【インタビュー】UAが語る、ミュージカル『ジャニス』出演「人前で歌う人生をイメージしたのはアレサとジャニスがいたから」
8月23⽇、25⽇、26⽇の3日間、東京国際フォーラムホールAでBiSHのアイナ・ジ・エンドがジャニス・ジョプリン役を務めるブロードウェイミュージカル『ジャニス』が上演される。『ジャニス』の概要や、主演のアイナ・ジ・エンドインタビュー、各出演者のコメントは先ごろ公開したとおりだ。これに続いて今回は、アレサ・フランクリン役のUA、ニーナ・シモン役の浦嶋りんこ、オデッタ&ベッシー・スミス役の藤原さくら、エタ・ジェイムス役の⻑屋晴⼦(緑⻩⾊社会)の個別インタビューをお届けしたい。
◆ミュージカル『ジャニス』画像
UAが演じるのはスターダムを駆け上り、“ソウルの女王”の名を欲しいままにしたアレサ・フランクリンだ。衝撃的だったアレサの音楽との出会い、初めて歌を聴いて号泣したジャニス・ジョプリンと、UAの話を聞いているとタイミング的にも『ジャニス』に出演することは必然だったのではないかという気さえしてくる。カナダの島で子供たちと暮らして約8年、日本を離れたからこそ、自国のポップミュージックのオリジナリティーに刺激され、音楽を楽しんで制作しているというUAに今の心境を含めて話を聞いた。
◆ ◆ ◆
■アレサは私のルーツと言ってもいい存在
■お話をいただいて運命のように思えてきた
──キービジュアル撮影を担当したレスリー・キーさんとの撮影現場はいかがでした?
UA:ホントに久しぶりの再会だったんですが、瞬時に判断する彼の切れ味は覚えていたので、“全然、変わってないな”って。同世代ですけど、フレッシュで、光の捉え方が最高で、そのお人柄にもほっこりさせていただきました。撮っていく内にアレサに近づいていく気分になりましたね。
──UAさんは『ジャニス』でアレサ・フランクリンを演じられますが、オファーを受けた時はどんなふうに感じましたか?
UA:アレサは私のルーツと言ってもいい存在なので、すごく親近感があるんですが、演じるということになると、“え? ホントに?”って。耳を疑ったし、ショック状態でしたね。アレサは飛行機が嫌いで一度も来日されたことがなく、生の彼女の歌を聴いたことはないんですが、お話をいただいて運命のように思えてきたし、一言では言えない感覚になりました。
──そんなアレサ・フランクリンとの出会いについて教えていただけます?
UA:私は学生時代を京都で過ごしていたんですが、当時のボーイフレンドがレコードコレクターで、家の中に1,000枚ぐらいアナログレコードがあったんです。彼からお誕生日にいただいたのが『Aretha's Gold』という素敵なジャケットのベスト盤で、ずーっと聴いていましたね。歌詞カードがなかったので耳で聴きとって歌っていました。10代後半の話です。
──魅了されたのはソウルフルでパワフルな歌声ですか?
UA:そうです。今まで聴いたことがなかった歌声で、突き抜けているなって。
──月日が経ってアレサを演じるなんて想像もしなかったことですか?
UA:想像するどころか、思ったこともなかったですね。でも、信じられないという気持ちがある反面、自然な流れのようにも思えて、その両方の気持ちが存在するというか、とても不思議な気持ちです。
──ミュージカルに初挑戦することに対しては?
UA:ミュージカルは近年、“チャレンジしたい”と強く思っていて、言葉にもしていたので、引き寄せたなという感覚はありました。
──そのキッカケは何だったんでしょうか?
UA:今まで舞台を見に行くことはあっても、ミュージカルというジャンルにはあまり興味が湧かず、見に行くことはなかったんですね。長男 (村上虹郎)が『ウエスト・サイド・ストーリー』に出演したことで初めて見に行ったんですが、その時に自分がステージに立っている姿がイメージできたことがキッカケかもしれません。演技が混ざってくると自信はないんですが、『ジャニス』はショーに近い内容なのでステージの延長という捉え方をしています。
──ますます運命的なものを感じます。では、今回の主人公であるジャニス・ジョプリンの印象についてはいかがですか?
