【対談】千秋(DEZERT) × 葉月(lynch.)、<This Is The “FACT”>直前に語る異色の存在感「ずっと謎で、だからこそ怖い」

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DEZERT主催<【This Is The "FACT"】TOUR 2024>が、10月5日の名古屋公演を皮切りに11月15日の東京公演まで、東名阪3ヵ所3公演で開催される。同ツアーはDEZERTが対バン相手の地元に討ち入るべく、名古屋DIAMOND HALLにlynch.、大阪BIGCATにSadie、Zepp ShinjukuにMUCCを迎えて行われるものだ。

◆千秋(DEZERT) × 葉月(lynch.) 画像

2017年1月29日に新木場スタジオコーストで行われた<DEZERT PRESENTS 【This Is The "FACT"】>開催前の対談取材時にDEZERTの千秋は、「コンセプトとしては、“This Is The FACT=ここ以外ヴィジュアル系じゃない”っていうもの」と語っていた。当時は、武道館を経た先輩バンド3組と武道館を目指す同年代バンド3組、計6組から成るイベントだったが、7年半が経過した今、DEZERTは年末に武道館ワンマンを控えていることに加え、ヴィジュアルシーンには当時からの変化がみられる。

BARKSでは、首謀者の千秋をホストに、lynch.から葉月、Sadieから真緒MUCCから逹瑯といったボーカリストを迎えて、それぞれ対談を実施した。その第一弾は葉月。DEZERTとは2018年夏に開催された<DEZERT presents【This Is The “FACT”】-EXTRA->の渋谷CLUB QUATTRO公演でガチンコツーマンを実施したほか、イベント共演経験もある。両氏に、知られざる初共演の思い出、ボーカルスタイル、ヴィジュアル系シーンの現在、そして日本武道館ワンマンについても訊いたトークセッションをお届けしたい。


   ◆   ◆   ◆

■7年前の<This Is The FACT -EXTRA->は
■ずっと心残りだったんですよ


──千秋さんが初めてlynch.のライヴを観たのが2007年だったそうですが、どういうきっかけだったんですか?

千秋:僕が高校生のときだったんですけど、大阪MUSEで、Sadieとlynch.とギルガメッシュのスリーマンライヴを観に行ったのが初めてでした。まだ自分がバンドを始めるとは思っていなかった頃ですね。僕らの高校でヴィジュアル系が流行っていて、インディーズバンドを掘り下げていこうみたいなブームがあったんです。僕はSadieが好きだったから、学校帰りに友だちとSadieを観に行ったのが2007年4月6日の大阪MUSE(イベント<BARKING LOUD EMPIRE>)。その頃はlynch.もギルガメッシュも数曲知っていたという感じで…当時インディーズバンドのCDはレンタルもなかったし、かといって専門店に行く勇気もないので、基本的には友だちから回ってくるというのが多かったんですけど。

葉月:そうなんだ。

千秋:友達から借りたCDで、数曲知っている感じでしたね。それでライヴを観に行ったんですけど、lynch.のときはフロアの後方で観てたのを覚えてます。

──そこからDEZERTというバンドとして、lynch.と会うことになるのはいつ頃ですか?

葉月:いつだろう。<Over The Edge>(2007年〜2016年まで開催されていたV系年越しイベント)とかで会ってるのかな?

千秋:2014年のSHIBUYA AXですね(イベント<MOSH presents TOKYO MOSH PIT vol.2>2014.1.4)。僕らはオープニングアクトで出演したんです。忘れられないのが、僕が挨拶をせずに、玲央(G)さんから怒られたという。それも“挨拶がない。オラァ!”っていう感じじゃなくて、態度というか、そういうことで普通にお叱りを受けたっていう感じで(笑)。

葉月:ああ、あった気がするな。っていうことは、大阪で初めてバンドのライヴを観てから、7〜8年でSHIBUYA AXまで辿り着いてるってことでしょ? それもバンドを始める前から数えてって考えるとすごいスピードだよね。


▲千秋 (DEZERT)

──それがDEZERTとlynch.の初共演でもあったわけですね。

千秋:そうだったんですけど、僕らは当時、共演だとは思ってなかったんですよ。オープニングアクトっていう枠も好きじゃなかったというか、主催の方が推してくれて、全然実力が足りてない状態で棚からぼた餅みたいな感じで出演したのもあったから、僕は正直、“挨拶するのもな”っていう感じだったんですよ。当時、尖っていたのもあって、どうせ誰も僕らなんか相手にしてないだろうっていうスタンスだったし。そうしたら怒られたっていう。

葉月:はははは。

千秋:「すみませんでした」っていう。

──葉月さんがDEZERTを認識したのは、その頃ですか?

葉月:たしかにそのイベントでオープニングアクトのバンドがいるというのは知っていたんですけど、まだ印象はなかったかもしれないですね。勢いがある若いバンドが出てきたっていう感じで、その直後くらいから名前を知ることになったと思うんですけど。「「変態」」っていう曲があるじゃないですか?

