【インタビュー】BAND-MAID、新しい武器を手に入れ“心の世界征服”
BAND-MAIDのニューシングルは、テレビアニメ『プラチナエンド』のオープニングテーマとしてすでに世の中を賑わせ始めている「Sense」を表題曲とするものだが、収録されている3曲すべてに特筆すべき新鮮さが感じられる濃密な1枚となっている。
◆撮り下ろし画像
去る1月に発売されたアルバム『Unseen World』の一歩先の進化を提示するものとなるこの待望の新音源について、小鳩ミクとSAIKIのふたりに話を聞いた。会話はこのバンドの楽曲と同様、たっぷりの情報量を盛り込みつつ、ときどき意表を突く展開を経ながら進んでいく。
◆ ◆ ◆
■BAND-MAIDとしての新しさもあるうえに
■定番曲になりそうな感じもしている
──コロナ禍が続く中でもBAND-MAIDの創作活動が止まらずにいたことは察していましたが、この3曲は具体的にはいつ頃作られて、いつ頃レコーディングされていたものなんでしょうか?
小鳩:ぽ!
SAIKI:レコーディングしたのは……夏前だったっけ?
小鳩:‟Sense”に関しては、お正月に先方からお話をいただいて、そこから作り始めて、夏前に録ったかなという感じですっぽ。
(ここで関係者より、レコーディングは3月だったとの証言が)
SAIKI:そんなに早かったっけ? ヴォーカルは違うと思う。ホントに最後になるので。
小鳩:楽器は3月から録り始めてたかもしれないですっぽ。で、同じくらいの頃に「火花」のお話をもらって、ちょっと後で「Corallium」を作ったのかな。ちょうどこの収録順にできたっていう感じですっぽ。
──「Sense」はすでにテレビアニメ『プラチナエンド』のオープニングテーマとしてテレビでも流れています。小鳩さんはこの原作に思い入れがあるようですけど、どういうところに惹かれていたんですか?
小鳩:作者が『DEATH NOTE』を書かれている方なんですね。その方の新作が出てるというので読み始めたんですけど、まさに『DEATH NOTE』が好きな人たちが惹かれそうな感じもありつつ、『DEATH NOTE』が悪魔だったのに対してこっちは天使だったりして絶望感とか両方の作品に通ずる要素もあって、どちらも違う切り口で面白いなあと思って読んでいましたっぽ。
──結構、普段から漫画は読むほうなんですか?
小鳩:漫画はめちゃくちゃ読みますっぽ。アニメはそんなに観られてはいないんですけど……BAND-MAIDの中ではアニメ担当はAKANEなので(笑)。うちのAKANEはすごいですっぽ。シーズンごとに番組表を全部確認してるくらいで。今シーズンはこれとこれが放送されるよっていうのが、AKANEに聞けばすべてわかりますっぽ。
SAIKI:番組表みたいなのがAKANEの頭の中にはあって、「これは最初に観る。これはあとで観る」みたいな順番が彼女にはちゃんとあるみたいで。
小鳩:だからアニメ担当はAKANEで私は漫画。漫画はめちゃくちゃ読みますっぽ。
SAIKI:しかも小鳩はめちゃくちゃ速いんです、読むのが。パッ、パッ、パッ(指で画面を操る仕草を真似る)という感じで。
──今の仕草で、電子書籍で読んでいることがわかりました。
SAIKI:そう、いつも画面をめちゃくちゃ速く操作してるんですよ。
小鳩:本人的には特別速いとは思ってないんですけどね。でもちゃんと読んでいますっぽ(笑)。
SAIKI:しかも漫画のアプリを持ち過ぎてるんです。漫画専用のものを。
小鳩:そのアプリでしか読めない漫画とかもあるんですっぽ。しかも違うアプリでまた別に新たに面白そうなのをみつけたりするので、読みたいものがどんどん増えていくんですっぽ。なので常にいっぱい新刊待ちをしていますっぽ。
SAIKI:それをずっと待っていられるのがすごい。私はむしろ好きな漫画をずっと読むタイプなので。好きなものは本でも持っているし、アプリでも入れておいて、何回も繰り返し読んでみたりするほうなので、新しいものをわーっと読むことはないかもしれない。一話完結が結構好きかな。何巻にもわたるような長さになると……10巻までいっちゃってたらちょっと「さあ、今から読もう」とはなれないかな。読み始める前から、物語に置いてかれている気持ちになっちゃうから。
小鳩:なるほど。10巻程度だったら私はあんまりそんなふうには思わないですっぽね。30巻まであると「ああちょっと大変かな」って。
SAIKI:30巻? 大変じゃん!(笑)
小鳩:でも、10巻程度だったら1日のうちに読み終えるっぽ。
SAIKI:えっ? みんなそんなスピードで読んじゃうものなの?(笑)
小鳩:逆に10巻だったら1日で読むにはちょうどいいかもしれないですっぽ。
SAIKI:ちょうどいい? 私は途中で「もう寝ちゃお!」ってなっちゃうかな(笑)。
──話を本題に戻しますね(笑)。この「Sense」という曲自体は、アニメ側から話が来てから作られたものなんですよね? 原案は当然のごとくKANAMIさんから?
