【ライブレポート】植田真梨恵、<Lazward Piano>完遂「ロマンティックなひと時を」
植田真梨恵のアコースティックギターと歌、西村広文のグランドピアノというふたりだけのステージ<Live of Lazward Piano-凍てついた星座->。同ツアーは、3月10日の長崎・旧香港上海銀行長崎支店記念館を皮切りに3月23日の大阪市中央公会堂 大集会室まで、全4公演の規模で行われ、とびきりロマンティックな夜を各地で演出した。その2本目となる3月17日(日)の東京・日本橋三井ホールのレポートをお届けしたい。
◆植田真梨恵 画像
2013年から回を重ねてきたこの<Live of Lazward Piano>シリーズだが、今回のツアーでは特に会場選びにもこだわられていて、通常のライブハウスやホールとは違う、クラシカルで重厚な佇まいを持った場所を主な舞台としている。長崎は旧香港上海銀行長崎支店記念館、北海道は札幌バプテスト教会、大阪は大阪市中央公会堂で、東京は唯一商業ビル内にある会場だが、伝統と革新が融合する街として再開発が進む日本橋という地での開催だ。どの場所も、<Live of Lazward Piano>という厳かかつ先鋭的で、パッションのあるライブにぴったりだろう。
ピアノと弦楽器による美しいSEが流れる会場は、観客で埋まっていながらも静かな緊張感が漂う。この雰囲気が<Lazward Piano>らしい。植田真梨恵、西村広文が登場し、ブルーの薄明かりのなか、ピアノの前に座った西村がキラキラと静かで瞬くようなフレーズを紡ぎ出すと観客はさらに耳を澄まし、目を凝らす。そして、すっと息を吸い込んで「さよならのかわりに記憶を消した」を歌いはじめる植田のボーカルに観客はさらに前のめりとなっていく。エンディングで繊細で伸びやかなファルセットを聴かせると、アコースティックギターを抱え、「白い月」へ。クレッシェンドする力強いギターのカッティングとピアノとのアンサンブルで会場を高揚させながら、「変革の気、蜂蜜の夕陽」でさらにボルテージを高めていく。祈るような強さを持ったボーカルが、観客の心を揺さぶる。
この日はとても、“歌”を、“歌う”ことへのパワーが感じられる。2018年に行なった<Live of Lazward Piano“bilberry tour”>での緻密な構築性、そこから生み出される緊張感や音楽家同士がぶつかり合う高いエネルギーともまたひと味違った、声、ボーカルの表現を武器に歌で圧倒していく感覚も強い。ロングトーンで深みあるビブラートを響かせたり、マイクを離して生の声で歌う場面もあり、声で会場を掌握して包んでいくようだ。終演後に本人に少し話を訊いたとき、今回のツアーは「会場の雰囲気とあいまってオペラの舞台のようなイメージも沸いた」とのことで、納得。「心と体」「未完成品」、そして「JOURNEY」と疾走感溢れる曲では、観客が自然と熱っぽい手拍子を送り、ライブ前半から力強いエネルギーが会場に充満している。
軽く自己紹介を挟み「最後までロマンティックなひと時をお過ごしください」と告げた後は、「プリーズプリーズ」を繊細なピアノフレーズにのせて語るように歌う。続く、インディーズ時代のアルバム『葬るリキッドルーム』収録の熱いロックサウンドの「流れ星」のガラリと印象を変えたアレンジは新鮮で、ピアノの単音とミュートしたギターに、ひとつひとつ言葉を置いていくような歌が切なく心揺さぶる。そして「スペクタクル」から「夢のパレード」へと、夜の持つ、美しく静かで、時に恐ろしくも愛おしいような時間の濃さを、その音と歌とで編み上げていった。
MCでは、メジャーデビュー5周年を迎えたこと、悔いの残らないようにたくさんの曲を作りたいこと、これまでも後悔なく生きてきたけれど、さらに今日という日を全力で愛おしんで歌いたいと語り、「愛おしい今日」をエモーショナルに歌う。
後半に向かっては、「softly」「勿忘にくちづけ」、そして「FAR」と、新作『F.A.R.』からの曲が続く。リリースされたばかりの曲が早速、ピアノとアコースティックギターでリリカルにリアレンジされ、新たな魅力を引き出していく。じっくりと新曲を聴かせた後は、植田と西村ふたりでグッとアクセルを踏み込むようにして白熱した演奏で会場を沸かせていった。
「メリーゴーランド」でハイカロリーなアンサンブルを聴かせ、“スリー、フォー!”という掛け声からアグレッシヴに「スメル」を聴かせ、「よるのさんぽ」ではカズーを吹きながらシニカルなロックンロールで観客を弾ませる。エキサイティングなセッションに観客からは大きな歓声が上がり、その拍手のなか、ジャジーなピアノや遊びのあるスキャットを響かせて、シックな曲へと続いていくのかと思いきや、パーカッシヴな「サファイア!」のピアノイントロがはじまり、さらに歓声が大きくなる。大きく身振り、手振りを交えて笑顔で歌う植田、椅子から跳ね上がるようにして全身で鍵盤を弾く西村に、会場は眩しいほど晴れやかな本編エンディングを迎えた。
止まない拍手喝采に迎えられてアンコールに立ったふたりは、4月にリリースされるミニアルバム『W.A.H.』からの新曲「長い夜」や、それに先駆けてリリースした配信シングル「Bloomin’」、インディーズ時代の曲から「光蜜」を披露。冬から春に向かうこの季節、冬の“凍てついた星座”の凛とした緊張感をパッケージしつつ、その先の柔らかに花がほころぶ季節の情緒も表現された、とても美しい一夜となった。
