【対談】Psycho le Cému × lynch.、コロナ禍の現状と支援活動を語る「約束の日を作り続けて、その希望に向かっていく」

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■憧れとか悔しくて大っ嫌いだった当時の
■気持ちが湧き出てくるんですよ

──コロナ禍の話で言うと、Psycho le Cémuは結成20周年、lynch.は結成15周年のアニバーサリーで大々的なツアーを回る予定だったところが中止になってしまったわけで。その時、どういうことを考えました?

seek:ほかのバンドさんがいち早く家で表現できること、オンラインでできることをSNSとか配信で提示されたじゃないですか。でも僕らは、メイクさんも衣装さんも必要やし、密にならないことにはPsycho le Cémuが作れない。そのフットワークの重さというか、オンラインには向いてないなってことを当初はものすごく感じてましたね。その後、配信ライブができるようになってからは、Psycho le Cémuなりのオンラインを使ったエンタメというか、“こんなことができる”ってアイデアがいっぱい出てきたんで、向いてるかもって考えに変わりましたけどね。

葉月:僕ら自身は、オンラインに器用に対応してるとはあまり思えてないですね。やっぱり現場主義というか、ライブは生でやってこそナンボみたいな感じだから。繋ぎで何本か配信ライブをやってきましたけど、完全にオンラインに移行するっていうことはないです。

seek:lynch.もツアーとかそれこそ武道館公演の中止とか、いろいろなライブにコロナの影響を受けたと思うんですけど、その時のメンバーのモチベーションは大丈夫やったんですか?

葉月:僕は大丈夫でしたけど、メンバーはどうなんだろう。

玲央:僕も全然、大丈夫でしたね。

seek:へえ! 強いですね。

玲央:しょうがないしなあっていう。僕のなかで、以前、葉月がぽろっと発した言葉がすごく刺さっているんです。イヤモニをつける/つけないって話をしていた時に、葉月にイヤモニをつけない理由を聞いたら、「これをつけちゃうと、僕が求めてるものじゃなくなるんです」と言ったんですよね。今の話もまさにそうで。僕らにとってライブは、やっぱり目の前の相手に爆音を届けて、それ以上の歓声が返ってくる熱狂の場だと思ってるんです。両者の間に空気感を遮るようなものは必要ない。だから、それができないんだったらやらなくてもいいかな、できるようになるまで我慢して、やっとできたときにすごく嬉しいだろうなと思ってたんですよ。そうしたら去年、日比谷野外音楽堂で有観客ライブができた時、制限はあったとしてもやっぱりすっごく嬉しかったです。

▲seek [B / Psycho le Cému]

──もうひとつ共通のトピックとしては、lynch.はチャリティシングルでライブハウス支援を行って、Psycho le Cémuは姫路Beta支援プロジェクト『VERSUS FATE』支援を企画されたという支援活動です。

seek:それも僕、めちゃくちゃlynch.に影響を受けてるんです。去年、lynch.さんとDさんがいち早くライブハウス支援を始めたんですよ。僕のなかでlynch.とDっていうのは、昔から変わらないスタンスで、自分たちでバンドを回してる人たちで。こういう時にスピードの差が出るんやなって感じました。その時に僕も個人で姫路Betaを支援させてもらったんですけど、ちょうど自分たちの20周年ツアーの延期や中止の話し合いをしてた頃、「4月13日に札幌COLONYが閉店することになりました」っていうニュースが出たんですよね。それまでは、夏以降にツアーの振替公演ができるように動こうと思っていたんですけど、もしかしたら振替公演の前にハコがなくなるんちゃうか?って、それをすごくリアルに感じたんです。これはまずいって思ったので、とにかく自分で動ける範囲で姫路Betaの支援をやったんですよ。lynch.は、どんな感じで動いたんですか?

玲央:葉月から、“こういう企画どうですか”って話がきたんですよね。それを受けて、まずやれる/やれないの前に、やれた時の算段をつけましょうってことから動きましたね……これまたseekくんが喜びそうな話ですけど(笑)、東京でのレコーディングが難しい状況もあり、名古屋で以前お世話になったレコーディングスタジオの見積もりをとって、プレス屋さんの納期が最短でいつになるかを聞いて。日本全国のライブハウスすべてを対象にするのは難しい状況が心苦しかったんですけど、僕らが出演したことのあるライブハウスをリストアップして。

seek:すごいっすねえ!

玲央:そのあとレコード会社のOKが出て、情報がすべて出揃ったところで、すぐにレコーディングした感じです。

葉月:当時はライブの予定が飛んで、時間ができたから曲でも作るか?みたいな話をスタッフとしていたんですね。だったら、その売り上げを医療関係の方々に渡したり、マスクを作ってもらったりしたらいいのかな?みたいなアイデアを出したら、ライブハウスに渡すのもいいんじゃないですか?って言われて、たしかにと。それですぐメンバーにLINEしたら、やりましょうって言ってくれたので。じゃあ、すぐに曲を作りますって感じで始まったんです。

seek:カッコいい! それですぐ曲が作れるのがカッコいい。

玲央:またそうやってすぐ茶化す(笑)。

seek:茶化してないですよ(笑)! そういう姿勢に影響受けましたから。今回、僕たちが姫路Betaのコンピレーションアルバムを作ろうと思ったのは、2020年末あたりに弾き語りライブで姫路Betaに行った時、正直、世の中から見られてるライブハウスのイメージが、やっぱりまだよくなかったり、実際ファンの方々が行きたくても行けない環境にあることを目の当たりにして。コロナ前と同じようになるにはものすごく時間がかかるだろうから、継続的な支援が必要だと思ったんです。今回は姫路シーンの先輩方の力もお借りしてコンピ盤を作ることができたので、これが繋がればいいなと思ってるところです。

▲コンピレーションアルバム『VERSUS FATE』

──熱いメンツが揃いましたよね。MASCHERA、ILLUMINA、TRANSTIC NERVE、DEVELOP FRAME、Psycho le Cémuといった姫路出身5バンド。

seek:そうですね。DAISHIさんとも話してたんですけど、支援という形でコンピ盤を作らせてもらいつつ、僕らとしては、夢の一枚にPsycho le Cémuの名前を入れられたことが嬉しかったりします。

玲央:このメンツはすごいですよね。僕世代はたまらないですよ。しかも、みなさんレーベルも違う、解散してしまったバンドも姫路Betaっていうひとつのアイコンのもとに集まってるわけじゃないですか。それがすごいと思います。

DAISHI:やっぱりMASCHERAさんを聴くと憧れてたことを思い出したり、TRANSTIC NERVEを聴くと、悔しくて大っ嫌いだった当時の気持ちが湧き出てくるんですよ。

玲央:ははははは!

seek:そう、悔しくてねえ(笑)。

DAISHI:僕、TRANSTIC NERVEのTAKAくんと同級生なんですけど、hide(X JAPAN)さんに見いだされて先に東京へ行って。華もあったし、人気もあったし、出てきた当時のインパクトがすごかったので、大っ嫌いでした(笑)。あの時の気持ちが蘇るよね。

seek:ははは。そういう記憶も蘇るし、みなさんに「全然会ってなかったけど、この機会に連絡を取り合えるようになった。ありがとう」とか「こういう機会を作ってくれて感謝してる」という言葉をもらったり、ありがとうが連鎖してるんですよね。もちろん姫路Betaのためっていうのはあるんですけど、バンドのためにもやってよかったなってすごく思えてたりします。

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