【インタビュー】GLIM SPANKY、アルバム『Into The Time Hole』完成「もっと音楽的に豊かな響きを」

■曲を並べたときに
■短編映画集みたいだって

──ところで前作は、「「若葉の時」で終わるか、「Circle Of Time」で終わるか考えた結果、最後はサイケでハードに終わったほうがGLIM SPANKYらしいということで、「Circle Of Time」になった」とおっしゃっていました。それぐらい曲順にはこだわっているということだと思うんですけど、今回、「ウイスキーが、お好きでしょ」で締めくくったのは、どんな考えからだったんですか？

亀本：アルバムとしては10曲目の「Sugar/Plum/Fairy」がラストで、11曲目の「ウイスキーが、お好きでしょ」はボーナストラック扱いという気持ちなんです。

松尾：だから、最終のマスタリング音源では、「Sugar/Plum/Fairy」と「ウイスキーが、お好きでしょ」の曲間、けっこう空けてもらってるんですよ。ただ、この曲をCMで歌えるなんてありがたいじゃないですか。“自分の記念として、これは入れておきたい”と思って収録しました（笑）。

──そうなると、「Sugar/Plum/Fairy」が実質的なラストナンバーとなるわけですが、アルバムの終わり方に対する考えが前作とは違ったわけですね？

亀本：エピローグ的な位置付けですね。

松尾：映画でよくある“また日常に戻って”みたいなイメージです。


──それはさっきおっしゃっていた短編映画集というテーマに繋がってくるわけですね。短編映画集というテーマは、曲を作っている中で出てきたものだったんですか？

松尾：そうです。ワンコーラスのデモが数曲上がってきた時に、歌詞の中に“レイトショー”という言葉が出てきたり、「シグナルはいらない」の冒頭もゲームとか映画の世界みたいなちょっと非日常感をイメージしてみたり、「HEY MY GIRL FRIEND!!」もラブコメ感があったりとか、そういう曲を並べたときに短編映画集みたいだと思ったんですよ。

──ところで、「Sugar/Plum/Fairy」の前に収録されている「形ないもの」は、5月28日の日比谷野音ライブのアンコールで初披露して、その翌日に配信リリースしました。GLIM SPANKYのキャリアにおいてキーになる曲ということなんでしょうか？

松尾：「美しい棘」とか、「大人になったら」とか、GLIM SPANKYがこれまでやってきたロックバラードを新たに作りたかったんです。それで、弾き語りから作り始めたんですけど、これまでと同じようにやってもつまらないから、わかりやすくビートルズの「ペニー・レーン」的なホーンをはじめ、ブリティッシュロックのクラシックな部分をかなりフィーチャーしました。

亀本：トラッドっぽいアコギのリフとかね。

松尾：だけど、メロディはいろいろな人に届いて、良いメロディだと思ってもらえるものを意識しました。

亀本：最後に転調して、半音上がるんですよ。そこも新しいかな。

松尾：曲を壮大に聴かせたかった。サウンド面ではそういう挑戦をした曲です。歌詞の内容的には、新木場STUDIO COASTや下北沢GARAGEとか、自分達が好きだったライブハウス……言ってみれば、自分達の居場所がどんどんなくなっていく悲しさや寂しさをテーマにしたんです。きっと同じように、コロナ禍の中で居場所がなくなってしまった人達も多いと思うんですよ。実際、運動会がなくなったとか、修学旅行がなくなったとか、よく耳にしましたよね。そんな中で、浅川マキさんの楽曲「それはスポットライトではない」を思い出したんです。

──ジェリー・ゴフィン、バリー・ゴールドバーグ、ロッド・スチュワートの歌唱で知られる「It’s Not The Spotlight」の日本語カバーですね。

松尾：大好きな曲で自分でカバーもしているんですけど、その曲を聴きながら、考えようによっては街の外灯も、月明かりもそれに当たっている瞬間は映画のワンシーンみたいに思えるし、日常の至るところに自分にとっての素敵な場面はあるんじゃないかと思ったんです。自分の好きだった場所がなくなったとしても、一瞬一瞬、自分達にはスポットライトが当たっている。そして、それは形がないものだけど、大事なものだよってことを伝えたくて、この歌を作りました。

──さて、11月2日から始まる＜Into The Time Hole Tour 2022＞は、ライブハウス公演とホール公演を織り交ぜたツアーですね。

亀本；今回のアルバムの曲はホールで映えそうですよね。

松尾：今回、メロディの作り方と歌のノリ共にシビアに、と言うか難しく作ったので、それをちゃんとライブで、よりよく聴かせるためにこれから研究が必要だなと思ってます。

亀本：歌自体の処理も今までよりもゴージャスに仕上げているんですよ。今まではナチュラルに歌を置いてたんですけど、今回は歌が映えるように音量も大きくしているんです。

松尾：それをライブでどう聴かせるか。「シグナルはいらない」のような激しい曲も含め、これからライブバージョンのアレンジも含めてライブ感を作っていくんですけど。それがどんなふうになっているのか、ツアーでぜひ確かめてほしいですね。

取材・文◎山口智男
撮影◎toyo





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