「今日、私、楽しかったです(笑)。<Live of Lazward Piano-凍てついた星座->ということで、冬を凍りづけにしたようなライブになるかなと思って、お届けしました。もう半分くらい春が訪れているような感じがしますが、みなさんの生活のなかでも、いろいろな変化があったり、もう一段階オトナにならなければいけないタイミングが訪れるかもしれません。私もまだまだ5周年のペーペーなので、明日からもいっぱいがんばっていきます」。最後の「光蜜」を前に彼女はこう語った。“これっぽっちの灯り それでも火は灯ってる”という一節に明日が光り輝くようなエンディングだ。
植田真梨恵は4月17日にコンセプトミニアルバム『W.A.H.』をリリースするほか、5月6月よりバンド編成による<植田真梨恵 LIVE TOUR 2019 [F.A.R. / W.A.H.]>をスタートさせる。彼女の5周年アニバーサリーは強い煌めきを放ちながら進んでいく。
取材・文◎吉羽さおり
撮影◎山口渚
■<Live of Lazward Piano -凍てついた星座->2019年3月17日(日)@東京・日本橋三井ホールSETLIST
02. 白い月
03. 変革の気、蜂蜜の夕陽
04. 心と体
05. 未完成品
06. JOURNEY
07. プリーズプリーズ
08. 流れ星
09. スペクタクル
10. 夢のパレード
11. 愛おしい今日
12. softly
13. 勿忘にくちづけ
14. FAR
15. メリーゴーランド
16. スメル
17. よるのさんぽ
18. サファイア!
encore
en1. 長い夜
en2. Bloomin'
en3. 光蜜
■植田真梨恵メジャーデビュー5周年YEARの幕開け『祝5周年!5作連続リリース!』
1月23日 LIVE Blu-ray『Live of Lazward Piano “bilberry tour” at 東京グローブ座』
2月20日 二作連続コンセプトミニアルバム『F.A.R.』
3月13日 デジタル配信シングル「Bloomin’」
4月17日 二作連続コンセプトミニアルバム『W.A.H.』
【第五弾】二作連続コンセプトミニアルバム『W.A.H.』
【初回限定盤 (CD+DVD)】GZCA-5286 ¥2,500(Tax out)
※紙ジャケ仕様
(1. entrance)
2. Bloomin’
3. 勿忘にくちづけ
4. 花鬘
5. 灯
6. 長い夜
7. ひねもす
▼初回限定盤 特典DVD
植田真梨恵 LIVE TOUR UTAUTAU vol.3
2017.9.6 サンケイホールブリーゼよりLIVE映像14曲収録
01. REVOLVER
02. FRIDAY
03. カーテンの刺繍
04. シンクロ
05. 灯
06. 愛と熱、溶解
07. 最果てへ
08. ふれたら消えてしまう
09. 砂漠の果てに咲く花
10. 箱
11. わかんないのはいやだ
12. 夢のパレード
13. スペクタクル
encore
en1. 彼に守ってほしい10のこと
【通常盤 (CD ONLY)】GZCA-5287 ¥1,800 (Tax out)
(1. entrance)
2. Bloomin’
3. 勿忘にくちづけ
4. 花鬘
5. 灯
6. 長い夜
7. ひねもす
▼「W.A.H.」リリース記念イベント
4月16日(火) 関東会場
4月17日(水) 関東会場
4月18日(木) 福岡会場
4月20日(土) 名古屋会場
4月21日(日) 関西会場
【第一弾】デジタル配信シングル「FAR」
詞と曲:植田真梨恵
arrange:徳永暁人
strings arrange:池田大介
drums:車谷啓介
guitars:岩井勇一郎
bass, keyboards, chorus & programming:徳永暁人
▼配信情報
iTunes
レコチョク
BEING GIZA STUDIO
■【第二弾】LIVE Blu-ray『Live of Lazward Piano “bilberry tour” at 東京グローブ座』
【Blu-ray + LIVE CD】GZXA-8034 ¥6,500 (Tax out)
※初回生産分のみ、新曲「bilberry song」収録 8cm CD封入(音源がダウンロードできるQRコード付)
▼Blu-ray 収録曲
<植田真梨恵 Live of Lazward Piano “bilberry tour”>2018.3.25@東京グローブ座
01. 壊して
02. きえるみたい
03. 流れ星
04. スメル
05. S・O・S
06. hanamoge
07. メリーゴーランド
08. 優しい悪魔
09. a girl
10. 灯
11. 勿忘にくちづけ
12. I was Dreamin’ C U Darlin’
13. 夢のパレード
14. 心と体
15. センチメンタリズム
16. FRIDAY
17. 変革の気、蜂蜜の夕陽
18. よるのさんぽ
19. さよならのかわりに記憶を消した
encore
EN-1 REVOLVER
EN-2 旋回呪文
EN-3 サファイア!
