【インタビュー】WANDS、18thシングルに新たな表情と自信「まさに別れと強さです」
WANDSが6月9日、通算18枚目となるシングル「カナリア鳴いた頃に」をリリースする。“弾き語りができる名曲”を念頭に制作されたのは、柔らかい光が差し込むようなメロディックなミディアムチューン。柴崎浩(G)の普遍的な輝きを持つ旋律と物語を紡ぐような上原大史(Vo)の歌詞が情景を浮かび上がらせるラブソングだ。そして、カップリングには第3期WANDSのヒットシングルのセルフカバーを収録した。
◆WANDS 動画 / 画像
完成した新曲「カナリア鳴いた頃に」はWANDSの新境地とも言える仕上がり。先行公開されたアートワークとミュージックビデオが持つ淡く繊細な色合いは楽曲のイメージを象徴するものであり、それは上原の新たなボーカルスタイルに依るところが大きい。「何でも訊いてください。自信しかないです」とはこの取材時冒頭に上原が語った言葉だが、その姿勢にコンディションの良さを物語るような力強さを秘めていた。
柴崎の作曲と上原の作詞といった2人の共作が第5期WANDSの新たな表情を生み出したエピソードを中心に、9月からスタートする第5期WANDS初となる東名阪ツアーの展望について、そして心身の不調のための療養を発表した木村真也(Key)について、じっくりと話を訊いたロングインタビューをお届けしたい。
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■このテイストを崩したらいけない
■と思うぐらい感動したんです
──シングル「カナリア鳴いた頃に」はこれまでのWANDSとはまた違う、柔らかなアプローチのミドルテンポのナンバーで、原色というより淡いトーンの情緒のある曲だと感じました。どんな過程の中、2人で共作したのでしょうか?
柴崎:曲自体はメロディがいい曲というか、“ギター1本の弾き語りでも完結できる曲を作ろう”と思ったところから始まったんです。その過程で自分が作ったデモの数々を聴いてみたら、この曲が引っかかったんですね。今までは“やってみよう”という気にならなかったんですが、弾き語りでも成り立つ曲という意味でも、これを上原が歌うとどうなるんだろう?って期待の意味でも、“この曲はアリかもしれないな”って。
──バンドサウンドありきでなく、弾き語りでも成立する曲を書きたいと思ったのは、心境の変化ですか?
柴崎:プロデューサーと「名曲って何だろう?」って話してて、今回、そういう方向性が生まれたんですね。売れたものが名曲だとは思うんですが、そういう楽曲を分解してみると、アレンジうんぬんではなくて。弾き語りでも良い曲って、もともとのメロディの繋がりや構成が良い。だから、いかようにでもアレンジすることができるんだろうなって。過去のWANDSの曲もそういう曲が多いと思うんですよね。だから、どういうサウンドにするかは一回とっぱらって、良いメロディの曲を自分の中で探したんです。
▲上原大史 (Vo) |
柴崎:アレンジに関してはワンコーラスだけラフに考えていたんです。それも変えようと思っていたんですけど、まずはデモ状態のままのオケを上原に渡したんです。
上原:へー。あれってデモ状態だったんですね。
柴崎:そう。そうしたら、ほぼ今のような歌詞と、今のような歌唱スタイルのボーカルを乗せたものが返ってきたんですよ。“このテイストを崩したらいけないな”と思うぐらい感動したんです。
上原:もう作品として出来上がってましたもんね。
柴崎:メロディやバックの音の雰囲気に合わせた歌唱法だったんですよ。そこに歌詞もついていて世界観をバーンと提示してくれた感じがした。だったらデモのテイストは変えないで、別の部分で工夫しようかなって。
──では、土台はデモとそんなに変わっていないんですか?
柴崎:そうですね。言葉でいうとまさに“淡い感じ”ですね。
──ちなみに元のデモでは柴崎さんがメロディを歌われていたんですか?
柴崎:デモは、デタラメ英語でメロディを歌って、サビだけ“ラララ”でしたね。そこに上原がワンコーラス分の歌詞とボーカルを入れてくれた感じです。
上原:柴崎さんの仮歌が入ったデモを聴いて、歌詞を書いて歌ってみたんですが、それをものすごく気に入っていただいて。
柴崎:そうそう。本当に泣きそうになりました。
──どんなところにグッときたんですか?
柴崎:言葉のチョイスや語尾に浸透感があったというか、語感もあると思うんですけど。歌と歌詞がのって“めっちゃいい歌だな”って思った。
──上原さん、絶賛されてますね。
上原:いや、僕は送られてきたデモの時点で、“めっちゃいい曲きたな”と思っていましたから。
▲「カナリア鳴いた頃に」初回限定盤 |
上原:ビックリするほどの違いではなかったですね。むしろ、歌を乗せたときに“全然違うな”って思ったんですよ。
柴崎:やっぱりそうだよね。
上原:はい。これまで、アレンジがおしゃれな曲やロックでカッコいい曲が多かったので、初めて聴いたときは“テンポがゆったりしたきれいな曲だな”っていうのが率直な感想で。バリエーションの違いを感じたぐらいだったんですが、歌詞を書いて、曲に合う歌い方をしてみて、そのテイクを自分で改めて聴いたときに、“今までと全然違うけど、大丈夫かな?”って。
柴崎:はははは。
上原:でも、めっちゃいいから、出したいなって。
──なるほど。新しさを狙ったボーカルスタイルではなく、楽曲に導かれたものだったんですね。歌詞はきれいな日本語を使われていますよね。曲を聴いて上原さんの中に浮かんだ情景があったら教えてください。
上原:Aメロの情景がふわっと浮かんできたんですよね。
──“解けた紐にしゃがむ私の前で 髪を掻くあなた”っていう出だしから映像が浮かんできます。
上原:抽象的なことばかり書いても何も入ってこないというか。例えば“愛してる”とか感情ばかりの歌詞に自分はあまり感動したことがなくて。情景が最初に入ってきたほうが感情移入しやすいんですよね。映画もストーリーが曖昧で想いばかりが前に出てくると、伝わらないじゃないですか? 主人公が怒っているとしたら、その背景がわからないと伝わらない。そう思ったので、まず、浮かんだ情景を書いたんです。
──新たなアプローチなんですね。
上原:そうですね。雨が降っている中、男女の関係性が伝わるように描写して、そこから広げていきました。
──サビの歌詞で“最初に描かれた情景は過去のことだったんだ”ってわかる構成になっていますよね。
上原:そうですね。追憶のシーンにしました。
──「カナリア鳴いた頃に」というフレーズが象徴するものは?
上原:カナリアって基本、あまり鳴かないらしいんです。だけど春から夏頃にかけてはよく鳴くっていうことを知って。シングルのリリース時期にもマッチしたし、「キターッ!」って(笑)。歌ってみたら、すごく響きが良かったんですよ。“あ”という母音の響きって、パーンっと開けるんですけど、そこにもピッタリだった。
柴崎:別れが描かれた歌詞を見たときに、自分が曲を作った時のイメージと合致してると思ったんですよね。別れとともに前を見ている力強さみたいな。
上原:まさに“別れ”と“強さ”ですね。そこは完全一致でした。
柴崎:そう。俺も“カナリアっていつ鳴くんだろう?”って調べたんですが、そんなことを知らなくても泣きそうになりましたよ。具体的な描写をしているけど、聴いた人それぞれが自分に投影できそうというか。いろいろな人の共感を得られるであろう歌詞なのがすごいなと思ったし。
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