土)
<0.1gの誤算カウントダウンワンマン【ゆく年くる年無法地帯2022→2023】>
◆0.1gの誤算 オフィシャルサイト
この記事の関連情報
【ライブレポート】0.1gの誤算、緑川裕宇バースデーツアー開始「信じられないほど、まだまだデカくなってやりますよ」
【ライブレポート】0.1gの誤算、<爆弾狂気圧>ツアーファイナルで河村友雪の生誕を祝福「また来年、絶対に遊びに来てください」
【ライブレポート】0.1gの誤算、活動9年目に突入「音楽って、めっちゃ夢あるよ」
【ライブレポート】0.1gの誤算、緑川裕宇バースデーツアーファイナル。宙を舞って「一人もおいていかない。ヴィジュアル系人生、謳歌していこうぜ」
【ライブレポート】0.1gの誤算、7周年と革命初日。Spotify O-EAST単独公演で迎えた2つの記念日
【ライブレポート】0.1gの誤算、小学生以下限定ワンマン開催。未来のバンギャルとギャ男にV系レクチャー
【ライブレポート】0.1gの誤算、河村友雪のバースデーワンマン「俺らはバンドに命懸けてんだよ!」
ヴィジュアル系音楽原作キャラクタープロジェクト『Visual Karma』始動。緑川裕宇(0.1gの誤算)、bo_ya(the Raid.)が参加
【ライブレポート】0.1gの誤算、「俺たちはこの変わりつつあるⅤ系の中を自分で這い上がるしかない」