【インタビュー】VALSHE、シングル「紅蓮」に描いた「絶望と希望の狭間」
■戦っている中で自分自身が
■見落としてはいけないもの
──アートワークも同時に浮かんできたんですか?
VALSHE:今作は歌詞が先ですね。
──なるほど。アーティスト写真は迫力があってアニメーションを実写化した映画の主人公のような印象を受けました。
VALSHE:「「SYM-BOLIC XXX」」のヴィジュアルは“雑誌のようにしたい”という方向性で制作したんですけど、今作はDVDのパッケージのようなジャケットにしたかったんです。ミュージックビデオも“映画だと思ってほしい”っていう指針合わせをまわりとしましたね。
▲「紅蓮」通常盤 |
VALSHE:「紅蓮」に限らず“戦いたい”という気持ちは過去の作品にも込められていて、今後つくる作品にもなにかしらの形で表現されていくと思うんですけど、今作に流れているのは戦っている中で自分自身が見落としてはいけないものだったりとか……。先ほどお話した、普段は見過ごしそうな優しさに気づくということに通じるんですが、森の中でVALSHEが戦うミュージックビデオでは悪者の大男が絶望の象徴で、紅蓮の花が希望の象徴として描かれているんです。単純な希望と絶望ではなく、希望の中に見える絶望、絶望の中に見える希望に気づけるかっていう。
──VALSHEさんは泥にまみれて負傷しまくっている状態で大男に立ち向かっていき、殺陣にも挑戦していますが、撮影中のエピソードは?
VALSHE:撮影はけっこうハードでしたね。「ジツロク・クモノイト」(2015年発表)の撮影では実際にケガしたんですけど、今回は殺陣の稽古が終わったあとに筋肉痛で、信じられない痛みが襲ってきました(笑)。本番に臨むときも痛い箇所を若干かばいながら行かないといけない状態だったんです。
──けっこうリアルにボコボコな状況だったんですね。
VALSHE:ちょうどアコースティックツアー<VALSHE ACOUSTIC LIVE TOUR 2019 [UNplugged DocumeNts.]>の渦中だったんですけど、最悪、骨が折れても大丈夫っていう気持ちで撮ったんですが、ケガなく終われて良かったです。ただ、撮影が夏だったのでスタッフ含め、みんな暑さで体力が消耗してしまい、そんな中、豪雨にもあって一時中断することもあったんですよ。最初、髪型はアーティスト写真と同じだったんですけど、汗と雨でセットし直してもらってもワンシーン撮っただけで髪がまっすぐになってしまって、逆にこれ以上のリアリティはないから「ストレートで行こう!」って(笑)。ミュージックビデオにも必死感が出ていると思います。
──剣を抜いて戦うシーンは見ものですね。
VALSHE:消耗している中、最後に跳び上がって斬るシーンは、まわりの誰もが“VALSHE、早く跳べ!”って思っていたと思うんですけど(笑)、納得がいかなくて何回もやり直させてもらいました。
──ファンタジーな要素がありつつ、VALSHEさんのリアルな心境を昇華した曲でもある「紅蓮」を聴いてどんな気持ちになってもらえたら嬉しいですか?
VALSHE:どんな状況下にあっても、絶望だけしかないことは絶対にないと思うし、逆も然りだと思うんです。どちらの状態にあっても自分の目でよく見て、見落としがちなことに気づいて、立ち上がる力に変えられるかは自分次第っていうことを伝えたいですね。
──カップリングの「空白の四月」はピアノで始まる切なくも美しい曲で、VALSHEさんが作詞作曲を手がけています。
VALSHE:「紅蓮」の世界観のまま聴けるような曲にしたかったんです。絶望と希望の狭間にあるようなサウンドにしたいと思っていて3回、構築し直して完成した曲です。テーマ的には「紅蓮」を作ったときに抱いていた想いや気づきを形にしているんです。
──曲調は違うけれど、繋がっているんですね。
VALSHE:そうですね。喪失感だったり、深く傷ついて心に穴が開いたとき、人はなにか代わりになるようなものでその穴を埋めようとしがちですけど、それは無意味なんじゃないかって気づいたんです。
──ほかのもので埋めようと思っても埋まらないということですか?
VALSHE:身近なところで例えたら大事な友達とお別れをすることになったとして、そこでポッカリ開いた穴が新しい友達と同じぐらい仲良くなったからといって埋まるわけではないんだなっていう。“埋まったと思ってたのに”って感じることってたくさんあって、だからといって何もできずに留まっているということではなく、穴が開いていても受け入れて前に進まないといけない。そうやって解決できないことと向き合いながら生きる状態をメッセージとかそういうことではなく、ありのまま伝えたいなと思ったんです。そこまで具体的に書いている歌詞ではないですが、「紅蓮」と「空白の四月」の歌詞を合わせて読んでいただけたら着地点が見えてくるというか、2曲とも前に進む1つの形を歌っているイメージですね。
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