【インタビュー】IKUO、超絶テクのマニアックな音楽性ながら爽快感に溢れた聴きやすいロック・アルバム『Easy come,easy core!!』

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■落ち込むのと悔しいというのは似ているようで違うんですよね
■落ち込んだことを悔しさに変えれば前向きな気持ちになれる


――次に歌詞について。今作でIKUOさんが書かれた歌詞は、“自分を信じて自身が目指す未来へ突き進め”というメッセージが基盤になっていますね。

IKUO:今回僕が歌詞を書き下したのは「Fly」と「僕らの約束」「Road to tomorrow」の3曲ですけど、今回の制作で一番時間がかかったのが歌詞でした。とにかくテーマや言葉が出てこなくて、これは環境を変えたほうがいいなと思って、ファミレスに行く、街中に出てみる、自然の中を散歩するとかいろいろやってみたんですよ。RayflowerとかBULL ZEICKEN 88の歌詞を見直したりもしたけど、全然書けなかった。でも「Fly」は早く書けたんです。歌詞の量が少ないというのもあるけど、「Fly」は本当に自分が思っていることを形にしたんですよ。それを読んで、作詞家みたいな上手い言い方じゃなくてもいいから、自分が思っていることを書こうと決めたんです。「Fly」は言われたとおり前向きな歌詞だけど、それには理由がある。今年になって僕はかつてないくらいヘコんだことがありまして。“俺はダ メだ”と心の底から思って。

――IKUOさんの中では大きな出来事だったんですね。

IKUO:そう。人から必要とされなくなったら自分はどうやって生きていけばいいんだ...みたいな感じでしょうか。去年まで考えていなかったことを今年に入ってから考えるようになったんです。それで“ガーン!”ときて、その時に「Fly」の歌詞ができた。だから、前向きではあるけど自分を慰めたり鼓舞する歌ですよね、逆にいえば。“何度でもトライしてやる”と。悔しい感情というのはバネになる。落ち込むのと悔しいというのは似ているようで違うんですよね。落ち込んでばかりいると どんどんダメになっていくけど、それを悔しさに変えれば、またのし上がっていってやるという気持ちになれる。それで、ソロアルバムを作ろうと思ったわけで、そういう自分の内面を書いたのが「Fly」です。

――「僕らの約束」の歌詞は、昔のバンド仲間に向けたメッセージでしょうか?

IKUO:いえ、これは僕が飼っていた猫の歌です。今回のジャケットになっている、みーくんという猫。18年間飼っていて、今年の3月に死んでしまったんです。もともと心臓が悪くて薬を飲ませていたけど、18才になっても超元気だったんですよ。それが、突然目の前で スッと死んでしまった。家に帰ったら死んでいた...じゃなくて、目の前で息を引き取ったんです。「僕らの約束」は、みーくんと過ごした18年間のことを書きました。みーくん目線の歌詞で、“君”というのが僕のことなんですよ。みーくんのことを書こうと思ったけど、僕の目線だと悲しい言葉しか出てこなくて、それは違うなと思って。それで、みーくんの目線で僕のことを歌っている歌詞にしました。この歌詞はノン・フィクションです。“海の見える公園で”というのは、みーくんは当時一緒に仕事をしていた松本梨香さんが公園で拾ってきた猫で、“ボロく狭いワンルーム”というの は、当時の僕はそういう部屋に住んでいたんです。“AMAZE”というのは僕が使っているESPのベースのモデル名だし、“Long way”は僕のデビュー曲のタイトルなんですよね。“諦めないさ『誇り』なら迷わず手に入れろ”というのは「Long way」の歌詞なんですよ。だから、みーくんが僕にがんばれと言っているという歌詞です。