千秋:はい。

葉月:あの曲のミックスをギルガメッシュのЯyoくんがやってるとかで音源を聴かせてもらって。「こんなバンドがいるんだ、いいね」って言ってたのは覚えてます。それが2016年あたりかな。“面白い人たちが出てきたな”って思いましたね。

──そこから早い段階で、2018年にはDEZERT主催のツーマンで対バンしているんですよね。

千秋:それこそ、<【This Is The “FACT”】-EXTRA->(2018.6.16@渋谷CLUB QUATTRO)です。当時は僕が完全にバグってた時期だったというか、自分らでマネージメントして、苦しんでいたときのような気がするんですよね。<EXTRA>はツーマンで会場ごとに、己龍、lynch.、LM.Cの3バンドに出ていただいたんですけど、そのときの記憶がないというか。

──DEZERT主催イベントで、その3バンドとツーマンしたのはどうしてですか?

千秋:“どうしても倒さなきゃいけない”っていう感覚が、そのときはすごく強かったんです。lynch.先輩に限らずMUCC先輩に対してもそうだし、“対バン相手には嫌われなきゃいけない”っていうか、何か残さなきゃいけないっていう固定観念が強くて。DEZERTというバンドが行き詰まっていたのもあるかもしれないし。それも発端となって、今回の<【This Is The "FACT"】TOUR 2024>にもつながるんですけど。


▲葉月 (lynch.)

──なるほど。当時、DEZERTが抱えていた焦燥感のようなものって、葉月さんも理解できるところはありますか?

葉月:僕らも当時、同期とか先輩とかで対バンする相手がいなくなっていて。というのも、解散しちゃってたり、MUCCとは逆に対バンし過ぎていたので、若いバンドとたくさん対バンしていたんですね、その頃は。DEZERTとかアルルカン、R指定もそう。呼んでくれたライヴには全部出ていたし、もう少し前に遡れば、BORNとMEJIBRAYとDIAURAのスリーマン(2013.9.15@恵比寿LIQUIDROOM)に、こっちから「前座で出してくれ」と言ってシークレット出演したことがあったり。とにかく“若い人を全部刈り取ってやろう”と思ってもがいていた時期でもありましたから。それができていたかわかりませんけど(笑)。焦りとか、そういう気持ちはすごくよくわかります。

──2018年頃というと、lynch.は幕張メッセ(<lynch. -13th ANNIVERSARY-Xlll GALLOWS- [THE FIVE BLACKEST CROWS]>2018.3.11@幕張メッセ国際展示場)であったり、大きな会場でワンマンをやっている時期ですよね。

葉月:それでもやっぱり、僕らのことを観たことがない人も多かったので。DEZERTファンのような若い方は僕らのことを観たことがないと思っていたから、“獲りにいくとしたら、まずそこしかない”っていうのはあったかな。他のジャンルにいったり、大きなフェスに出演するよりも、まずそこにいこうっていう。だからDEZERTが僕らを呼んでくれたのは嬉しかったですね。

──千秋さんは「行き詰まっていて、記憶がない」とおっしゃいましたが、葉月さんは<This Is The FACT -EXTRA->のDEZERTや、そのときのライヴで印象に残っていることはありますか。

葉月:会場が渋谷CLUB QUATTROだったので、舞台袖に観るスペースもなく、ステージ本番はモニターで観たくらいなんですけど。ただ千秋くん、なかなか会場に来ねえなっていうのは印象的でした(笑)。

──会場入りが遅かったと(笑)。

千秋:ははは。たしかそのときも、挨拶はひと言ふた言だった気がします(笑)。本当に内容はあまり覚えてないんですけど、lynch.から迸る“客を獲ってやろう”感がすごかったのは覚えてます。

葉月:はははは。


千秋:対バンやイベントに呼ばれて、わかりやすくそういう感じを出すバンドって、当時のシーンにいなかったんですよ。“シンパシーを感じて”とか“同じ匂いを感じる”とか、みんな言い訳がましいことを言って、対バンやイベントに出てるわけじゃないですか。本当は、“相手の客を獲ってやろう”って絶対みんな思ってるのに。そのときのlynch.はもう明らかに、“マジで客を獲りにきてるやん!”っていうのがあって。俺らも逆に、“獲られまい”みたいな謎のムードもあったような気がします。だから僕的には…こう言うと語弊があるかもしれないですけど、“めちゃいいツーマンだった”とは思えなかったんですよ。

葉月:ほう。

千秋:そのときの<This Is The FACT -EXTRA->でやった3バンド全部ですね。それはDEZERT側の問題で、LM.Cも己龍もめちゃくちゃ優しくしてくれたんですけど、突っぱねちゃったっていうのが僕のなかで心残りで。もともと<【This Is The "FACT"】>というイベントはアルルカンとかNOCTURNAL BLOODLUSTとか、同世代のバンドと回るDEZERT主催ツアーで、そこから派生して、先輩バンドに挑むということで<EXTRA>と名付けた特別なものだったと思うんです。今だったら最高なのに!って思えるのに。

葉月:はははは。今回またできるんだからいいじゃない(笑)。

千秋:そうなんですけどね。“最高なのに”って思っていたものが、当時はできなくて。結構ずっと心残りだったんですよ。

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