【インタビュー】キャサリン・ジェンキンス、愛と祈りに満ち溢れた新作『光に導かれて～ガイディング・ライト』

■私は日本が大好きでいろいろな思い出があるんです
■いつも「また来たい」と思っています

──2曲目の「天使への嫉妬」と8曲目の「あなたのいるところへ」では亡くなった方への愛情を歌われていますが、お父様のことを思って歌われているのでしょうか？

キャサリン：まず、「あなたのいるところへ」はもともとすごく好きな曲だったのですが、かつてアメリカで一つのプログラムがありました。それは人生の中で起こった大事なこと、大切な人のことを話すプログラムでした。そのときに私は父の話をしました。前から歌いたかった曲ですが、十分、父のことに向かい合えるだけの強さが私の中にはなかった。でも、今なら歌えると思ってこの曲を入れたのです。「天使への嫉妬」は、私が書いたのではと思うぐらいに自分の父に対する気持ちがそのまま含まれています。実際、父の病気がわかったときは余命6ヶ月と言われていたんですが、実際には6週間で亡くなってしまったんです。「さようなら」を言う時間もなくてアッという間に父を失ってしまった悲しい体験をしました。でも、同じような経験をされた方がたくさんいるということを知ったんです。大切な人を亡くした悲しみを抱いている、同じ境遇の方がたくさんいると実感したので、この曲を録音して本当に良かったと思っていますし、すごく私にとって特別な曲になりました。

──なるほど。一方、13曲目の「ザンダーの歌」は新曲でキャサリンさんが作詞もされていますが、この曲に込めた想いは？

キャサリン：私は息子が生まれて5週間で仕事を再開、レコーディングを始めましたが、息子は私に非常にインスピレーションを与えてくれる存在でしたので、スタジオに連れていったりしていました。そんな中、ある日、息子が腕の中で寝てしまったことがあって、この曲は息子のために歌った子守唄なのです。おそらく多くの母親が願うだろう子供の健康や幸せを祈る曲で、最初は息子のためだけに歌いましたが、プロデューサーに聴かせたら「じゃあ、ぜひ、この曲もアルバムに入れよう」ということになりました。この世に生まれてきてくれた息子のためにこういう曲が生まれたことをとても嬉しく思っていますが、息子がティーンエイジャーになったときにこの歌を聴いたら、ちょっと恥ずかしがるんじゃないかな（笑）。

──心が温まる素晴らしい曲だと思います。

キャサリン：ありがとうございます。

──それと7曲目の「あなたの愛に目が眩む」のバックに子供の声が入っていますが、もしかしてお子さんの声ですか？

キャサリン：（笑）はい。娘の声です。いろいろな子供たちがいろんな言語で“ブラインド?”と言っています。娘はまだ子供なので、一つ一つの単語をきちんと言えなくて、母親として一語、一語、指導したのですが、いざレコーディングになったらサラサラッと「私、こんなにできるのよ」という感じで言えたので母親として嬉しいことでしたし、娘にとっても母親とデュエットしている気持ちになっていたようで、すごく喜んでくれたようです。

──「今日も新しい朝が」は2パターンが収録されていますね。

キャサリン：もともとは一人だけでレコーディングしたのですが、ウェールズのレジェンドと言えるブリン･ターフェルさんと共演できたので、せっかくだから入れようということになりました。彼のことは本当に尊敬していて、私が地元の聖歌隊に入っていた15才のときから彼がソリストで一緒に歌っていたのですが、当時、サインをもらったほど大好きな歌手なので、こうやって一緒に歌えたのは本当に光栄なことでした。


──本当に素晴らしいアルバムを届けていただき、感謝しています。最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

キャサリン：皆さんのサポートと愛に感謝しています。私は本当に日本が大好きで、何回も来日していろいろな思い出があるんですが、来るたびにどんどん好きになって、いつも「また来たい」と思うのです。今回のコンサート来られない方も、次回、お会いできるのをまた楽しみにしています。

キャサリン・ジェンキンスは、3月21日の日立システムズホール仙台コンサートホールに続いて3月25日にオーチャードホールで来日コンサートを敢行。オーケストラを従えて、メッゾ・ソプラノの圧倒的な声を存分に届けてくれた。最新アルバムからは「家路へ」「天使への嫉妬」「ネヴァー・イナフ」を披露。他、クラシックの名曲からミュージカル曲まで幅広い選曲で楽しませてくれた。

取材・文●森本智



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