【インタビュー】wyse、TAKUMAが語る「Brand New World」と“発信する”ということ「僕らが存在する意味や価値」

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■“新しい世界”という意味ですけど
■希望がある世界とは言ってはいない

──配信ライブ<Thousands of RAYS ZERO>のときもそうでしたが、常に頼もしいですね、shujiさん。「Brand New World」についてTAKUMAさんは「この1年の中で、どうしても形にして、届けておきたかった1曲」と公式コメントを発表していますが、その根底にどんな想いがありましたか?

TAKUMA:今年2月、結成記念日にライブをして、その後に続く絵を僕たちは明確に思い描いていたんです。しかしながら、新型コロナウイルスで世の中が一変して、みんなが難しい時間を過ごすことになった。そんな中でwyseは5月にアルバムをリリースしましたけれど、僕らが存在する意味や価値ってあるんだろうか?って考えることもやっぱりあって…。エンターテイメントシーン全体も含めて、難しい話をするつもりはないんですが、音楽は大事なものだとは理解しているけれど、果たして役に立てているのか? 望まれているんだろうか?って。でも、配信ライブというアクションを5月に起こしてみて、受け取ってくれたそのひとりひとりには何かを届けることが出来たんじゃないかという実感もあって。何より僕たちのほうがそのひとりひとりからの想い、メッセージに救われて…。だからこそ、次に僕たちが何かを発信するのなら文章よりも楽曲だろうと思ったんです。それが配信なのかパッケージなのかという形は何でもよくて、ただメッセージを届けたい、そういう想いが「Brand New World」に繋がっていきました。

──そのときに感じたことを落とし込んだ楽曲という解釈でいいですか?

TAKUMA:と同時に、wyseを求めてくれる全ての人たちに伝えたかった曲ですね。今年はいろいろな情報が飛び交う中、みんながそれぞれの考え方を持ち、時に人を信じきれなくなったり、自分のイライラの矛先が誰かに向いて攻撃的になってしまったり。気持ち的に難しい状態にある人もいれば、あきらめモードになっている人もいる、強い気持ちを持って頑張っている人もいる。2020年の終わりに、さまざまな状況下にいる人たちをwyseの音楽で繋ぐことができたら、結果としてまたみんなで一緒に新しい未来に向かえるんじゃないかなって。メッセージが届くかどうか、この曲をチョイスしてくれるかどうかは別として、まず発信することに僕らの存在意義があるんじゃないか?と思って作った楽曲ですね。

──“信じ合えなき友の祈りを繋ぐ その為に伸ばそう”という歌詞の一節がありますが、友はwyseのファンのみならず、この時代の中で気持ちが離れてしまった人たちのことも含んでいるんですか?

TAKUMA:wyseのことを知っている人はもちろんですが、知らない人にも投げかけたメッセージですね。何かに気づいてくれて、もう一度、結び直してくれたらいいなって。「Brand New World」は“新しい世界”という意味ですけれど、現在の状況は誰も望んではいなかった世界。だから”It’s just a Brand New World”。希望がある世界とは言ってはいないんです。ただ、元に戻れないという点で見れば、それは今回が特別というわけではない。僕たちは未来に行くことはできても過去に戻ることはできないから。今年は難しいことになっているので大変ではあるけれど、常に時間は進んで変化していくという点では同じなので、コロナ禍で不慣れなことが多く不安も募るけれど、強い気持ちを持ってみんなで進んでいけたら、その世界もいつか当たり前の世界になるのかもしれない。人はひとりでは生きられないですからね、wyseとファンの関係のみならず、みんながみんなを想い合いながら進んでいけたらいいなって、そう思います。

──“忘れ出した心温 忘れるべき思い出なんてひとつも有りはしないさ”という歌詞は、今、話してくれたことに通じるところですね。

TAKUMA:距離を感じたり、切り離されたように感じることが多いかもしれないけど、全てを否定する必要もロスを感じ続ける必要もなくて、この先をどうしていくかで辛い思い出も変えていけると思うんです。この期間に感じたことをプラスにするほうが意味があるんじゃないかと。

──サウンドはwyseの中でもシンプルなアプローチですよね。Aメロは音数が少なくてサビでふわっと広がるスケール感があります。

TAKUMA:最近のwyseはシーケンスを使って装飾したサウンドが多かったんですが、今作ではメンバーの役割を明確にしたというか。まずは何よりも月森、HIRO、MORI、僕の4人がいて、そしてshujiさんのドラム、炭竃くんのピアノがあってというバンドの核の発信をして、その上に音を足していきました。主軸は4人で、そこを大事にしましたね。

──ギターソロを入れなかったのは?

TAKUMA:歌、心模様というか、その移りゆく様子から構成を書いたんですが、今回はギターソロのイメージはなかったですね。メロディとメロディを繋ぐ間奏で世界観や心情が変わっていく感じを表現しています。

──ドラムから始まるカップリング曲「b’coz I love you」は疾走感たっぷりのメロディックなナンバーですが、この曲についても完成するまでのエピソードを教えてください。

TAKUMA:「Brand New World」がwyseの原点みたいなシンプルな音なので、カップリングに作り込んだ曲を入れるというアイデアも面白いかなと思ったんですが、そうじゃなくて延長線上にあるような、最近では僕たちでは珍しい、ストレートなロックサウンドでまとめようと。

──ギターサウンドがいい意味で荒々しいです。

TAKUMA:そうですね。例えるならアルバム『W×Y×S×E』(2003年)をリリースした頃のような質感。今回はバンドサウンドをきれいに録るのではなく、もっと衝動的で熱が伝わるテイクというか、楽器隊の荒々しい耳ざわりでメッセージを伝えたいと、そこがポイントにもなっています。

──ベースプレイやサウンドで心がけたことはありますか?

TAKUMA:僕はいつも、いちばん最後にベースをレコーディングするんですが、みんながアグレッシヴに弾いてくれたこともあって、わりと広い隙間の多い曲になったんです。その分、今回は曲調もありますがよりベースがビートを担わなきゃいけない感じだったので、オールダウンピッキングで、まるで全力でダッシュしているかのように弾きました(笑)。僕にしては珍しく、8ビートを気持ちいいぐらいにドラムのやや前でまっすぐに刻み続けて。箇所箇所でドライヴさせてますけど、基本的には“ダダダダダ”って直線的に(笑)。

──その疾走感が気持ちいいですよね。いつもはメロディックなフレーズを入れたり、多彩なスタイルで弾いていますし。ギターに関してはどうでしょう?

TAKUMA:ギターソロについてはMORIに「僕が読めないようなソロを弾いてほしい」って伝えたんです。彼に限らず僕も含めて、今までに学んできたことが蓄積されて思い描いたものを形にできるようにはなったけど、「今回はそのやり方をやめよう」って言ったんですね。長年やっていると“この曲ならこんな感じ”って手グセで弾いてしまいがちなんですが、今回はそういう方向性は無し。結果、起承転結があるのにどう展開していくのかが読めないような、意外性がありライブ感もある、カッコいいソロを弾いてくれました。

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