【インタビュー】wyse、TAKUMAが語る波瀾と覚醒の2021年「心を合わせて未来へ」
■この年齢になって音楽をやっているのは
■趣味だとか好きだからという次元とは違う
──秋からのツアーはwyseとして初めて沖縄でライヴをしたり、春ツアーで中止になった大阪で<Halloween Special Night>と銘打った2days公演を行ったりと、いろいろエピソードがあると思います。
TAKUMA:名古屋からスタートして沖縄に行ったんですが、桜坂セントラルという沖縄のライヴハウスが空間も音も照明も距離感も僕らが結成当時に立っていたような作りだったんですよ。少し前の僕らなら戸惑ったかもしれないんですが、そういう部分も含めて楽しめました。初めての沖縄なのにどこか懐かしさを感じて、初期のまだ青い頃のwyseに触れられたような、すごく貴重な時間でした。なおかつ沖縄在住の方がけっこう観に来てくださったんですよ。“少年の頃に立ったステージに、時が流れてwyseが立った。そんなライヴを観られる日が来るなんて”というコメントをいただいて。そんな人がいてくれるなら行った甲斐があるし、今のタイミングで良かったなと思いましたね。大阪は一度中止になってしまっていたので想いが深く、日程がちょうどハロウインと重なっていたので<Halloween Special Night>というタイトルにしたんです。
──仮装してステージに立ったんですか?
TAKUMA:そうですね。仮装してセットリストを考えて。ハロウィンがメインではなく、楽しく明るく、その中に必要なことをメッセージしながら大阪だけの時間にしたいと向き合った2daysでした。これまでやったことのないライヴになったし、豪華という意味では機材を持ち込んで照明にもこだわって、いい時間になったなって。もちろん、それは11月の福岡や広島でのライヴも同じで、約2年ぶりに行く福岡では“待っていてくれてありがとう”という気持ちと希望の光をちゃんと残して次に繋げるライヴにしたかったし、広島は沖縄で得た衝動があったからこそ、結成当初に広島でやったものに近いセットリストを組んでみたり。どちらも面白いライヴになったと思っています。
──そして12月4日および5日に東京・渋谷ストリームホールで開催されるファイナル公演に向かう流れですね。取材日の現在、ファイナルまであと数日であり、本日はまさにそのリハーサル中とのことですが。
TAKUMA:アニバーサリーイヤーの最後であり、本当の区切りですよね。誰のための周年で誰のためのライヴか、というと僕はファンの方のものだと思っているので、どうしたら喜んでもらえるのかっていうところで。演出に関しては広さも高さもあるストリームホールをどう彩るのか、スタッフと話して提案もしていただいて、“ステージ背面のLEDをオリジナルで面白い見せ方にしよう”とか、“照明も当日のために考えた絵を取り入れて豪華にしたいね”って。それと2daysのどちらにもメッセージを込めたかったんです。初日は2021年が大変な年だったからこそ、ファンを導くためのメッセージ。強さだったり、揺るぎない想いを伝えたくて。最終日は初日を終えたからこその心の解放というか、“ここからスタートするよ。みんなでもっと進んでいこうね”っていう想いを表現したい。ツアーを廻ってきた僕らと待っていてくれた方たちとの想いが重なっての2daysなので、最高のものになると思うし、このインタビューを読んでくださっている頃には最高の時間を終えて、みんなが未来をイメージしてくれていると思う。そう確信しています。
──つまり初日は周年の総括?
TAKUMA:総括といえば2日間ともそうなんですが、初日は「Open Your Eye’s」で始まって“目を覚ませ”って。それは僕たちにもファンの方たちにも言えることで、自分で立って歩み出して、奮い立たせなきゃいけないというメッセージ。自分たち自身、この1年はそういう日々だったと思うし、コロナがなくても、常にそうだと思うんですよね。“みんなで1歩、踏み出すんだ”って始まりたい。“こういう時間を一緒に歩んできたよね”って積み上げてきたものを振り返りながら、未来の扉を開けたい。2日目は手をかけた扉が開きかけているイメージなので、その先にどう進んで行くのか、それを表現していますね。
──濃密な日々を過ごしてきた中、再始動10年の今だからこそ、バンドがいい関係でいられるなど、メンバーに感じたことがあったら教えてください。
TAKUMA:振り返るとMORIとは思いきり喧嘩しましたね。
──ツアー中に、ですか?
TAKUMA:ツアーに限らずです。お互いに年を重ねて目にするものが増えて、価値観が変わる中、何を大事にするのか、どういうヴィジョンを持つのか、あるいはどういう姿勢でいるのか、という部分で2人が見ているものにズレが生じたんでしょうね。意見をぶつけ合いながら過ごしてきた日々でした。長い付き合いになると“言わなくてもわかるでしょ”と思うところが増えていくし、実際わかる部分もあるんですが、言わないといけない局面もあるんですよね。お互いアップダウンもあって、距離感が生まれて。
──なるほど。
TAKUMA:近年なかったことなので、読んだ人はドキッとするかもしれないですが、ぶつかり合ってなかったら終わっていたので、結果、いい時間だったと思います。HIROはTwitterにもアップしていましたが、ツアー中の10月28日にお父さまが亡くなられたんです。何をしてあげられるだろうってLINEや電話をしていたんですけど、アイツは立派でしたし、偉かった。スタッフに迷惑がかからないように動いて、親を見送って、ちゃんとステージに立って。直後が大阪公演だったんですよ。本来であればお父さまに見て欲しかっただろうし、届けたい想いもあったと思うんです。隣でベースを弾いていて、今まででいちばん、最高のギターを弾いていました。胸を張ってステージに立ったアイツは本当に立派だった。ライヴが終わった後、「今日の「With‥」のギターソロは今まででいちばんだったよ」って。頼もしくなったし、優しくなったし、大変なことを超えて、また階段を昇ったのかなって。ライヴやファンの方への想いもいっそう強くなったと思います。
──本当にいろいろなことがあったツアーだったんですね。
TAKUMA:そうですね。月森に関しては僕と似ているところがあって、いろんなものを吸収しやすいタイプなんですよね。このコロナ禍で、多くの人の想いやプレッシャーを背負いすぎてアイツ自身が不安になって迷ったりしていた時もあったんですが、そんな時に「僕らは不安になっている側じゃないよ。手を引っ張ったり、背中を押したり、道を示したり、光になる立場だから、そのために何ができるかだよ」という話をしました。月森もステージに立つたびに答えを見つけながら進んでいったんじゃないかと思います。
──TAKUMAさん自身、人としてもミュージシャンとしても成長して、柔軟な使命感を持って向き合っているのが素晴らしいです。
TAKUMA:そうありたいですね。なれないから歯痒いんですが、そうなれるように努力しないとなれないと思っています。この年齢になって音楽をやっているのは趣味だとか好きだからという次元とは違って、誰かと共有する時間があるから今も音楽ができているし、だからこそ音楽をやり続けたいし。誰かの役に立っているか、それはすごく重要なんです。
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