【今さら聞けない楽器のア・ソ・コ】お題「f字孔」
“楽器”と一口に言っても、多種多様さまざまな部品から構成されているのはご存知の通り。え、そんなの当たり前じゃない?的なものから、和楽器のマニアなところまで、今さら人には聞けない“楽器のア・ソ・コ”、ご紹介します。第3回のお題は「f字孔」です。
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バイオリンのボディ部分(表板)に開けられた穴のこと。アルファベットの“f”に形状が似ていることからこう呼ばれ、弦をはさんで左右対称に2カ所空けられる。バイオリンは、弦を弓で弾くことで振動を起こし、ボディを共鳴させて音を出すが、その音が増幅され、美しい響きを生み出す、いわゆるサウンドホールの役割を果たす。
そもそもは“C”の形状だったが、次第に形状が変化し、18世紀初頭に“f”になったとされる。これは、“C”よりも表板の強度が保てることで“S”へと形状が進化していき、そのうちに制作時に駒(ブリッジ/弦の振動をボディに伝えるパーツ)や魂柱(ボディ内部にある表板と裏板をつなげるパーツ)を取り付ける位置を示すために“S”の中央部分に横線のような刻みをつけたことで“f”になったといわれている。
この逸話が示すように、音響面だけでなく、楽器の耐久性や楽器制作の合理性といった面からも“f”であることが重要な意味を持っている。
なお、エレクトリック・ギターなどにもf字孔を持つ楽器があるが、エレキの場合は、電気を使って音を増幅させるため、サウンドホールとしての役割よりもデザイン的な要素が強い。
文:竹内伸一
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