【インタビュー】清春、カバーアルバムを語る「時代とか関係ない。何年経っても古くも新しくもなく」
■アルバムという概念はいずれなくなる
■年代で括ったほうがわかりやすいのかな
──敢えて、今回のカバーアルバムには「忘却の空」を入れなくてもいいと。
清春:先輩や同年代の人と話す機会がたまにあるんですけど、このあいだ“なるほどな”と思った話は、「いずれCDっていう括りはなくなって、“何年何月に発表した”っていう括りになるだろう」って。アルバムという概念はいずれなくなる。それよりも、“いつ歌った”とか、“いつ録った”かが大事になると思う。もちろん、アルバムとかのほうが括りやすいから、ツアーは、アルバムのリリースツアーっていうふうに組まれるんですけど、いずれそういう流れになる。そのほうが僕らにとってはいいかもね。アルバムタイトルを付けたばっかりに、「あのアルバムは良かったけど、今回のアルバムは良くないよね」って言われるおそれってあるじゃないですか。
──なるほど。納得します。
清春:たとえば、この『Covers』を作った時期に、オリジナルの曲を30曲ぐらい録音してたとするよね。で、それにアルバムタイトルを付けて3年間で振り分けてリリースしたとする。プリンスの未発表音源みたいに「すでに録ってあった曲ですよ」と言ったとしても、アルバムごとに振り分けると、結局はアルバム単位で評価されるじゃない。「1作目は良かったのに、3作目が良くなくなった」とか。でも、「実は、2019年にすでに30曲録ってあったんです」って、その3枚目のアルバムをリリースした後に言ったら、みんなが納得出来ると思うんですよ。3年後に出した、3枚に振り分けたうちの3枚目が、そのなかでも初期に作ったものだったりすると、なおさら。
──それはそうかもしれません。
清春:だけど、実際、先に作ったのは3作目だったみたいなことが後になってわかると、その評価って……みたいなさ。だから、長く活動してるアーティストほど、年代で括ったほうがわかりやすいのかなって思いますね。そうすれば、「バンドで作った」みたいな括りで言われなくなる。それよりも、その人が2019年に作って記録したっていうほうがシンプルでいいなって思いますね。
──パッケージというよりはアーカイヴを重視するようになっていくんですね。
清春:最近、RADIOHEADのデモ音源がハッカーにハッキングされて流出してしまった事件があったじゃない? その結果、先にその時期の曲をリリースしてしまおうっていうことになった。あの事件を見て、“今後はこういうふうになっていくんだろうな”って思った。METALLICAやU2のアルバム完全再現ツアーは、もちろんアルバムという形式が良かった時代のことだよね。でも、今後はそれがなくなっていくんじゃないかな、と。キャリアがあるとニューアルバムのリリースツアーと言いながらも、どうせアルバムの曲を全部やるわけじゃないんだし。キャリアが増えれば増えるほど、そういうものかなと思いますね。たとえば演歌の人って、昔の曲や人の曲も自分の歌みたいに頻繁に歌うじゃない? 僕らのジャンルは特にオリジナルにこだわりすぎ、という部分もあるのは確か。
──そこは柔軟にというところでしょうか?
清春:もちろんアルバムというコンセプトがあって、それに伴う事件性があってもいいんだけど、なかなかさ。昔の海外のアーティストだったら、ジャケットで思い出せる名作もあるけど、日本って、そういう土壌ができないまま終わるんじゃないですか。世界から見た日本のアーティストの作品って、まるでアルバム単位で括られてはいないからな。
──なるほど。
清春:でも認知されたとして、そのなかで向こうの人が聴いて気持ちいい曲をライヴでやった時に盛り上がるのはあるかも。アニメとかの影響で、アジア、南米、ヨーロッパでは“おお!”ってなるのかもしれないけど、もっとシンプルに勝負した場合、やっぱりプレイして気持ちいい曲が盛り上がるのが理想。で、ライヴが終わった後、YouTubeで海外の人が探した場合に、「サビでこう歌ってたんだな」っていうふうになるんじゃない? もちろん、昔からみんな洋楽に憧れてやってるわけなんで、アルバムで括りたい気持ちはわかるんですけど。衝撃的なアルバムって、いっぱいあったかもしれないけど、アルバムタイトルまではなかなか覚えられないよね。なんとなく、誰々の1stとか2ndっていうのはわかるけど、タイトルで戦えるまではいかないというか。
──たしかに、そういうアルバムは減少傾向にあります。
清春:“これがこの若いバンドのインディーズ盤でどうたらこうたら”とか、僕にはもうよくわからない。『Covers』は、デビュー25周年の企画の一環としてのカバーアルバムなんで、僕が今まで出してきた音源のなかではわかりやすいと思うんですけど、どうなんでしょう? 原曲を好きだった人とか、原曲を歌ってるアーティストを好きだった人がちょっと聴いてみて、“ああ、こういう感じになるんだね”っていう意見もあるだろうし、“清春、まだやってるんだ。久しぶりに聴いてみようかな”って人もいるかもしれない。今、ライヴに来てる人たちにとっては“清春さんはこれが似合う/似合わない”とか。いろんな感想が出てくる。まぁそれくらいでしょうかねー。
──清春さんにカバーしてほしい曲をファンの皆さんがリクエストしたくなるかも。
清春:Twitterとかであるようです、「これを歌ってほしい」とか。たとえば、「UAさんだったら『悲しみジョニー』じゃなくて、この曲を歌ってほしい」とか。「ひとまず黙ってこれ聴いてくださいよ」とは思いますかね(笑)。
▲<東京・大阪ホール公演「Covers」>2019年8月13日(火)@メルパルクホール東京
──皆さん、言いたい放題なんですね(笑)。この『Covers』を掲げたホール公演は8月13日のメルパルクホール東京で完結したわけですが、今後の具体的な展開は?
