【インタビュー】清春、カバーアルバムを語る「時代とか関係ない。何年経っても古くも新しくもなく」

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■時代は変わっていくけど
■これが真理かなと思いますね

──いつか実現することを楽しみにしておきます。話は少し変わりますが、いきものがかりの「SAKURA」やDREAMS COME TRUEの「やさしいキスをして」といった意外な選曲の女性ヴォーカルカバーも聴きどころだと思いました。

清春:カラオケみたいでしょ?

──そんなことはないですよ(笑)。

清春:ドリカムの「LOVE LOVE LOVE」は僕の<エレジー>でカバーしてたな。「アザミ嬢のララバイ」も「想い出まくら」もやってたね。「傘がない」は結構前から普通のライブやってた。「月」もワンフレーズだけやったことがある。やっぱ、どれもすごい売れてる曲ですよね。「想い出まくら」は古い曲だから知らない人も多いんだけど、実はかなり売れた曲なんだよね。



──非常にムードのある曲です。

清春:昭和の歌謡ショーみたいな番組の映像っていいよね。ステージの後ろに何個もボックスがあって、そこにミュージシャンがいて、全曲演奏する、みたいな。3ピースとか4ピースじゃなくて、クイズの台みたいなところに10人ぐらい、ホーンとかいろんな楽器のメンバーがいて、歌手だけが入れ替わり立ち替わりやって来る。画面に手書きみたいな曲タイトルが出て、古びた感じも含めて、哀愁があってさ。

──はい。

清春:「想い出まくら」「恋」「アザミ嬢のララバイ」みたいな昔の曲って、女の人の情念を歌ってるじゃない? この頃の曲って、“女が男についていく”みたいな歌詞が多い。“捨てられてもいい”みたいなさ。“こんなに私を傷つけて。でも、忘れられないわ”みたいな。時代は変わっていくけど、そういう歌詞を見ると、ある意味これが真理かなと思いますねー。近年女性はどんどん強くなってますけど、好きな人のための“いじらしさ”みたいなのが滲み出てて、素敵ですよね。

──たしかに、今回の選曲には、情念が滲み出ている曲が多いかもしれません。「月」を聴いた時、桑田佳祐さんとはまた違った切なさや狂おしさが響いてきました。

清春:原曲の、めちゃくちゃ上手いからなぁ。なんてゆうの、サザンオールスターズってメジャーすぎるものじゃないですか。サザン、ドリカム、ユーミン……日本にいたら、その人たちを知らないほうがおかしいじゃない? でも、僕はそういうのって、メジャー過ぎてあんまり聴いてこなかったタイプなんですね。ロックが好きだったので、世の中にたくさん出ているものは避けて通る傾向だった。昔は音楽を聴いてる人にもポリシーがあってさ。『ザ・ベストテン』とか『夜のヒットスタジオ』とか歌番組も多かった。ゴールデンタイムに歌番組が存在した時代。今はバラエティが主流だけど、当時は今より曲がすごくヒットしやすい時代だったよね。歌謡曲というものがもっと国民の生活の近くにあったのかな。だから僕らの世代って当時のヒット曲が記憶に残ってるんだもんね。

▲<東京・大阪ホール公演「Covers」>2019年8月13日(火)@メルパルクホール東京

──体に染みついているんですね。

清春:そこまで好きじゃないし、敢えて避けてたんだけど、どうしても聴こえてきちゃうっていうか。家族でご飯を食べてる時に、絶えずテレビから歌謡曲が流れてきてたんだと思うよ。ドリフターズの『8時だョ!全員集合』みたいなお笑い番組でも、1コント終わったら歌手の人が歌ったり。そのなかでも、“あんまり何回も聴きたくないな”っていうものもあったし、“この曲は何回も聴きたいな”って曲調を自然に精査できてたんです。“これは好き”とか、“これはもうチャンネル変えて”って。今みたいにYouTubeやSpotifyで選ぶんじゃなくて、自然に耳に入ってきちゃう。ラジオもベストテン番組が多かったしね。話戻るけど、桑田さんがソロを出した時、僕らのような者へはサザンよりも響いた記憶がある。この「月」とか「東京」とか。

──艶っぽい曲ですよね。

清春:うん。今回のカバー、明るい曲はほとんど1曲も入ってない。そういった意味では、僕らしいとは思います。

──今回、SADSの「忘却の空」のセルフカバーもされているそうで。

清春:そう。CDに入れるつもりだったんですけどね。

──ミュージックビデオとして収録される流れになったんですか?

清春:そうそう。何回歌ってもどーにも気に入らなくてさ。で、「次のアルバムに入れよう」って話になったんだよね。ミュージックビデオには入れてもいいからYouTube上では流すんだろうけどね。

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