【レポート】ASH DA HERO、生配信ライブ初日＜LIFE＞で「命をつむいで、つなげていきたい。未来へ」

8月15日、ASH DA HEROがSHOWROOMで無観客配信ライヴ＜ASH DA HERO ACOUSTIC NIGHT 2020＞の第一夜“LIFE”を行なった。毎年夏に開催している恒例の＜ACOUSTIC NIGHT＞だが、今年は長引く新型コロナウイルスの影響により、オンラインライヴという形になった。

◆ASH DA HERO 画像

臨場感やみんなと作るライヴ感といった点では、やはり生のライヴに分があるだろう。しかしオンラインライヴだからこそ、こちらは周囲を気にすることなく、ライヴそのものに集中できる。ネットを通してではあるが、まるで自分だけに向けるようにミュージシャンが音楽を伝え、こちらは音楽の良さにどっぷり浸ることができる。過去の＜ACOUSTIC NIGHT＞では、普段のライヴとは違ったアコースティックアレンジで、歌唱力の高さや表現力の豊かさを発揮してきたASH DA HEROだけに、どんなステージを見せてくれるのか期待は高まるばかり。



19時、ピアノのおだやかな旋律が響き、アコースティックギターの音色が優しく絡んでいった。こうして始まった1曲目は「GOOD MORNING HELLO GOOD BYE」。ステージのセンターに立ったASHは目を閉じて、画面の向こう側にいるオーディエンス一人ひとりに届けるように、思いを込めて歌う。そのブルージーな歌声は心に染みる。そこから続くのは、2019年に発表した「未完成ストーリー」。迷いながらも自身の選んだ道を進む、力強い意志を形にした曲だ。気持ちの弱っている人も多い今だからこそ、ASHの歌はパワフルに響いてくる。そして続く「STAY FREE」では、自分らしくいけよ、と温かく包み込む。ASHは常に自分自身の生き方と考え方を音楽に投影させているミュージシャンだ。今夜は歌にクローズアップしたアコースティック・アレンジだけに、それぞれの歌に込めたメッセージがダイレクトに伝わり、こちらを勇気づけ、あるいは寄り添いながら救ってもくれる。

「伝わってくるんだよね。いつものライヴみたいに感じてます。今日は配信だからこそ、全員、もれなく最前列だからね。ここでしか観られないASH DA HERO、堪能していってください」


＜ACOUSTIC NIGHT＞では、カバーを披露するのも恒例になっている。この夜、ASHが選んだのは松山千春の「君を忘れない」。小学生のころにひどいイジメに遭ったASHを救ってくれたのは、音楽であり歌。そのときASHの命、ASHの“LIFE”をつないでくれたのがこの曲だったという。ときおり目を潤ませ歌う姿に、こちらも聴いていて涙を禁じ得ない。また歌いこなすのではなく、しばらく会っていないオーディエンスへの愛情も歌詞に重ね合わせるASH。それに大御所アーティストのカバー曲ゆえ、ASHのシンガーとしての力量や実力の高さも活きてくる。

さらに曲が続く中、歌声で酔わせるばかりか、エモーショナルな歌で奮い立たせるASH。アコースティックでありながら、ASHの描き出すものはやっぱり熱い気持ち。彼のロックの根源はそこにあると改めて思った。「生命のリレー」の前には、こんなことも語ったASHだ。

「LIFEは生命、命。今日は僕ら日本人にとって忘れてはいけない終戦記念日です。先人たちから受け継がれた生命のバトン。僕らは今、とても大変な時代の中にいます。きれいごとだけでは救われなかったり、むくえない事実があることも確かだと思います。それでも、僕は今、生きてます。これを観てくれているあなたも、今、画面を通じて会えていることは、生きているということです。生きてさえいれば、どれだけ辛いことがあっても、どれだけ世界や時代がどんなふうにいこうとも、僕らはもう1回、作り出せるんじゃないかって。僕はそう思ってます。自分たちの生活、自分たちの命、自分たちのLIFE。僕はつむいで、つむいで、そしてつなげていきたい。未来へ」



ライヴ中盤のこと。コロナの自粛期間中にASHが感じたことや思いを歌にした新曲「ロストワールド」を初めて披露した。“行き場のない痛みを抱きしめ　明日を睨み　夜明けを待つ”といった歌、あるいは“今を　変えに行こう”といったメッセージが響いてくる。そこには、下を向いた絶えるばかりではなく、もがきながらも明日へと向かう姿がハッキリと見えてくる。

さらに後半では「One」という新曲も披露。自粛期間中、Twitter上で始まった“#うたつなぎ”がASHに回ってきた際、自身のフォロワーから歌詞を募集して作った曲だ。つまり作曲はASHで、作詞はASHフォロワーたち。しかもTwitterでは1コーラスだけだったが、今夜はフルバージョン。まさに音楽で気持ちをひとつにして、それをさらに昇華して、具現化されたものと呼べるだろう。“君は一人じゃない　愛をつなごう”など、ASHフォロワーもまた、ASHと同様に大きな包容力を持った人間ばかりだ。SHOWROOMではコメントを投稿できるようになっているが、そこにも温かい気持ちが数珠繋ぎだ。音楽やライヴでつながりあう素晴らしさや感動が広がり続ける。


ラストナンバー「Prologue」も含めて70分間、ASHの音楽に浸りながら、彼の人間的な優しさや強さにも触れることができるライヴでもあった。

「また必ず笑顔で、ライヴハウスへ一緒に帰ろう」

明日8月16日は、＜ASH DA HERO ACOUSTIC NIGHT 2020＞の第二夜“LOVE”がSHOWROOMより19時から開催される。また生配信を見逃した方も、チケット購入者のみ8月17日〜24日の期間中毎日19時から、初日“LIFE”と2日目“LOVE”のライヴ模様がアーカイブ配信される予定だ。

取材・文◎長谷川幸信
撮影◎進藤景太