――リスナーの背中を押す曲になっています。では、続いて今作のベース・プレイについて話しましょう。

IKUO:ベースに関しては、今回は8弦ギターとベースをどう共存させるかということが一番大きなテーマとしてありました。8弦ギターは一番低い音が“F#”。ベースがF#でリフを演奏する時は4弦の2フレットになる。そうすると、かなり帯域が近くなるんです。ベースも“ローF#”まであれば下にいけるけど、僕はあえてレギュラーチューニングで、うまくベースとギターを絡めたかったんです。でも、そうするとベースの音が聴こえなくなってしまう。だから、エンジニアさんに前もって、どうやってベースを聴かせるかというところで苦労することになると思いますと伝えました。今回エンジニアはSTUDIO PRISONERというメタルコア専門のスタジオ......CRYSTAL LAKEやNOCTURNAL BLOODLUSTが愛用しているスタジオのHiro君にお願いしたんですよ。『Easy come,easy core!!』はポップな要素も必要なのでそこに対応できるかなという不安もあったけど、ここは8弦ギターのエキスパートに頼もうと思って。で、最初にあがってきたトラックはやっぱりベースが聴こえなかった。それで、ベースとギターをうまく共存させてほしいと伝えたら、“じゃあ、ちょっといろいろやってみます”とすごくいい形に仕上げてくれました。8弦ギターのローをかなりカットしたみたいですね。ギターのローをカットしてベースのハイ/ミッドを上げて、ベースはピッキングで聴かせる感じになっている。それが見つかったので、全曲このパターンでとお願いしました。

――クリア&ラウドなサウンドも今作の大きな魅力になっています。それに、こういう音像に持っていけたのは、Ledaさんがギターのゲインをかなり落としていることもポイントな気がします。

IKUO:STUDIO PRISONERのHiroさんというエンジニアはMETAL SAFARIというバンドのギタリストで、”今回ギターの音は僕が作ります”と言ってくれたんです。だから、Leda君はライン録りの素の音のデータをHiro君に渡して、それをHiro君がリ・アンプしたんです。8弦ギターで歪んでいないというのは、Hiro君のセンスなんですよね。バッキングはEVHの5150を使って、ソロはソルダーノを使ったと言っていました。で、彼はいろんなブースターを持っていて、見たことがないブランドのヤツなんですけど、“これが90年代のメタル・サウンド”“これが2000年くらいでこっちは2010年”とか言うんですよ。時代によってブースターを使い分けていて、それを駆使して今回のギターの音を創りあげたんです。

――ベース・プレイに関しては随所で超絶的なプレイを聴けますが、とりあえずライブで歌いながら弾くことは考えないようにしたのでしょうか?

IKUO:これでも制御しました(笑)。本当はもっと複雑にできたんですよ。BULL ZEICKEN 88みたいに、歌の後ろでもっとテクニカルなことをやりたかった。でも、これ以上やると歌えないというのがあったので。

――音源のベースであれば弾きながら歌える?

IKUO:わからない(笑)。これから練習するんですけど、自信はないです(笑)。サビの後ろで結構動いている曲が多くて、その辺は省略するしかないかもしれない。でも、ライブのことを重視し過ぎて極端にシンプルなベースを弾くというのは違うなというのがあったから。テクニカルな面とライブで歌いながら弾くことのバランスを考えて、ここかなというところに落とし込みました。

――ベースプレイで特に印象の強い曲をあげるとしたら?

IKUO:1曲目に入っているインストゥルメンタルの「EBM」ですね。1曲目に自分のテクニックを全部集約させようと思って、とにかくやりまくったので(笑)。たぶん、今まででも一番速いプレイをしています。

――スラップも含めて、かなりの高速プレイでいながら1音1音がクリアに聴こえることに圧倒されます。

IKUO:僕は、いわゆる“ロータリー奏法”というのを使っているんです。右手親指のアップダウンと中指のプルという3つの動きをはめていく奏法で、ちょっとハイポジにいった時は中指も加えた“ドドペペ”という4音になる。それを組み合わせています。「Pride in motion」の中間に出てくるメタルギターっぽいフレーズも、4音のロータリー奏法。ヴィクター・ウッテンがよくやる奏法で、今回はそれだらけです。これを売りにしたいという(笑)。

――IKUOさんならではの“饒舌ベース”にさらなる拍車がかかっていますね。

IKUO:「EBM」は、わざとそれを押し出しました。もうなにを言われようが最速にチャレンジしようと思って。それを「EBM」に集約させて、後は歌をしっかり聴かせるベースということを意識しました。

――とはいえ、他の曲もベースの聴きどころは満載で、特にベースソロはテクニカルなプレイが目白押しです。

IKUO:ベースソロは結構ありますね。ソロパートは全部アドリブです。なにも考えずにバァーッと弾くという。だから、二度と同じことは弾けない(笑)。

――ただ単に弾きまくっているわけではなくて、流れのあるソロになっていますよね。

IKUO:その辺は、事前に大まかな流れをイメージしているんですよ。でも、それくらいで、フレーズを決め込んだりはしない。あと、ギターソロはバックが地味になることが多いじゃないですか、特にベースは。だけど、70年代のラッシュやクリーム、ジミ・ヘンドリックスとかは、トリオでバトルするような感じになっていますよね。そういうトリオバンドならではのテイストを活かしたいというのはありました。

――バトルといえば、「Fly」のベース・ソロは掛け合いになっていますが、どなたかベーシストが参加されているのでしょうか?

