【インタビュー】TETSUYA (L'Arc-en-Ciel)、ソロ20周年と『STEALTH』を語る「途中で諦めていたら、このアルバムはなかった」

■わかりやすいものを
■常に探している

──ずっと取材をさせていただいてますけど、改めて思ったのは、TETSUYAさんは職人気質なんだろうなということで。要するに、“俺はこうだから”というエゴやエクスキューズを曲に押し込めないように感じます。その一方でアーティストとしてのオーラとか存在感を持っているから、すごいんですけど。本当にいいものを作って提示したいんだろうなと。

TETSUYA：レコーディングという作業は、生のライヴとは違うから、納得するまでやればいいじゃないですか。録音して、聴いて、“いいな”と思えばそれでいいし。“あれ？なんかちょっと違うな”と思えば、しっくりくるまでそれを繰り返せばいい。

──その繰り返す部分を“これがオレ流だから”って言葉で片付けちゃう人も多いと思うんです。妥協を許さないところに職人肌を感じるのかもしれません。

TETSUYA：僕はそこまで音楽にどっぷり漬かっていないから。音楽漬けの人生ではないじゃないですか、僕って。普段音楽は聴かないし、ベースの練習もしない、そんなにずっと年間通して音楽活動をしているわけでもないので。普段はそれこそ、アパレルの仕事のほうが多いくらいなんですよ。そういう人だから、音楽馬鹿ではないというか。



──それが普通は裏目に出てしまうパターンが多いと思うんですけど、TETSUYAさんはそうではないんですよね。

TETSUYA：だから、すごく音楽好きでマニアックな人なら、少々わかりにくい音楽でもそれがカッコいいと感じられるんだと思うんです。でも僕は、わりと一般のリスナーに近い感覚なので、“こんな複雑なアレンジ、伝わらないじゃん”とか、“もう少しシンプルにしようよ”とか思うんです。もうちょっとわかりやすいものを常に探しているというか。だから、わかりやすくないと入り込めなくて、自分が飽きちゃう。

──“難解なもの＝高尚”と捉えられがちですが、優れた作品ってわかりやすいものですよね。話を『STEALTH』に戻しますが、爽やかさと切なさを併せ持ったエモーショナルな「ARIGATO」も今回初音源化された楽曲で、サビを聴くたびに泣きそうになっちゃうくらいなんですけど。本当に良い曲です。

TETSUYA：本当ですか（笑）。この曲も、すごく前からあって、ライヴでは「THANK YOU」というタイトルで演奏していて。最初に作ったのが2005年とか2006年だったと思うんですけど、CREATURE CREATUREの曲を作っているときにできたんですよ。ただ、さすがにこの曲をMORRIEさんが歌うわけないよなと思ったし（笑）、僕もMORRIEさんがこの曲を歌うのはイメージできないなと思っていたんです。そのときはたしか、３曲書いたんです。「風の塔」とか2曲が採用になって。この曲は、当時、岡野(ハジメ：プロデューサー)さんが「いいね。CREATURE CREATUREでやろう」と言ってたんですけど、僕自身、この曲をMORRIEさんに歌ってもらうのは申し訳ないと思って、僕のストック曲としてずっと置いといたんです。で、僕のライヴでは何度か「THANK YOU」っていうタイトルでやっているんですけど、さすがにもうそろそろちゃんと形に残そうと思って（笑）、今回のアルバムに入れることにしました。

──なるほど。

TETSUYA：ライヴではサビの歌詞は“さようなら ありがとう”だったんですよ。“さようなら”が先にきていたんですね。当時はそれになんの違和感も持たずにいたんですけど、今回ちゃんと収録しようと思って歌詞を見直したら、“逆でしょう、これは。ありがとうが先だよね”と思って。それまではなんの疑いもなかったから、心境の変化だと思うんですけどね。

──その“ありがとう”が先にくることで、より染みる曲になっていますし、“本当は寂しかったんだよ”という言葉に涙が出そうになりました。タイトルを変更したのは？

TETSUYA：“THANK YOU”という言葉はライヴのタイトルに使っているし、『THANK YOU』というDVD作品もリリースしているので、この曲まで「THANK YOU」だとややこしくなるなと思って。なにかいいタイトルないかなと思いながら、テレビでオリンピックの閉会式を観ていたら、最後に“ARIGATO”という言葉が出てきて。これじゃん！と思ったんです（笑）。


──『STEALTH』はTETSUYAさんが歩んできた20年間を味わえると同時に、新たな顔にも触れられる必聴の一作になりました。さらに、本作のリリースに加えて10月10日にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)でライヴが開催されます。

TETSUYA：アルバムをリリースした直後のライヴになるので、＜TETSUYA LIVE 2021 “THANK YOU”＞というタイトルでしたけど、“STEALTH”に変えますかね（笑）。

──ええっ!? 今からですか？

TETSUYA：嘘ですよ（笑）。今までの＜THANK YOU＞に比べるとレパートリーが増えて。アルバムリリースの直後なので、『STEALTH』収録曲を中心にした構成になると思います。

──去年のクリスマスに＜TETSUYA “Xmas LIVE STREAMING 2020”＞を開催されましたが、『STEALTH』収録新曲がライヴに加わることによって、また進化したステージになる予感しかないです。もうひとつ、アルバム『STEALTH』の初回限定盤とUNIVERSAL MUSIC STORE 限定盤には、ライヴ＜TETSUYA LIVE 2019 “THANK YOU” 4950＞より、L’Arc-en-Ciel 「瞳の住人」「milky way」「砂時計」「Link」のセルフカバーがライヴ音源として収録されます。L'Arc-en-Cielは、9月5日から結成30周年記念＜30th L'Anniversary TOUR＞も始まりました。現在までの印象や手応えなどはいかがですか？ 取材日の今日現在、最初の大阪3公演が終わったところですが。

TETSUYA：大阪は、これからツアーが始まるなっていう感じがしましたね。バンド結成の地でツアーを始められて良かったかなと思います。

──L’Arc-en-CielのライヴもTETSUYAさんのライヴが観られるわけですから、ファンにとっては充実の秋になると思います。L’Arc-en-Cielも30周年を迎えたわけですけど、それでもツアーが始まるときはドキドキしたりワクワクしたり？

TETSUYA：まぁ、ワクワクですかね。

取材・文◎村上孝之
撮影◎小松陽祐




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