【インタビュー】アイビーカラー、イメージ覆す新作で目指す「もうひとつ上のステージ」

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■もうひとつ上のステージに行きたい

──アイビーカラーの世界観として定着してきた部分と、今回の「夏空」や「L」のような意外性。今、その両方がバランスよく打ち出せているのでは?

佐竹:確かに今回のミニアルバム『WHITE』はそうですね。前作の『boyhood』は一貫して恋愛の曲がギュッと詰まった「ザ・青春」みたいなミニアルバムでしたけど、今回は個性がバラバラ過ぎてタイトルどうしようかなって思うくらいだったし。

酒田:いい意味で、これまでのイメージを覆すアルバムになったかなと思う。

佐竹:アイビーカラーのファンはみんな優しいし懐も深いので、僕らも安心してやらせてもらいました。

──今回どうして、そこまで個性の強いものが生まれてきたんでしょう。

佐竹:僕としては、まずもうひとつ上のステージに行きたいという思いがあって。それプラス、コロナ期間で曲作りの時間がめっちゃできたので、たくさんいろんなインプットができたからじゃないかなと思います。

酒田:僕は「L」を先に配信で出して、反応が良かったというのが一番デカかったかなと。これまでずっと爽やかで青春っぽい曲でやってきたけど、そういう曲があってもいいんだと思えたので。

佐竹:僕らのリミッターみたいなものが外れたね(笑)。



──「L」は今年2月に「春風」とカップリングで配信リリース。先ほどの話を踏まえると、アイビーカラーとしての最初期と最新の世界観が同時に提示されていたわけですね。今回のミニアルバムに先駆けて。

佐竹:無茶苦茶な組み合わせかもしれないけど(笑)、いい意味で裏切りたかったので。俺らはもうきっと、どういう形の曲をやってもアイビーカラーになるから、変な心配せずに安心して振り切って好きなことやっていったほうがいいんじゃないかっていう、そういう気持ちも大きかったですね。

──結果的にタイトルを『WHITE』にしたのはどういう思いからだったのでしょうか。

佐竹:ほんまに個性がバラバラなんで、正直どのタイトルも当てはまらなくて(笑)。でもアルバムを作る上で「冬のあとがき」というリード曲があって、それを軸に他の曲も決めていったし、リリース時期も冬なので、そこに寄せていった感じでしたね。「冬のあとがき」はシンプルだけど無茶苦茶好きなんです。この曲を広めたいっていう気持ちもめっちゃあったので、このタイトルに決めました。

▲アイビーカラー/『WHITE』

──アイビーカラーの楽曲は、季節感を明確にしたものが多いですよね。しかも、日本の四季。夏だからといって、西海岸の景色は浮かんでこないというか。

酒田:たしかに!言われてみればそうですね(笑)。

佐竹:国外は意識したことがなかった(笑)。別にここから四季推しでいくぞとかではなかったんですが、「夏の終わり」(2ndミニアルバム『弾けた恋、解けた魔法』収録)という曲を作った時に比較的評判が良くて。あと、アートワークとかMVの世界観とか、テーマ性を揃えてやるのも面白いなっていうのもあったんですよね。そこから「冬もあるのかな?」ってワクワクして待っていてくれる声があったり、取材でもそんなふうに言ってもらえることが多くなって、これが自分たちのひとつの個性になってきたのかなっていうのはありましたね。

──「夏の終わり」のMVは再生回数もすごいですし、その1年後を短編ドラマにした『君と歩いた、私の街』もたくさんの方がご覧になっています。

佐竹:ほんまに嬉しいです。やっぱり今でも「夏の終わり」は、MVありきの感想がすごく多いですしね。





──情景を想起させやすい言葉遣いやメロディーライン、アレンジの豊さがこのバンドの強みですよね。

佐竹:人間の気持ちというよりも情景を描写するほうが好きだし、そういうものを結構書きますね。だからこそ季節感も入ってくるのかなと思います。

──季節もあるけど、学校とか校舎のシーンもよく描かれていますよね。

酒田:たしかに。

佐竹:中学も高校も平凡な学生でしたけど、今思い返すと、当時は気づかなかった“あの部分”って、やっぱりすごくエモーショナルでノスタルジックやったなあって思うんです。そういう“思い返す系”は多い気がしますね(笑)。

──思い返して作品にするって、心や状況が安定してないとできない気がするんです。思い出に振り回されていたら、書くものも書けないというか。

酒田:安定してるん(笑)?

