【詳細レポート】SUGIZO、ツアーファイナル「命尽きるまで全霊で音楽に」
ソロデビュー20周年記念アルバム『ONENESS M』をリリースしたSUGIZOが、ツアー<SUGIZO TOUR 2017 Unity for Universal Truth>のファイナル公演を12月6日にZepp Tokyoで開催した。先ごろ公開したオフィシャルレポートに続いて、新たな写真を交えた詳細レポートをお届けしたい。
◆SUGIZO 画像
アルバムに参加したRYUICHI(LUNA SEA)、清春、Toshl(X JAPAN)が千秋楽公演にゲスト出演することや、この日のライヴが二部制であることが事前に告知されていたこともあり、いつにも増して貴重な一夜になることをみんな予感していたに違いない。
開演予定時刻を30分ほど過ぎた頃、男性ファンの絶叫も飛び交う中、komaki、MaZDA、よしうらけんじのおなじみのメンバーとSUGIZOがステージに登場。オープニングナンバーは前アルバム『音』からのナンバー「IRA」だ。激しく打ち鳴らされるビート、怒りの電子音楽。リボンコントローラーを高く掲げ、振り回し、モジュラーシンセを操っていくSUGIZOは秘術使いのよう。VJ ZAKROCKによるスクリーンの刺激的な映像と共に世界に一瞬にして引き込まれていってしまう。
「みなさん、大変長らくお待たせしました。いよいよツアーファイナルです。第一部はノンストップでアゲアゲでサイケデリックで超SUGIZO系なライヴを。第二部では素晴らしいゲストのみなさんをお招きして今日だけのショーをお届けしたいと思います。一緒に昇天しましょう」──SUGIZO
SUGIZOが挨拶し、20年前の1stソロアルバム『TRUTH?』収録曲「THE CAGE」が披露された。鋭く小気味いいカッティング、速弾きを混じえた流麗なギターソロに息を呑み、SUGIZOのヴォーカルを含めてアップデートされたナンバーに歓声が上がった。イントロでハンドクラップが沸き起こったのはライヴの定番であり、中毒性のあるリズムに身体を揺らさずにはいられないギター・エレクトロ・ミュージック「MESSIAH」。鋭利でファンキーなカッティングを刻みながらステージ上手へとSUGIZOが動き、ループする心地良さにフロアは早くも昇天しかかっている。まるで“宇宙への招待状”のような空間だ。
サウンドスケープが美しく壮大な「NEO COSMOSCAPE」では、中盤でよしうらけんじがセンターでジャンベを叩いてプリミティヴな音楽の力を感じさせ、リボンコントローラーを用いてプレイするSUGIZOと感度の高いセッションが繰り広げられた。SUGIZOのギタープレイはこれまで以上にヴィヴィッドでエナジーがみなぎっている印象を受けた。
やがてスクリーンにたゆたう海の映像が映し出され、優雅に泳ぐイルカの群れの中、照明の光がまるで船の灯りのように点滅する「ARC MOON」へ。細やかに紡がれる音に身を委ねていると、いつしか全てが宇宙の営みの一部だという気持ちにさせられた。楽曲はもちろん、スクリーンの映像や光、すべてにSUGIZOからのメッセージが詰まっている。
ライヴに欠かせない曲のひとつ「FATIMA」ではその美しさと躍動するしなやかな肉体に目を奪われる光景が広がった。ヴァイオリンを奏でるSUGIZOの横で純白の布をまとい女神のごとく舞っていたダンサー、YUSURAが宙づりになり、人間業とは思えないアクロバティックなパフォーマンスを繰り広げたのだ。それはまさに彼女が世界を股にかけて廻った『シルクドソレイユ』の世界。逆さになり、白い羽根をはらはらと落とすYUSURAの演出にフロアから賞賛の拍手が巻き起こった。
そして第一部は後半戦に。再びフライングタイプのECLIPSE V-VIII に持ち替えたSUGIZOが投下したのは腐食した女神や子供達がスクリーンに映し出された「Lux Aeterna」。激しさ、切なさ、哀しさ、美しさが交錯するエクスペリメンタルミュージックだ。ステージに火が燃える演出の中、カオティックで狂気的で実験的なサウンドが打ち付けられたのは「ENOLA GAY RELOADED」。フラッグを振るSUGIZOの背後からフロアに照明を当てていたパフォーマーYURUSAは、再び宙へ昇っていき、くるくると回り、天使から悪魔へと姿を変えたかのような舞いに釘付けになった。
最後はスクリーンに“NO MORE NUKES PLAY THE GUITAR”の文字が映し出され、SUGIZOのノイズギターにしびれる「Decaying」へ。これもアルバム『音』の収録曲だが、シューゲーザー的アプローチで最もロックンロールやパンクに近い衝動を感じる。よしうらけんじがステージ下手で散らす火花もこの曲の高揚感を増幅させる。そして和の要素が不思議なバランスで溶け合うサイケデリック・ラウド・トランス「禊」ではSUGIZOとジャンベを叩くよしうらが向かい合い、その熱いコラボレーションに歓声が湧いて、一部のラストはSUGIZOがヴォーカルをとる「TELL ME WHY?」で締めくくられた。