清春:今回リリースが遅れた理由もいろいろあって、『Covers』を録りながら違う曲を録ってたりしたんです。またオリジナルアルバムを作ります。すでに半分ぐらい曲はできてるんで、オリジナルアルバムのプリプロを始めて、足りない曲を作ります。「忘却の空」もまた歌い直してね。「忘却の空」は、キーがもう低くて。
──年齢を重ねてから、以前の楽曲の原曲キーを低く感じるというのは、珍しいケースなのでは?
清春:普通は逆なんでしょうね。黒夢とか初期のSADSの曲は、僕が最近普通に歌ってるキーよりも平均的に1音ぐらい低い。だからいまいち歌っても気持ちよくないんですよ。このあいだ、原曲キーを半音上げてもらって歌ってみたら、すごい歌いやすくて。ギターもベースもドラムも録り直して、新しい「忘却の空」をボーナストラック的に入れるつもりですかね。やってみなきゃわからないから、入らないかもしれないけど(笑)、とりあえずは、オリジナルアルバムを作ります。で、年末のライヴがあって、25周年イヤーが来年の2月9日で終わります。その付近までにはオリジナルアルバムを出したいですね。レコーディングが多くて嫌ですけど、ジリジリ地道にやっていきます。
取材・文◎志村つくね
■初のカバーアルバム『Covers』
【初回限定盤 (CD+DVD)】PCCA-04818 / ¥4,630+TAX(税込 ¥5,000)
【通常盤 (CD)】PCCA-04819 / ¥2,778+TAX(税込 ¥3,000)
▼CD収録曲 ※初回限定盤・通常盤共通
01. 傘がない 作詞・作曲:井上陽水 / 1972年
02. 悲しみジョニー 作詞:UA / 作曲:朝本浩文 / 1997年
03. SAKURA 作詞・作曲:水野良樹 / 2006年
04. 想い出まくら 作詞・作曲:小坂恭子 / 1975年
05. アザミ嬢のララバイ 作詞・作曲:中島みゆき / 1975年
06. 月 作詞・作曲:桑田佳祐 / 1991年
07. MOON 作詞:NOKKO / 作曲:土橋安騎夫 / 1988年
08. やさしいキスをして 作詩:吉田美和 / 作曲:中村正人 / 2001年
09. 接吻 作詞・作曲:田島貴男 / 1993年
10. 恋 作詞・作曲:松山千春 / 1980年
11. 木蘭の涙 作詞:山田ひろし / 作曲:柿沼清史 / 1993年
▼初回限定盤DVD収録曲
01. 傘がない (Short Ver.)
02. 悲しみジョニー (Short Ver.)
03. SAKURA (Short Ver.)
04. MOON (Short Ver.)
05. やさしいキスをして (Short Ver.)
06. 接吻 (Short Ver.)
07. 木蘭の涙 (Short Ver.)
08. 忘却の空 (Full Ver.)
▲『Covers』初回限定盤
▲『Covers』通常盤
■『Covers Music Clips』
PCBP-53933 / ¥5,800+TAX(税込 ¥6,264)
01. 傘がない
02. 悲しみジョニー
03. SAKURA
04. MOON
05. やさしいキスをして
06. 接吻
07. 木蘭の涙
08. 忘却の空
▲ミュージックビデオ集『Covers Music Clips』
■<elegy>
・一部 open 17:30 / start 18:00
・二部 open 20:30 / start 21:00
2019年9月19日(木) Mt.RAINIERHALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
・一部 open 17:30 / start 18:00
・二部 open 20:30 / start 21:00
(問)HOTSTUFF PROMOTION:03-5720-9999
■<The Birthday>
https://kiyoharu.tokyo/inos/reg/
■<’19 FINAL>
12月25日(水) 名古屋BOTTOMLINE
12月27日(金) 梅田CLUB QUATTRO
12月28日(土) 梅田CLUB QUATTRO
12月31日(火) 渋谷ストリームホール *カウントダウン公演
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