【俺の楽器・私の愛機】645「こんなに楽しい楽器、ある？」

【Kamaka HF-38 ('98) ８弦ウクレレ】（横浜　鶴見六百　56歳）


ギターって難しいじゃないですか。ほぼ大半の人間が挫折するじゃないですか。そもそも人間の指は5本なのに、弦の数が6本ってのが意味分かんない。どうやって押さえんの？　人間工学に反してる。最初っから覚えさせる気が皆無の「“楽”器ではなく“苦”器」――それが俺にとってのギターのイメージです。

でもウクレレは違うんですよ。たった1ヶ所押さえるだけで「C」。ギターでは難関コードとして有名な「F」だって2ヶ所押さえるだけ。「G」は3ヶ所押さえるんだけど、でもこのCFG3つのコードを覚えるだけで、何十曲も弾けちゃう。はじめたその日から！　46歳のときに4000円ぐらいの安ウクレレを手に入れたんですが、この3コードだけで楽しくて楽しくて、毎日何時間も弾き語りしてました。こんな「“楽”器」があったなんて！

いい教本と出会えたのも幸いでした。『ウクレレ・キヨシロー』（リットーミュージック）という、春日ハチ博文さん著のスコアブックです。もともと忌野清志郎さんのファンでもあり、春日ハチさんのことも「RCサクセション、エレキ化の恩人」としてよく知っていたんで、この本を手に入れたときはテンション上がりましたね。手に入れたその日から、目につくところに開いておいて、ちょっとでも時間があれば弾く。最初は簡単な、それこそ３コードの『あふれる熱い涙』ぐらいしか弾けなかったんですが、大好きなキヨシローの曲に毎日楽しみながらトライしていくうちに、いつの間にか色々なコードを覚えていきました。「好きこそものの上手なれ」ですねえ。ちなみにこのスコアブック、10年近く経った今でも、居間で開きっぱなしにして置いてあります。もちろんヒマさえあれば弾いてます。

で、前置きが長くなりましたが、カマカ「HF-38」です。それなりに弾けるようになってきたんで、そろそろ「ギターに負けない、良い音のウクレレが欲しい！」とか思い始めていたところ、近所の楽器屋さんで中古のこいつと出逢ってしまったんです。ハワイアン・ウクレレ最高峰・カマカの8弦ウクレレ。弦は8本だけど4コースだから押さえるのも苦にならない（笑）。まあ「ギターに負けない」ってところに、やっぱりギターへのコンプレックスが残ってたんですかね（笑）。迷いに迷った末、購入しました。

いやもう、良い音しますよ。奥の1弦・2弦はユニゾンで２本ずつ、手前の3弦・4弦はオクターブ違いで2本ずつ、弦の数が多い分、高低広い音域できらびやかに鳴ります。音量もかなりのもので、ダイナミクスというか、小さな音から大きな音まで表現できるんですよね。弾き語りにピッタリです。

ウクレレ、楽しいですよ。コイツを弾いてると、ギターとの勝ち負けとか、もうどうでもいい。ただひたすら楽しい。いつも手の届くところにHF-38を置いているんですが、本当に生活が豊かになりました。ギターに挫折した人には、ぜひ教えたい。いや、最初からウクレレを勧めたい！　サイコーの「“楽”器」です！



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伝わってきた。激しく。ウクレレ愛が濃い。楽器の楽しさってそれに尽きます。指5本なのに弦6本はおかしいと言われちゃうと、ピアノ88鍵はどうすれば…。そう、ギターだって全部の弦を弾く必要なんかないんだよという、温かいアドバイスって、あまり見かけないですよね。実際6本全てをいっぺんに弾くことなんか極めて少ないわけで、そこに気付けば俄然ギター習得は簡単に思えます。逆に、そんな優しさだけで設計されているのがウクレレなのもしれませんね。弦も固くないし。やっぱハワイって楽園だわ。（JMN統括編集長 烏丸）


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