しばしの休憩を挟み、アルバムのジャケットのアートワークが映し出された幕が開き、いよいよ第二部の開幕だ。SUGIZOが下手に立ち、拍手と大歓声の中、上手から姿を現したのは黒の衣装のシックな装いのRYUICHIだった。SUGIZOがアルペジオを奏で、歌われたのは最新アルバム『ONENESS M』のオープニングを飾るアンビエントでスケール感たっぷりのミディアムチューン「永遠」だ。緩急のつけ方が絶妙なヴォーカルはさすがとしか言いようがなく、伸びやかな声に絡むようにSUGIZOのギターソロが入ってくるタイミングも阿吽の呼吸。徐々に光が強くなっていくような歌を響かせた。
「SUGIちゃん、ツアーファイナルおめでとう」とRYUICHIが伝えるとSUGIZOが「忙しいのにありがとう。心から一緒にバンドやってて良かったと思う。ホントにこれだけで帰ってしまうんですよ」と告げ、フロアから残念そうな声が飛んだ。お互いを讃えあい、「おそらく最初で最後の「永遠」だと思います。心から愛するヴォーカリスト、RYUICHIでした」とハグして送り出し、「20年来の心の戦友であり、親友を紹介します」と次に登場したのは清春。
大声援の中、黒の衣装にボルドーカラーのハットをかぶった清春は裸足で登場。何もしゃべらない清春に「何か話さなくて大丈夫ですか?」と問いかけたSUGIZO。清春が「いや、優しくしていただければ」と答え、場内から笑いが起きた。
披露されたのはSUGIZOが清春に歌ってほしかったという2ndソロアルバム『C:LEAR』(2003年)収録曲の「VOICE」だ。今回のアルバムのためにアップグレードされたとは言え、SUGIZOの楽曲の中では“歌モノ”の切ないメロディを持つこの曲はまるで清春のために書かれたよう。鮮やかな緑の照明が注ぐ中、シャウト気味にサビを歌う清春の声の色気は格別で、SUGIZOの肩を抱いたり、センターで腰を低くして向かいあって絡んだりと見せ場も盛りだくさん。パフォーマーとしても動きが美しく、華のある2人の競演は非常に刺激的だった。RYUICHI、清春と濃厚なコラボが続き、最後に登場したのはX JAPANのToshlだった。
「みんな昇天できてますか? こんなに人に感謝したことはないというぐらい感謝して感動してます。そして、みんなにとても感動してます。心から敬愛する日本の国宝を紹介します。Toshlさん!」──SUGIZO
SUGIZOが先輩を呼び込み、スタッズが付いたゴールドの派手なジャケットを着たToshlがハイトーンで「元気だったか!?」と叫ぶと大歓声。「気合い入ってるか? Are You Ready? それじゃあ、SUGIZOとToshlの愛の結晶を聴いてくれ!」とSUGIZOが曲を書き、Toshlが歌詞を書きおろしたサイケデリックトランスなナンバー「PHOENIX~HINOTORI~」を投下。SUGIZOのハードでエッジーなギターとマイクスタンドを操りながら歌うToshlのヴォーカルは迫力たっぷりで熱量MAX。センターでSUGIZOとひとつのマイクで歌う場面も飛び出し、“HINOTORI!”とシャウト、オーディエンスも叫んでコール&レスポンスする曲に変えてしまったのは百戦錬磨のライヴ力だ。
アルバムには10人のシンガーが参加しているが、全員が出てきたら、どんなことになってしまうのかと思うぐらい、3人だけでも強烈だ。このコラボレーションにやや興奮気味のSUGIZOが長く言葉を届けた。
「ちょっとゆっくりお話しをさせてもらおうと思います。まずはこのツアー、直接みなさまにお会いしてサインを書かせてもらって、とても嬉しいです。ライヴが終わった後に直接顔を見れて声を聞けてエネルギーをもらえて、とても素晴らしいツアーを行ってきました。こうやってみんなと共にいると、ここが俺の帰ってくる場所なんだなってつくづく感じますし、みんながいるから俺は20年もこの世界で生き長らえることができました。本当にどうもありがとうございます。
20年間、ホントに波乱万丈、紆余曲折ありました。成功も挫折も栄光も絶望もすべてを経験した20年で“もうダメか!”という時もあって。人に裏切られたり、経済的にどん底だったり、仕事的に苦しかったり、人間関係がガタガタだったり。そういう時もなぜか音楽を作っている時は救われた。明日の生活も苦しい時に自分から生まれ出た音楽に救われたというか、音楽にひっぱられて何とかまだこの世に存在しています。まず心から音楽に感謝します。
そして自分が生み出す音楽の先にはみんながいて、みんなのエネルギーにひっぱられて今まで生きてきました。ここにいるみんなはSUGIZOのスタイルの音楽や表現を求めてくれたいわば同志、同じ種族だと思ってます。同じようにみんなも絶望や挫折やトラウマやスランプや、生きてると楽なことばかりじゃないけど音楽に救われてきたと思う。音楽に導かれて一緒にいるという意味でも同じ種族であり、生きてる限り、永遠の仲間だと思わせてください。
