【インタビュー】wyse、TAKUMAが語る充電完了後の初アルバム「励みや支えになるものを届けたい」
■僕らがやりたいことの先には
■曲を待っていてくれる誰かがいる
──音楽番組『バズリズム02』5月度エンディング曲としてオンエア中の「Last Letter」は、メロディと歌詞が染み込んでくるような泣けるバラードですが、この曲はwyseがいまから20年前にリリースした曲「With…」のその先の物語を描いた曲だそうですね。
TAKUMA:そうですね。僕は今年40歳になるんですが、大切にしなきゃいけないものや時間の経過、儚さを痛感する時期に入ったと思うんです。誰もが経験する望まない出来事が起こることにも、どこかで覚悟し始めるというか……。もちろん若いときに経験されている方もいらっしゃると思いますが、そういうところに自分も足を踏み入れたんだって思うことがあったり、友人や仲間が大切な人を失う姿を見たりして、いまの自分が感じていることを残すべきだなって。自分の両親や大切な人に“ああしておけば良かったな”と思ったときにはもう伝えられないので。過去のこともこれからのことも含めて、感謝を伝えたいと思ったのが「Last Letter」の軸であり、テーマです。
▲アルバム『Thousands of RAYS』 |
TAKUMA:そうです。僕が18〜19歳の頃……大阪から上京する前に書いた曲です。あのときの僕なりのベストでしたけど、あれから約20年経って思うこと。当時は「音楽で食っていくんだ」って言ったら「なに言ってんねん」って言われたり(笑)。wyseは一度解散しましたが、この世界でたくさんの方に出会って、ずっと音楽の仕事をし、いまの自分がある。辛いことも良いこともあったけれど、やっぱり家族の支えがあって、いまに至ると思っています。いくつになっても親からすれば子は子。あの2人からすれば僕はいくつになっても子供なんですよね。ただ気付けば、両親はいつのまにかおじいちゃんやおばあちゃんのようになっていて…。「With…」を書いたときはいまの未来なんて想像もできなかったですが、ここまでお互いに元気でいられて、いまのタイミングで「Last Letter」が書けたのも、なにか繋いでくれたものがあるからなのかなって。もちろん、まだたくさん時間はあると信じたいし、一緒に過ごしたいですけどね。
──「Last Letter」のミュージックビデオは野性爆弾のくっきー!さんが楽曲イメージに合わせて絵画を描き下ろしたものだそうですが、いきさつは?
TAKUMA:スタッフがくっきー!さんと繋がりがあって、描かれている絵を拝見させていただいたときに「ハードルが高いのは承知の上で、ダメもとでお願いできないですか?」と。そうしたらお忙しい中、描いてくださって。僕自身は絵のことは当然詳しくはないんですけど、PC上で作業されているのかと思ったら、実際に、しかも指で描いてらっしゃるんですね。スケッチブックも見せていただいたんですが、逆にくっきー!さんの絵にインスパイアされて曲が生まれそうになるぐらいに素晴らしくて、世界が広がっていく感覚を覚えました。「Last Letter」は僕らが演奏する場面を撮影するのではなく、もっと余白がある見せ方で曲を届けることに意味があるんじゃないかと思っていたんです。つまり、“wyseはこういうロックバンドです!”って提示するんじゃなくて、曲が一人歩きして広がっていくようなイメージ。くっきー!さんの絵で構成されたミュージックビデオを見て聴いてくださった方が、ご自身の思い出だったり、人生に置き換えてくれたら嬉しいですね。
──wyseはこれまでにもトレーラー映像やCDジャケットを手塚プロとコラボしているので、絵やアニメーションの相乗効果で世界が広がる可能性を感じ取っていたのではないか、と今のお話を聞いて思いました。
TAKUMA:僕自身、「ヒカリ」(2018年発表 / 手塚アニメとのコラボシングル)の頃から、曲のイメージで撮った写真、あるいは題材となるフリー映像をPC上に置いてそれを見ながら、曲を作ったりしていたんです。どんどんイメージが広がっていくんですよね。アレンジャーである炭竃くんとも同じ絵を共有することもあるんですが、なにもないところから作るより増幅されていく感覚がある。手塚プロさんとコラボレーションさせていただいたときに、絵や映像から光だったり希望だったり未来が見えてきて。そこが漫画やイラストや絵を描く方の素晴らしいところだなって。違うアートが合わさることによって想像以上のプラスアルファが生まれると、そう感じられたことは大きいですね。
──いま、光や希望や未来って言ってくれましたが、wyseのアルバムにも同じメッセージを感じました。
TAKUMA:カッコいいとか高揚する感じとか、ロック特有のものはもちろん好きなんですけど、メッセージとしてはみんなが生きていく上で、励みになったり支えになるものを届けたいですね。こういう状況の中、アルバムを出せないかもしれないという懸念もあったんですが、「どうなるかわからないけれど、まずはいい作品を作ることに集中しよう」って。これからどういう事態になっていくかわからないですが、少しでもwyseの音楽が力になればいいなと思っています。
──“君が望むなら 僕の名前はそう未来”と歌う「未来」は、アルバムの中でも重要な位置を占める曲だと思います。この曲に込めた想いは?
TAKUMA:一番最初の段階ではサビだけだったんですが、実は充電期間完了後の一発目は、「未来」か「RAYS」のどちらかにしようと言っていたんです。当時は曲の全体像を誰も知らなかったんですが、自分の頭の中にはあったので、アルバムを作ることになったときに「こういう曲になるから入れさせてほしい」ってみんなに伝えて。僕らがやりたいことの先には曲を待っていてくれる誰かがいる、という自覚を持つべきだと僕は思っていて、その1人1人の大切な時間を担っていると思っています。だからこそネガティブなものを伝える必要性はゼロで、やるからには少しでもポジティブな気持ちになれるものを届けたい。それがwyseの役割だと思うんですよね。「ヒカリ」のときは僕らは光でもあり影でもありみたいなアプローチでしたが、「未来」では君たちが望むなら僕らはその瞬間に未来になる、望む度に、瞬間にそこには未来がある、っていうメッセージを残したかった。
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