小鳩:そうですっぽね。KANAMIが基盤になる曲を作ってきて、そこから始まったっていう感じですっぽ。
──「こういう曲にして欲しい」とか、そういった先方からの要求はありましたか?
小鳩:それは細かくはなかったですっぽ。
SAIKI:KANAMIもそこで初めて『プラチナエンド』の漫画を読んで。その世界観に合う感じを想像して作っていったら、製作委員会側も最初からいいねって言ってくださって。ただ、イントロのオーケストラになっている部分は元々バンドサウンドだったので、そこについてだけは「こんなふうにして欲しい」とリクエストをいただいて。その結果、KANAMIはオーケストラについて猛勉強したらしいです。
小鳩:猛勉強っていうより、まわりの詳しい人たちにアドバイスをもらいに行って教えてもらいながら、っていう感じだったみたいですっぽ。
SAIKI:そのKANAMIの情報収集の仕方がすごかったです。私、ちょっと意味のわかんないことKANAMIからいっぱい言われて。クラシックの専門用語を使って「これはナントカでね、ナントカカントカに入ってくるの」とか言われて「わからないけどすごい!」みたいな。「すっごい勉強したんだね!」と思いました(笑)。
──冒頭のストリングスの壮大さも印象的ですけど、その先はわかりやすいリフで畳み掛けるように展開していく。上がっていく感がすごく気持ちいいなと思います。
SAIKI:そうですね。ホントにKANAMIが得意とするテンションの上げ方だなって思います。
小鳩:KANAMIの得意技のひとつだと思いますっぽ。BAND-MAIDでよくやる構成というか展開の仕方ではあるので、まさにKANAMIの曲って感じですっぽ。
SAIKI:KANAMI節だよね!
小鳩:そう、KANAMI節が出てますっぽ。
SAIKI:なにしろ全部のセクションが違うっていう(笑)。
小鳩:そう、違う。「どこがAなんだろう?」みたいな。
SAIKI:「Gぐらいまで行くの?」という感じで。
──しかも、すごくいろんな音が入ってますよね?
小鳩:そうですっぽね。
SAIKI:ほんっとに。KANAMIは多分、同じことをするのが苦手というか、同じことをするっていう考えが頭にはないんだと思う。
小鳩:ここから2番なんだから変えなきゃ、みたいな。
SAIKI:結構、毎回新しい気持ちで聴いて欲しいんだと思います。何回も何回も聴いて、「あっ、こんな音も入ってたんだ」って気付いてもらえるのが楽しいらしいんですよ(笑)。
──そこでいちばん大変なのは、本人ですよね。
小鳩:そうですっぽね。
SAIKI:でもこれは性格だなって思います。とてもきっちりできる、細かく詰めていけるっていう彼女の性格に合ってることなんだろうなって。
──何か実験をして上手くいった場合でも、「あ、これからもこのやり方でいいや」と落ち着いてしまうんじゃなく、さらに新しい方法論とかを探しちゃったりするんでしょうね。
SAIKI:そうですね。ただ、他のところからアイデアを吸収することについては柔軟なので、たとえばMISAが作曲してきたものに着手する時には、そこに沿ったものを打ち出してきます。多分メンバーみんなで作っているときは「絶対これじゃなきゃ」とか「これしか出てこない」というのはないんですけど、ひとりで何かをイメージして作るってなると、やっぱりいろいろやりたくなるみたいですね。これもできるはず、みたいな。
小鳩:確かに。
──考えられる選択肢を全部試したくなったりするんでしょうね。
SAIKI:はい、そうみたいです。
小鳩:だからここでオーケストラアレンジが出てきたから、今後、他にもそういうのが出てくると思いますっぽ。一回使うと引き出しの中のものが増えていく感覚になっているはずなので。「この曲でアイテムGET!」みたいな(笑)。
──つまり、新曲を作れば作るほどアイテムが増えていくわけですね。
小鳩:そうですっぽね。BAND-MAIDの楽曲の幅が、そういうところからも出てくるんだと思いますっぽ。
──しかし、なんだか引き出しの整理が大変そう。
小鳩:多分、たんすを買い足してますっぽね(笑)。
──そこから引き出すものの組み合わせ方によって、また全然違うものができてきたりもするわけですもんね。ただ、今のお話を聞く限り、この曲に関しては「これまでになかったタイプの曲を目指した」というよりは、アニメの世界観とBAND-MAIDらしさが、がちっと噛み合った感じというか。
小鳩:そうですっぽね!