まだ、どん底にいて精神的に苦しんでいる。もしくは肉体的な問題やハンディがあって決して楽ではない毎日を生きている人は、今日、この音楽のエネルギーを吸収して少しでも上に。フェニックスのように上昇する糧になっていただけたら本望です。仮にいろいろ満たされていて、とてもポジティヴな光を放てる人はぜひ、そうではない力や救いを必要としている人に手を差し伸べてあげてもらいたいです。イジメを受けている子供たち、身体的障害を抱えている人たち、精神的疾患を抱えている人たち、トラウマに悩んでいる人たち、施設の子供たち、難民の人たち……エネルギーを必要としている人は世界中にたくさんいます。あらゆる力を必要としている人に俺たちのこの音楽のエネルギーを分け与えたいと思います。
今、苦しい人はまず自分を復活させてください。そうじゃない人は手を差し伸べてください。それが音楽の持っている力であり、政治家にはできないことです。それをまず、まわりにコミュニティに街に国にそして世界に広めてください。よろしくお願いします。こうやって生き長らえて、まだ命があって音が出せる。だとすれば命尽きるまで全霊で音楽に邁進していきたいと思います」──SUGIZO
拍手喝采の中、LUNA SEAの新しいアルバム『LUV』が完成したこと、X JAPANのアルバムのSUGIZOパートはレコーディングが完了していることを報告し、ライヴは終盤戦に。
恍惚のサイケデリックファンクナンバー「DO-FUNK DANCE」でピンク色の照明の中、解き放たれて一体になり、ラストは復活後のX JAPANをサポートしているピアニストMAIKO、この日のオープニングアクトを担当したモジュラーシンセ・アーティストHATAKENを迎え、ヴァイオリンとピアノとモジュラーシンセで奏でられた「The Voyage Home」。スクリーンには海や難民の子供たちの笑顔が映し出され、子供たちの遊ぶ声にかぶさっていく演奏はすべてを洗い清めていくかのようだった。
感謝の言葉を述べて、メンバーを呼び込み、深々と礼をして、ステージを後にしたSUGIZO。音楽で深く繋がったかけがえのない仲間たちと響き合った至福の時間。この日、またひとつ素晴らしいレジェンドが生まれた。
取材・文◎山本弘子
撮影◎田辺佳子
■<SUGIZO TOUR 2017 Unity for Universal Truth>2017年12月6日@Zepp Tokyoセットリスト
01.IRA
02.THE CAGE
03.MESSIAH
04.NEO COSMOSCAPE
05.ARC MOON
06.FATIMA
07.Lux Aeterna
08.ENOLA GAY RELOADED
09.Decaying
10.禊
11.TELL ME WHY?
【第二部】
12.永遠 feat.RYUICHI
13.VOICE feat.清春
14.PHOENIX ~HINOTORI~ feat.Toshl
15.DO-FUNK DANCE
16.The Voyage Home
■アルバム『ONENESS M』
1.永遠 feat.RYUICHI (※ヨミ:トワ)
2.Daniela feat.Yoohei Kawakami
3.絶彩 feat.京 (※ヨミ:ゼッサイ)
4.Rebellmusik feat.K Dub Shine(※ヨミ:リベルムジーク)
5.巡り逢えるなら feat.TERU
6.PHOENIX ~HINOTORI~ feat.Toshl
7.Garcia feat.TOSHI-LOW
8.感情漂流 feat.辻仁成
9.VOICE feat.清春
10.光の涯 feat.MORRIE
【初回限定盤】UICZ-9099 ¥10,800(税込)
2CD(SHM-CD)+Photo Book+三方背ケース
[CD1:フィーチャリング・ヴォーカル・アルバム]
[CD2:CD1のヴォーカルレス・インスト・アルバム](特典Ⅱ)
[Photo Book:撮り下ろし写真集+ライナーノーツで約100P]
特典I:Art Photobook B5サイズ(約100P)
・撮り下ろし写真集
・ライナーノーツ
・ロングインタビュー
・全曲解説
・参加アーティストコメント
・レコーディング使用全機材リスト
特典II:Bonus Disc
・『ONENESS M INSTRUMENTAL』
※マスタリング・エンジニア:スチュワート・ホークス(metropolis)
※プレイパス(R)対応
【通常盤】UICZ-4411 ¥3,240(税込)
[CD(SHM-CD):フィーチャリング・ヴォーカル・アルバム]
※マスタリング・エンジニア:スチュワート・ホークス(metropolis)
※プレイパス(R)対応
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