EN-4 朝焼けの番人
▼LIVE CD 収録曲
<植田真梨恵 Live of Lazward Piano “bilberry tour”>2018.2.18@京都文化博物館 別館ホール
01. ハルシネーション
02. 白い月
03. スメル
04. JOURNEY
05. シンクロ
06. ザクロの実
07. ソロジー
08. 僕の夢
09. アリス
10. ハイリゲンシュタットの遺書
11. ペースト
12. 心と体
13. センチメンタリズム
14. FRIDAY
15. 吠える虎
【第三弾】二作連続コンセプトミニアルバム『F.A.R.』
【初回限定盤 (CD+DVD)】GZCA-5284 ¥2,500(Tax out)
※紙ジャケ仕様
01. FAR
02. ロマンティカ
03. プライベートタイム
04. さなぎから蝶へ
05. 苺の実
06. softly
(07. EXIT)
▼初回限定盤 特典DVD
たったひとりのワンマンライブ vol.3 “good-bye stereotype”
2018.10.19 久留米シティプラザ 久留米座よりLIVE映像13曲収録
01. アリス
02. 最果てへ
03. 砂漠の果てに咲く花
04. カルカテレパシー
05. 210号線
06. よるのさんぽ
07. 雨にうたえば
08. 勿忘にくちづけ
09. 花鬘
10. ペースト
11. 心と体
12. 変革の気、蜂蜜の夕陽
encore
en1. コンセントカー
DOCUMENT MOVIE まわりくるめロケ -ふるさと編-
【通常盤 (CD ONLY)】GZCA-5285 1,800 (Tax out)
01. FAR
02. ロマンティカ
03. プライベートタイム
04. さなぎから蝶へ
05. 苺の実
06. softly
(07. EXIT)
■<植田真梨恵 LIVE TOUR 2019 [F.A.R. / W.A.H.]>
open16:30 / start17:00
(問)キョードー東北 022-217-7788
5月11日(土) 香川 高松MONSTER
open17:00 / start17:30
(問)デューク高松 087-822-2520
5月19日(日) 福岡 イムズホール
open16:30 / start17:00
(問)キョードー西日本 0570-09-2424
5月26日(日) 愛知 クラブクアトロ
open16:30 / start17:00
(問)サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
6月02日(日) 北海道 KRAPS HALL
open16:30 / start17:00
(問)マウントアライブ 011-623-5555
6月08日(土) 広島 セカンド・クラッチ
open18:00 / start18:30
(問)夢番地広島 082-249-3571
6月16日(日) 大阪 BIGCAT
open16:15 / start17:00
(問)サウンドクリエーター 06-6357-4400
6月23日(日) 石川 金沢AZ
open16:30 / start17:00
(問)キョードー北陸 025-245-5100
6月30日(日) 東京 恵比寿 ザ・ガーデンホール
open16:15 / start17:00
(問)H.I.P. 03-3475-9999
▼チケット
一般発売:4月6日(土)
■生配信ライブ『まりえのま vol.1 @ hillsパン工場』
植田真梨恵Official YouTubeチャンネルにて配信予定
https://www.youtube.com/user/uedamarie
◆植田真梨恵『祝5周年!5作連続リリース!』BARKS内特集ページへ
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