SAIKI:ホントにそれが嵌まってくれて嬉しかったです。BAND-MAIDとしての新しさもあるうえに、定番曲になりそうな感じもしているので。
──その新たな定番曲になりそうなこの曲のミュージックビデオも、この記事が読者の目に届く頃には全編公開されているはずです。
小鳩:はい。とてもカッコ良くなっておりますっぽ。
──アニメのイメージも踏まえつつも、あくまで演奏シーン主体という感じですか?
小鳩:思いっきり演奏シーン主体というか、ほぼ演奏シーンですっぽね。イメージシーンもあるにはあるんですけど、そんなに多くはないですっぽ。
SAIKI:そういう意味ではいつものBAND-MAIDのミュージックビデオって感じなんですけど、いつもよりもファンタジーな感じというか、アニメの世界観がやや強めではありますね。羽根が舞うシーンがあったりとか。
小鳩:ちょっとだけティーザーで先行公開してきた映像にも羽根のシーンは映ってるんですけど、あれは合成ではなくて、ちゃんと実際に羽根を降らせた中で演奏してたんですっぽ。最近よく、BAND-MAIDのミュージックビデオについて「あれはCGなんじゃないか?」とか「実際にはやってないんじゃないか?」って言われるんですけど、基本、全部BAND-MAIDは実際にやってることしか映像にしてないですっぽね。
SAIKI:リアルです(きっぱり)。
小鳩:前回、「Warning!」だと爆発やカーチェイスがありましたけど、あれもリアルにやってる映像なので。後ろで爆発してたよね?
SAIKI:うん。あとなんだっけ。「endless Story」の時とかは、火山?
小鳩:そう。大島にある火山の火口の岩場というか砂漠みたいなところに実際に行って撮ったりしているので。みんな全部リアルですっぽ。
SAIKI:CGだと思われがちなのは、私たちがこのメイド服を着ているせいなんだろうなって思います(笑)。
──というか、大概の風景には溶け込みにくいですよね。
SAIKI:そうなんですよ!
小鳩:どこにいても浮いちゃうんで、どこで撮られた画でも浮いちゃって、CGみたいに見えてしまうんですっぽ。
SAIKI:だけど実はリアルにやってますんで。
──それはポリシーみたいなものなんですか?
小鳩:ポリシーというか、そうなっちゃう。
SAIKI:演奏シーンが主体だから、どうしても。
小鳩:CGでやったのは「Don’t Let Me Down」ぐらいかな。
SAIKI:そうそう、全部グリーンの背景で撮って。
──つまりCGとか合成に抵抗があるわけじゃなく、とにかく演奏主体でありたいからそうなる、ということなんですね?
小鳩:そうですっぽ。そっちの映像重視なので。ただ、撮影スタッフは毎回大変そうですっぽね。
SAIKI:ホントにいつも大変そうで。ロケの時とか泥だらけになって裸足で走ってたりするし(笑)。「大丈夫ですかー」みたいな。
小鳩:今回のミュージックビデオも、羽根を降らせるシーンでは結構な量の羽根が落ちてくるんですっぽ。それで、「はい、このシーンは撮り終わりました。じゃあもう一回撮るんでメンバー一回撤退してください」「わかりましたっぽー」みたいな流れで待機するんですけど、その間、スタッフが掃除機で羽根を全部集めて、もう一回上にセットするんですっぽ。そこで一枚でも羽根が下に落ちてる状態だと次のシーンが撮れないので。あれはめちゃくちゃ大変そうでした。メンバーにもいっぱい羽根が付いてしまうので、それも一回一回、ちゃんと全部取らないといけないし。髪の毛にちょっとついてたりするのをきれいに全部取って「もう一回、今のシーンをやりましょう」みたいなことになってましたっぽ。
──大変ですね、リアルさを求めるとなると。
SAIKI:ホントですよ。だから「いつもありがとうございます!」って気持ちです。この場を借りて御礼を。読んでくれてるかな、スタッフの皆さん(笑)。
小鳩:でもホントに「Sense」のビデオを観てもらったら「これを何回もやるのは大変だよな」ってわかってもらえると思いますっぽ。
──じっくりとフルの尺で見られるのを楽しみにしています。どこかに羽根が落ちてないかも含めて。
SAIKI:あはは! みつけないでください。
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