佐竹:安定…、「あの過去引きずって動けない」とかはないけど(笑)。

酒田:結構さっぱりしてるよね。そういう意味では。

──人柄がにじみ出ていたりします?

酒田:僕は、歌詞の中の人間は佐竹惇ではないと思っています。また別の、物語の中のひとりやなって思う。

佐竹:じゃあ、どの曲が佐竹惇っぽい?強いて言うなら。

酒田:いちばん近いのは「L」じゃない(笑)?

佐竹:ほんなら俺、エロいだけやんけ(笑)。ラブホ行ってるだけの(笑)。

──(一同爆笑)。

酒田:いやいや、ラブホ行ってるどうこうじゃなくて(笑)、恋愛にくよくよしているイメージがないってこと。「L」くらいさっぱりしている。

佐竹:そうかも。引きずったことがないし。

──ということは、これまで全く真逆の主人公を書いてこられたんですね。アイビーカラーといえば、忘れられない想いや景色みたいなものも軸になっていたりします。

佐竹:無い物ねだりやと思います。マンガとかも、そういうのを読むんですよ。

酒田:そうそう!キュンキュンするマンガとかめっちゃ見るらしいです(笑)。

佐竹:生身の佐竹惇ではもう、そのあたりの感情があまりわからないというか(笑)。

──でもそこには、情景として描けるものがたくさんあるわけで。

佐竹:はい。そういうところで書くのも楽しいし、「L」みたいな闇深いやつを書くのも楽しい。今後僕がいろんな経験をしていく中で何か衝撃的なことがあれば、丸裸でそれを歌にするかもしれないです。すぐ歌詞に起こせるくらいのメンタリティーがあればの話ですけど(笑)。

▲佐竹惇(Vo&G)

──(笑)。あと、逆に珍しいなと思ったのは「東京、消えた月」でした。以前「はなればなれ」という曲で東京に行く彼女を見送るという視点はありましたが、東京にいる主人公の目線で描かれるのはあまりなかったのではと。

佐竹:たしかにそうかもしれないです。どんなに根強い思いがあったとしても、東京で日々過ごしていくとどうしても心が離れていく…そういう心情を書いてみました。住んだこともないですけど(笑)。

──東京でひとり暮らしするのは絶対に無理だって、Twitterで呟かれていましたね(笑)。

酒田:(佐竹を見て)大阪でもできてないですよ(笑)。

佐竹:僕、恥ずかしながらまだ実家なんで(笑)。

──(笑)。でも、今はどこに住んでいても発信はできますからね。

佐竹:そうなんですよね。それこそ配信でリリースしたり、配信でライブもやれるので。


──今後、ライブについてはどのような予定ですか?

佐竹:11月にこのミニアルバムを出して、来年1月と2月に、人数制限をしながらになりますが東京と大阪と名古屋でワンマンライブもさせていただく予定です。1年ぶりなので今はそこに向けて準備をしつつ、並行して曲も作っていきますよ。とにかく休みなく何かみんなに提示できるよう、4人で頑張っていきたいなと思っているところです。

──この先、どんなものが生まれてくるのかも楽しみですね。

酒田:僕ら4人、全員見事に好みが違うんですよ。例えば惇くんみたいに恋愛の曲が好きで恋愛の曲ばかり書く人がいれば、僕は以前ギターロックっぽい激しいバンドをやっていたし、奈緒ちゃんもそうだけど洋楽も結構聴いている。逆に彩ちゃんは、このバンドをやるまでクラシックしか聴いていなかったりするんです。

佐竹:そういう4人が集まっているっていうのは、俺らの強みかなと思いますね。4人とも好みはバラバラやけど、アイビーカラーの楽曲においては、間違いなくみんなが歌に軸を置いている。そこに寄り添いながらも、各々のプレイはめちゃくちゃストイックで洗練されているっていうのも強みかなと。

酒田:メンバー全員、我は強いですけどね(笑)。

佐竹:でも、でしゃばりではないやん(笑)?ワンマンになると結構好き放題やってますけど、楽曲はもちろん、人間性から何から俺らの全貌が見られると思うので、ぜひ次のツアーも楽しみに見に来ていただけたらなと思います。

取材・文◎山田邦子

4th Mini Album『WHITE』

2020年11月25日(水)発売
RCTN-1028/ ¥1,500(+TAX)
[収録曲]
1. 東京、消えた月
2. カフェ
3. L
4. 冬のあとがき
5. GIRLFRIEND
6. 夏空

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