【ライブレポート】植田真梨恵、10周年公演で「これからもみなさんのパワーになる歌を」
1stミニアルバム『退屈なコッペリア』で、インディーズデビューをして10年となる植田真梨恵が7月30日、アニバーサリーライブ<indies 10th ANNIVERSARY LIVE loadSTAR>のファイナルとなる東京公演を開催した。今回は、インディーズ時代の曲に絞ったレアなセットリストによるライブ。コアなファンが集った新宿ReNYは、頭から熱気に満ちていた。
◆植田真梨恵 画像
オープニングのSEに使われたのは、1stミニアルバム『退屈なコッペリア』リリース時、テレビに出演した際の初々しいインタビュー音源だ。そしてバンド“いっせーのーで”(車谷啓介[Dr]、麻井寛史[B]、西村広文[Key]、北田慧[G]) のメンバーが登場すると、フロアから歓声が沸き起こる。それぞれのTシャツの胸には、“IS” “SE” “NO” “DE”と記されていて、その演奏同様に効いていたのが遊び心。一段と歓声や手拍子が大きくなるなか、植田真梨恵が登場し、「未完成品」からライブはスタートした。「ハルシネーション」では、ギターを置きマイクにもたれて、エモーショナルにもシアトリカルにも歌う。軽く挨拶を挟んで、そこからは怒涛の展開へ。
普段のライブでもよく演奏される「センチメンタリズム」にはじまり、4thアルバム『センチメンタルなリズム』(2012年発表)の曲を中心にフロアの熱気を上げていく。インディーズ時代から一風変わった彼女ならではと言えるリズムやブレス感を持った、うねるような、また切迫感のあるメロディラインや歌と言葉を描く植田真梨恵。その独自のメロディを際立たせるように、“いっせーのーで”バンドサウンドが再構築された。
「優しい悪魔」は西村によるピアノと歌でゆったりとメロウに響かせ、観客がその歌に酔いしれてじっと聴き入っているところに、重厚なロックサウンドを「壊して」で叩きつけ、「旋回呪文」のダンサブルなビートで容赦なく身体を揺らす。気心の知れたバンドと生み出すサウンドはアグレッシヴで、呼吸も抜群。なかでも、ミディアムなテンポでずっしりと重いビートを刻む「飛び込め」の激情サウンドは圧巻だ。
中盤のMCでは、“こうして10年続けてこられた喜び”や、“自分の音楽を聴いてくれる人がいたからこそやってこれた”こと、またこの日、“インディーズ時代の曲たちを演奏しながら、制作当時のこと、その時の心境のフラッシュバック率が相当高かった”ことを語った。なかでも“1年くらい、自分はどんな曲を書けばいいのかわからなくなってしまった時期もあった”のだという。そのとき「植田さんが思ったままの曲を書けばいい」と言ってもらえたことから出来た楽曲が、「心と体」(2013年発表シングル)だったと語り、同曲へ。疾走感溢れるギターサウンドで、心が叫びを上げるそのままを歌うこの曲は、音楽への衝動や歌への欲求そのものの高い熱量が形になっている。植田真梨恵にとっての原点的な曲のひとつだろう。
そして、本編ラストに演奏されたのは、2ndアルバム『U.M.E.』(2009年発表)に収録された「コンセントカー」だった。こちらの曲もまた、思春期の複雑に絡んだ思いや、他者には不可侵な、でもどこかでわかってほしいと願う自分自身というものについて歌い上げている曲だ。シンガーソングライターのサガとして書かざるを得ない曲。これもまた、彼女の原点と言える曲だ。アコースティックギターをかき鳴らしながら、思いを解き放つ歌はいつになくエモーショナルに響いた。
止まない拍手喝采のなかでアンコールに応えた植田真梨恵は、ステージ袖からほふく前進で登場。きっと演奏中も、この10年、シンガーソングライターとしてキャリアを重ねてこられた喜びなどで、エモーショナルになった瞬間もあっただろう。ちょっとした照れ隠しなのか、サービス精神なのか、ついついひねくれてしまうところがあるのも彼女の魅力。このアンコールでは、マネージャーからの一言がなければ、今年こうしてインディーズデビューから10年を迎えることにも気づかなかったと語り、10年間並走してくれたマネージャーへの感謝も伝えた。
そして弾き語りで「夜空」を聴かせ、バンド編成にて「光蜜」を演奏すると、ここでバンドやスタッフからのサプライズ! バンド“いっせーのーで”が突然「星に願いを」を演奏しはじめ、10周年を祝うケーキが登場した。フロアからも、“おめでとう!”の声が湧くなか、「こういうとき、どうしたらいいかわからない……マネージャー!」と、驚きと嬉しさと、10年分のフラッシュバックが一気にやってきたのであろう、目を潤ませた。しかし観客が彼女の次の言葉を待つなかで、ケーキに思い切りかぶりついてクリームまみれに──やっぱりどうしても、笑いに持っていってしまうところが、愛らしい。
ちなみに今回のツアータイトル<loadSTAR>には、“道しるべになる星”という意味があるという。このライブに寄せて、“自分が何者で、どんな曲を生み出せるか、手探りでそのときどきの思いを歌にして切り取ってきた”こと。“計画的というよりは、思いがけないことに導かれて、たくさんの人に助けられて、ここまで進んできた、その思いを<loadSTAR>に込めた”と語っている。
最後に、「思いがけないことの連続となった10年。みなさんのパワーになる歌を、これからも書いていきたい。ありがとうございました」と伝え、「変革の気、蜂蜜の夕陽」に溢れ出る思いをすべてのせて、大きく大きくその歌を響きわたらせた。
取材・文◎吉羽さおり
撮影◎竹谷さくら
■<indies 10th ANNIVERSARY LIVE「loadSTAR」>2018年7月30日(月)@東京・新宿ReNYセットリスト
02. きえるみたい
03. ハルシネーション
04. センチメンタリズム
05. ミルキー
06. G
07. 中華街へ行きましょう
08. シンクロ
09. カーテンの刺繍
10. 優しい悪魔
11. 愛と熱、溶解
12. 壊して
13. 旋回呪文
14. メリーゴーランド
15. 飛び込め
16. 心と体
17. S・O・S
18. 100life
19. コンセントカー
encore
20. 夜風
21. 光蜜
22. 変革の気、蜂蜜の夕陽
■8thシングル「勿忘にくちづけ」(読み:わすれなにくちづけ)
【初回限定盤 (CD+DVD)】GZCA-4152 ¥1,852(Tax out)
▼特典DVD
「勿忘にくちづけ」(from [Live of Lazward Piano ”bilberry tour”] 2018.3.24 東京グローブ座)
まわりくるめロケ
▼CD収録曲
1.勿忘にくちづけ
2.雨にうたえば
3.distracted(ボイスメモ)
4.勿忘にくちづけ -off vo.-
【通常盤 (CD ONLY)】GZCA-4153 ¥1,200(Tax out)
▼通常盤封入特典
スペシャル映像が見られるパスワード封入
▼CD収録曲
1.勿忘にくちづけ
2.雨にうたえば
3.distracted
4.勿忘にくちづけ -off vo.-
all songs written by 植田真梨恵
※初回限定盤のM-3には、作曲時に植田がiPhoneで録音していたデモ音源をそのまま収録
イベント出演情報
8月08日(水) なんばHatch
8月13日(月) なんばHatch
8月25日(土) アリオ倉敷
8月31日(金) 新木場STUDIO COAST
◆【インタビュー】植田真梨恵、1年ぶりシングルに新機軸「きれいなものを描きたい」へ
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