UA:ジャニスは自分にとってアレサと同じぐらい大きな存在です。大阪に住んでいた頃、映画館でジャニスのドキュメンタリーフィルムを見たんですが、フェスで「Cry Baby」を歌うシーンで号泣してしまったんです。誰かが歌う姿を見て自分がそんなに泣くこと自体、初めての経験だったんですが、悲しいわけでも苦しいわけでもないけど感動そのもので。“人が歌う姿がこんなにも胸を打つことがあるんだ”って。衝撃を受けてジャニスのレコードを集め始めたんですが、私がクラブで歌っていた時代はアレサばかりカバーしていたんですよね。今思えばですけど、ジャニスの曲にはショーで歌うイメージが持てなかったのかな。
──ジャニス・ジョプリンとアレサ・フランクリンはUAさんが歌うルーツになったシンガーなんですね。
UA:はい。人前で歌う人生をイメージしたのは二人がいたからですね。
──ミュージカルではアレサ役をどう演じたいと思っていますか?
UA:自分の身の丈以上のことはできないので、持っているスキルを活かしきれればいいと思っているだけです。肉体的なことも含めて、アレサにはなれないといい意味で諦めているので、コンディションを含めて100%出せるように整えていきたいですね。
▲Photographed by Leslie Kee
(L to R):⻑屋晴⼦(緑⻩⾊社会)、UA、アイナ・ジ・エンド、藤原さくら、浦嶋りんこ
──総合プロデューサーの亀田誠治さんの印象についても教えてください。
UA:オファーをいただいた最初に、すごくご丁寧なお手紙を頂いて、その内容に亀田さんのセンスを感じました。私はカナダに住んでいるので、その後に一度リモートでミーティングさせていただいたんですが、お話するトーンに安心感を覚えたし、ブロードウエイのミュージカルを彼なりに新しいものとして表現したいという姿勢にも同感しました。
──日本版としてそのまま上演するのではなく、新しいエッセンスを加えたいというか?
UA:とてもハードルが高い作品だと思うんですよ。登場する女性歌手たちが歩んだ人生は文化的な背景が違う私たちには到底想像が及ばないというか。
──人種的な問題だったり、時代背景だったり、環境が違いますものね。
UA:ええ。ジャニスも相当ですが、アレサも波乱万丈の人生を歩まれた方なので、文献があってもリアリティという意味ではなかなか難しい。でも、芸術なので思想うんぬんではなく、良ければそれで良いわけだから、縛りだったり、“こうあらねばならない”っていう考えはある意味、ぶち壊したほうがいいと思っていて。亀田さんがプロデューサーなら最適だなと思いました。
──ミュージカル『ジャニス』上演情報が解禁されて以降、周りのリアクションはどうでしたか?
UA:私の家族はカナダに住んでいるので、「見に行くよ」とは言ってくれてますが、あまりピンときてないかもしれないですね。SNSを見た限りでは“アレサ、ピッタリだね”っていう意見が多かったでちょっと意外でした。最近はR&Bなどブラックミュージックを提示していなかったので、“そういう風に見てくださってるんだな”って。それと“キャスティングがやばいね”っていう感想が多かったですね。俯瞰で見れていない私ですが、世の中的には相当強烈なキャスティングなんだなって。
──出演キッカケのひとつになった虹郎さんのリアクションはいかがでした?
UA:「いいね」ってわりと簡潔だったと思います(笑)。「ジャニスは誰なの?」って聞かれたから「アイナちゃん」って答えたら「いいねえ」って。二人でアイナちゃんの映像を見て「歌うまいね」って話しました。
──伝説の女性シンガーがたくさん登場するミュージカルですが、UAさんはどんな方々に見てほしいと思っていらっしゃいますか?
UA:3日間限り、東京公演のみなので、行きたくてもチケットを買えない人もいらっしゃるであろうことを考えると、熱のある方々が見にいらっしゃると思うんですね。私の周りでもかなりの方がチケットを予約されていて、ジャニスを始め、アレサやエタの日本での影響力は凄まじいんだなと改めて実感したので、私もすごく嬉しいです。
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