【インタビュー】Plane、磨きをかけたバンドサウンドとみずみずしい言葉のニューアルバム『2020 TOKYO』
■昔はいつ死んでもいいように悔いのないように生きようと思っていた
■40歳になると「もっと未来を見たいな」というのが正直な気持ち
──「未来」という言葉も多いと思うんですね。過去、今日、未来があるとして、未来を見てる視点の歌が多いような。
キクチ:そこは無意識に、そうなっていると思います。7年前の『僕らに今があるということ』というアルバムに「あと何度」という曲があって、それは「あと何度もないよ」「だから大事にしなきゃ」という意味だったんですけど、たとえば飲み屋さんに行くと、お店でCDをかけてくれたりするじゃないですか。そういう時に50代、60代、70代の男性が「キクちゃん、「あと何度」は良い曲だね。俺らにとっては本当にそうなんだよ。どんどん命が短くなっていく感覚があるから、あと何度って本当に思うんだよ」って。それを聞いた時に、僕の「あと何度」とは全然違うけど、漠然と「60歳まで歌えてたらいいな」と思っている、その感覚に近いのかな?と思っていて。
──はい。
キクチ:仲間の結婚式でも「あと何度」を歌ってくださいと言われることが多くて、でも「あと何度もないよ」という意味で歌うのは違うし、どうしたらいいだろう?と思った時に、新郎新婦がこのメンバーを集めてくれるのは今日一回限りですよということで、この瞬間の感覚だったり、二人の幸せな時間が何度も続けばいいよねという解釈に変えたので。その経験からも、過去や今よりも未来をすごく意識しようとしていた時期だったと思います。
──「もう何度もない」から、「何度も続きますように」へ。
キクチ:僕はもともと、二十歳の時に「ノストラダムスの大予言」で地球が終わると思っていたんで。死ぬまでにと思って、高校で免許取ってすぐ4年ローンで車を買って、地球が終わらなかったんでローンは全額払いましたけど(笑)。でもそれがバンドカーになってツアーに出られたんで、車を買ってなかったらツアーに行かなかったかもしれないし、そう考えると不思議だなあと思います。今、40歳は2回目の二十歳なので、2回目の成人式という感覚なんですよ。たぶん60歳が3度目の成人式で、三度目の正直みたいなことがある気がするから、60歳までは生きていたいと思うんですね。昔は「いつ死んでもいい」と思っていたし、だから悔いのないように生きようと思ってたんですけど、40歳になると「もっと未来を見たいな」というのが正直な気持ちです。こんなに目まぐるしく世の中が変わってゆく、そのはざまに生きてるのは面白いと思うんですよね。
──オリンピック、延期になっちゃいましたね。せっかく「オリンピックが終わる頃」という曲も作ったのに。
キクチ:そうなんですよ(苦笑)。そんなつもりで作ってなかったのに、いろいろ考える歌になってしまったなと思います。なんであの曲を作ったか?というと、東京にオリンピックが決まった時のことがすごく印象的で、たぶん2、3年前に作ったと思うんですけど。そしたら今度、2025年に大阪で万博があるみたいで、それにもまた衝撃を受けて、「2025 万博が終わる頃」という曲を作らなきゃいけないかなと(笑)。
──あはは。それ面白い。やってほしい。
キクチ:僕の中では東京タワーが、大阪で言ったら太陽の塔なのかなと思っていて。昔は太陽の塔が怖かったんですけど、今見に行くと怖くなくて、不思議だなあと思います。
──このアルバム、昔からPlaneが好きな人は、特にぐっとくると思いますよ。一緒に年をとっていく感覚があると思うので。
キクチ:そういう人に届いてもらえたらいいなと思って作った、というか、作らせてもらったというか、完成できて良かったです。たぶんメンバー4人だけだったら作れてないんで、大柴くんに誘ってもらって「僕のレーベルから出しませんか?」と言ってもらってなかったら、たぶん…僕らのバンドはいつもそうで、ちょうど30歳ぐらいの時に事務所をやめて、自分たちだけで音楽を作ってツアーをするようになって、そのあと震災が起きたりして、それはすごい経験だったので。前作が初めて自分たちで作ったアルバムだったんですけど、あれは最後のつもりで作ったアルバムで、毎回最後のつもりで作ってはいるんですけど、そういう意味では今回は最後ではなくて、最初のつもりでは作ってるかもしれないですね。
──ああー。そこすごく大事だと思います。
キクチ:このまま長くやるというか、やめずに、ゆっくりやっていけばいいなと思います。昔は一緒の家に住んでいて、週に3、4回スタジオに入っていましたし、毎日音楽という日々をやらせていただいたんですけど、今はメンバーそれぞれ大事なものが違いますし、進むスピードも生きてる時間も違う。でも、今回のアルバムを録る前に3回ぐらいスタジオに入ったんですけど、それで感覚が戻るのが不思議ですよね。やっぱりドラムとベースとギターの3人のグルーヴが合っていて、ほかの人とは違うので、すごく楽しいです。それと、今回のレコーディングは専門学校でやらせてもらって、二十歳ぐらいの人たちが10人、20人と現場にいて、歌も3、4回しか歌っていないんです。昔は一小節を何百テイクも録ったりしていましたけど、今はうまく歌うよりも、ブースの向こうにいる若い人たちにちゃんとライブとして届くように歌わないとダメだというのが、今回のアルバムで発見した新しいことです。レコーディングだけどライブという、そこにいる人たちにちゃんと届けるというのは、すごい体験だったと思います。
──ゆっくりしっかり、広めていきましょう。
キクチ:ぜひよろしくお願いします。ここ(電波赤丸)もぜひ使ってください。
取材・文●宮本英夫
リリース情報
ZGCL-1006 2,500円(税別)
01.1980
02.いつかあなたに花束を
03.陽はまた昇る
04.ワーゲンにのって
05.東京タワー
06.夜風
07.はじまりのうた
08.オリンピックが終わる頃
09.ホームタウン
10.ぼくたちがやりました
ライブ・イベント情報
7月23日(木)OSAKA Music Club JANUS
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