【インタビュー】前田紘利TJ、5つの愛であふれた『#LOVE』
■精度を高めていきたい
──先ほどTJさんは“愛にもいろんなパターンがある”とおっしゃっていましたが、なかでもこの5曲でそれぞれ描いている5つの愛にした理由とは?
TJ:今回収録している楽曲が“今のTJ”というものを構成する5大要素、という感じですね。自分を作っている愛を見せることはとても人間くさいことだし、“TJってこんな面もあるんだな”ともっと自分を知ってもらえるかなとも思ったんです。
──特に大人の愛を描いた「GIRL」や、たったひとつの愛を描いた「I LOVE YOU」は、かなり人間くさい面がさらけ出されているのではないでしょうか。
TJ:そうですねー……こういうことを書くのも恥ずかしかったし、包み隠していた部分でもあったんですけど、いい機会だなって。海外の音楽の歌詞は、日本とは違ってオープンだったりするじゃないですか。そういうニュアンスは自分のルーツでもあるので、そういうアプローチもいつかやりたいなとはずっと思っていて「GIRL」みたいな歌詞を書いてみたり。クサすぎるくらいストレートに想いを伝えることも一度はしてみたくて、「I LOVE YOU」を英語詞で書きました。ふだん話すと恥ずかしくてなかなかできないことも、歌にしたり音楽にするとちゃんと伝わるし、ちゃんと伝えられるなと思いますね。
──人とコミュニケーションが取りづらい時代なので、ストレートな言葉は大事かもしれませんね。「GIRL」と「WE ARE ONE」の歌詞は、書いた人が同じと言われるとちょっと驚くくらい言葉の空気感やチョイスも違うのが面白くて。
TJ:ああ、やっぱりいろんな面を持ってるんだろうな。いろんな音楽性に挑戦しているので、よく“どれが本当のTJなの?”と言われたりするんですよ。でも全部本当の俺なんです。自分のいろんな面を出した結果、こうなっているというか。
──愛をテーマにする制作で“地元愛”を持ってくるところもTJさんらしさなんだろうなと思います。
TJ:地元愛をテーマにした「YELL」は東松山市の関連ワードを入れつつ、誰が聴いてもいいなと思うキャッチーな応援ソングにできればいいなと思って。
──“冬越え君をマツ”という歌詞は、東松山の市木がマツであることが由来しているんですよね。
TJ:あははは、そうです!(笑) 東松山は自然が豊かなので、子どもの頃は近所の森で踊ったりしてたんです。今のTJの原点を作った場所だなとも思うので、感謝や愛は強いですね。あと、地元愛を大事にしているのは、日本人とフィリピン人の両親という環境も影響しているかも。僕は出身はフィリピンのマニラなんですけど、フィリピンはすごく家族を大事にする文化があるんですよ。
──たしかに、東南アジアの人々は家族を大切にするという教えがあるとよく聞きます。
TJ:そんなに一緒にいなくてもいいでしょ、と思うくらいずっと一緒にいるんです(笑)。地元愛と家族愛は近いものだと思うし、「YELL」は自分が育ってきた環境から生まれてきた曲なのかなと思ってますね。こういう状況もあって地元に帰りたくても帰れない人は多いと思うんです。そういう人たちが故郷を思い出して元気をもらうような曲になってくれればうれしいですね。
──「ONE&ONLY」はコールできる場所も多くてライブで盛り上がりそうですし、シリアスなイメージのある「WE ARE ONE」も“カラオケで本人が歌ってみた”動画だとTJさんがかなり遊んでらっしゃったので、ライブで聴きたい気持ちも高まりました。
TJ:ライブをいちばん意識して作ったのが「ONE&ONLY」かもしれないな、と思いますね。この曲に収録されている掛け声は、ファンの方々がボイスレコーダーで録音してくれたデータを送ってもらって作ったんですよ。ライブに行きたくても行けない人たちが少しでも楽しくなるかなと思って企画しました。結果的にライブ感の強い曲になりました。「WE ARE ONE」はライブだとちょっと踊りを緩めたり、みんなに歌ってもらったりできるなと思ってますね。
──5つの異なる愛をテーマにしつつも、どの楽曲も共通して自分らしくあることを提示している印象があります。
TJ:やっぱり、目立ちたがり屋だからだと思いますね(笑)。人見知りだけど、自分を見てほしいという気持ちは子どもの時からずっと変わらなくて。自分を見てもらうことで、どうやったらみなさんに元気を与えられるだろう? 喜んでもらえるだろう? ということを考えてきて今に至る。それが自分の根本にあると思いますね。まだまだやらなきゃいけないこと、やりたいことはたくさんあるので、つねに少しでも出来ることは増やしていきたくて。
──今作で得たものはかなり多いのではないでしょうか。
TJ:今作は独立、セルフプロデュースやクラウドファンディング、コロナ禍と、いろんなことが重なっているなかで生まれたもので。……ちょっとネガティブに聞こえるかもしれないですけど、やっぱり“やりたい”という気持ちの裏には常に“やめたい”がつきまとっているんですよ。それは当然のことだとも思って。でもこの状況になって、活動できること自体がありがたいこと、尊いことだったんだなと思うんです。
──本来ならフランス、ドイツ、フィリピンでもライブを行う予定だったんですものね。
TJ:身近でない世界に行けることも、家族が住んでいる国に帰ることもうれしいことなので、この状況はやっぱり残念です。言葉が通じなくても音楽で盛り上がってくれる瞬間は、何物にも代えがたい喜びで。だから今は引き続き、この状況でできることをしっかりと探していきたいですね。
▲前田紘利TJ/『#LOVE』
──様々な活動をしてらっしゃるTJさんですが、今後どのような活動をして、最終的にどんな存在になりたいのか、というビジョンはお持ちなのでしょう?
TJ:とにかく今は“自分のやってみたいことをやりたい”という気持ちなので、正直言うと先のイメージはまったくないかな……。いつも明日どうするかを考えて生きているというか、特に今年はライブがなかなかできない状況なので、お客さんと顔を合わせられるライブは自分にとって本当に大きな割合を占めていたことを痛感してるんです。やっぱりライブ活動や音楽活動以上にやりたいことって、なかなか見つからないんですよね。音楽やエンターテインメントは1+1が必ず2になる世界ではない、言葉にできない非現実のような空間が魅力だと思っていて。マイケル・ジャクソンに魅了されたあの瞬間から今まで、変わらずそこに憧れ続けているんです。自分もそういう存在になりたいし、“元気をもらったよ”と言ってもらうことがなによりの喜びですね。
──それは“今後どのような活動をして、最終的にどんな存在になりたい”という答えにつながりませんか?
TJ:あ、たしかに!(笑) 僕は自分の活動を通して、人が感動している姿を見たいのかもしれないです。お客さんが感動している姿を見て、自分も感動したい。そのためにもこれからも、TJならではのエンターテインメントの精度を高めていきたいですね。
取材・文◎沖さやこ
New EP『#LOVE』
レーベル:TJ ENTERTAINMENT
[収録曲]
1.WE ARE ONE
2.GIRL
3.ONE & ONLY
4.I LOVE YOU
5.YELL
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