IKUO:あの曲は、僕とLeda君のバトルです。ベース2本のように聴こえるけど、1本は8弦ギターなんですよ(笑)。8弦ギターというのは、スラップをやる人が多いんですよね。アニマルズ・アズ・リーダーズのトシン・アバシが8弦でスラップをやるのを流行らせたこともあって、ISAO君とかLeda君もスラップをするんです。「Fly」の裏テーマは“スラップ・バトル”で、実は2番のAメロのバッキングもベースじゃないんですよ。そこは、Leda君にスラップをしてもらってベースはお休みしています。「Fly」はMVも撮って、もうバトルだらけの絵にしました(笑)。

――8弦ギターのロー感というのはすごいですね。ベース・ソロでは、「Make you free feat.まらしぃ」のジャジーな速弾きも注目です。

IKUO:このソロはフュージョンを意識しました。これは3フィンガーを使っています。親指と人差指、中指で弾くパターン。ギターでアルペジオを弾くような感覚で、1本の弦を続けて弾くんです。ビリー・シーン的な3フィンガーではなくて、最近はそれを多用しているんですよ。自分の中で、僕の専売特許かなと思って(笑)。それに、「Make you free feat.まらしぃ」のソロはフレットレスっぽく聴こえるけど、普通のフレッテッドベースです。リアPUを使ってちょっとジャコ・パストリアスっぽくする...みたいな(笑)。

――『Easy come,easy core!!』は作詞/作曲ができて、歌も歌える超絶ベーシストというIKUOさんにしか作れないものですし、ベーシストのソロアルバムというイメージを覆す、聴きやすさも魅力的な一作になりました。

IKUO:そう言ってもらえると、めっちゃ嬉しいです。『Easy come,easy core!!』はベーシストに限らず、いろんな人に届くといいなと思っているんですよ。楽しんでもらえる自信はあるので、ぜひ聴いてみてほしいです。

――他では聴けない爽快感をぜひ味わってほしいですね。アルバムのリリースに加えて8月に東名阪ツアーも行います。

IKUO:今回はステージ上に3人しかいない形でやります。僕はベース&ボーカルというバンドのメインになる位置ですけど、とりあえずは演奏して、歌うことに必死だと思う(笑)。“ひぃひぃ”言いながらライブをするとは思いますが、楽曲はポップなのでお客さんにはもう好きにノッてもらって、思いきり楽しんでもらいたいですね。テクニックを目当てにきてくれる人はもちろん、楽器をやっていない人にも楽しんでもらえるライブになると思う。“Easy come,easy core!!”という言葉どおり、イージーな感覚で来てもらって、好きなように楽しんでスカッとして帰ってほしいです。

取材・文●村上孝之

リリース情報

『Easy come,easy core!!』
2019/07/24発売
KICS-3830 定価\3,000 + 税
1.EBM
2.Fly
3.Jumping out
4.Pride in motion
5.Confession
6.Arch of the rainbow
7.ヒラリ
8.僕らの約束
9.Hands Up!
10.Make you free feat.まらしぃ
11.Road to tomorrow
12.My Sharona

ライブ・イベント情報

<IKUO 2nd Live Tour ~Easy come,easy core!!~>
■出演
Bass.Vocal: IKUO
Guitar: Leda
Drums: KenT(The Winking Owl)
2019年08月04日(月曜日) 大阪MUSE(大阪)
問)サウンドクリエーター 06-6357-4400
2019年08月05日(火曜日) 名古屋ell.FITS ALL(愛知)
問)サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
2019年08月12日(月曜日) 高田馬場CLUB PHASE(東京)
[昼・夜2部制]
問)ディスクガレージ 050-5533-0888 ※昼と夜の公演は完全入替

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