【インタビュー】植田真梨恵、新曲「REVOLVER」で「男の人が猛烈に恋する、私の願望のような歌」

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■すぐにラクになる道はないですよね
■あると思ってたんですけど、よくよく考えたらない(笑)

──歌詞の世界観もその頃に近いかもしれないですね。メジャー後のシングル曲は特に、ストーリーやメッセージ性が真ん中にある曲が多かったですが、今回の曲はポンポンと放たれる言葉でイメージさせる内容で。今回はミュージックビデオを初監督していますが、曲を作っている時にもう構想はしていたんですか。

植田:シングルリリースするなら、ミュージックビデオは作るだろうなとは思ったんです。でも、例えばどなたかと作っていくとしても、私が何らかの格好でリボルバーを持って出てくるという映像シチュエーションではないと思ったんです、絶対に。

──というイメージもあって、初監督を。

植田:いつもスタッフの方にアイディアを細かくお話するんですね。そのなかで、“リボルバーを持っているのは警官なんだけど、恋をして……心を撃ち抜かれてしまうストーリーがいいな”って。手作りで、ポップで、レトロで、シュールで、私にしかできないようなことをやりたいなと思ったんです。だから、インディーズ時代から一緒にやっているスタッフさんたちと、メジャーになって増えたスタッフさんたちとみんなで作ろうと。ひとつのスタジオでみんなが一生懸命、手で動かしている人形劇を撮ってもらえたら、それは私にしかできないミュージックビデオかなと思ったんです。

▲植田真梨恵 画像ページ【5】へ

──クラフト感溢れる世界観ながら、超大作っていう感じです(笑)。

植田:ひたすら地道で大変でした(笑)。うまく計画ができないので、作りながら“次どうしよう?”って考えていってたんですよ。切ったり貼ったりしながら、スタッフさんに“とりあえずこれ塗ってください”ってお願いしたり(笑)。そんな感じで作りながら考えていったので、手伝ってもらうことが難しくて、シチュエーションとか像とか、ひとりで事務所にこもって作ったんです。うん、楽しかったですよ、めっちゃ(笑)。

──見てるだけで楽しいものだから、作っているほうはより楽しいだろうなということが、映像から伝わります。

植田:教会の神様の像も、最初は発泡スチロールで作ろうとしたんですけど、なかなか切り出せなくて。“これは撮影に間に合わないぞ”と、石膏粘土で初めて造形しました。とにかく作るという工程が楽しくて。ちなみに、お人形の衣装は佐藤さん(マネージャー)のお母さんが手芸の先生で、縫ってくださいました。男性警官のお人形は、買った時は西城秀樹さんの「ヤングマン」の時のような、ちょっと時代錯誤なコスチュームだったんですよ(笑)。

──ははは。ミュージックビデオもCDジャケットもブルー系の色で統一されてますね。

植田:“ブルーグリーン”って呼んでるんですけど、今回はこの色がテーマなんです。ミュージックビデオに出てくる箱の背面色をそのままジャケットにも使っていて、その箱の背面自体はミュージックビデオには出てこないんですね。でもね、絵の具の調合バランスが凄く難しくて、一回全部やり直しましたから。青でもなく、緑でもない。最初は青が強すぎて、“これじゃ四角いドラえもんみたいになっちゃうよ”って(笑)。その色をジャケットで再現したんですけど、色校も何回もやり直しました。

──CDの初回盤は絵本仕様ということですが、今回は特にこだわっていろいろと作りましたね。

植田:きっとミュージックビデオだけでは伝わらない部分もあるかなと思ったんです。ミュージックビデオの途中ではハリケーンが出てきてそのハリケーンがアメリ(登場人物の女の子)をさらってしまう。このハリケーンは実は、神様がくしゃみをすることで発生したものなんです。教会でお祈りをする時に、みんなが稲を捧げているんですけど、神様は本当は稲アレルギーで……という設定(笑)。そういうのは、映像を見ただけでは伝わらないので、絵本を見ていただけると全貌がわかるように。

──なるほど、そうだったんですね。2ndアルバム以降ということで、ここからどうしていこうか、こんなものを表現していこうというのは?

植田:本当は他の道筋もあったんですけど、導かれるように「REVOLVER」をリリースしようという流れになって。ミュージックビデオについても、リボルバー(拳銃)とかお人形のチョイスとか、できることとできないことがあったと思うんです。権利の問題とかを含めてですよね。でも、それが意外とすんなりクリアできた。ならば今回はその流れに任せて一生懸命作ってみようと。単純に作品を濃く作って届けていく、ということ自体に全然変わりないです。

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──では、カップリングの「砂漠の果てに咲く花」ですが、こちらは最近作った新曲ですね。淡々とした曲調ながらも、転調を繰り返していく不思議で幻想的な感じを受けました。

植田:「REVOLVER」をシングルリリースすることが決まった後、そのカップリングとして書いた曲です。とにかく今の私が抱えている思いとか辛いことをストレートに綴ろうと、乾いたことを歌った曲。なるべくフレッシュなうちに思いを届けたくて作りました。

──突き進んでいくんだという思いも詰まっていますよね。

植田:そうですね。見え方次第というか、日々生きているなかで私もアップダウンがあって。見えているのは同じ景色なのに、それがポジティヴにもネガティヴにも働くときがあるんです。この曲は、どちらかというと自分がネガティヴになっている時の歌詞で。砂漠の真ん中まで歩いてきて、もう戻るのも進むのも面倒なところというか(笑)。

──そんな心境だったんですか。

植田:最近よく思うんですけど、すぐにラクになる道はないですよね。私、あると思ってたんですよ。すぐにラクになる道が。でも、よくよく考えたらない(笑)。

──それを制作に当てはめて言えば、きっと、どんなに曲を作っても心が満ち足りることなく、曲は書いていくのだろうし。

植田:そうですね。何にしてもやめたらラクになると思っていたんですよ。でも、多分、やめてもラクにならないだろうなって。例えば仕事とか、人間関係とか、生きるとかにしてもそうですけど、すべてにおいてやめたところでラクにならない。だから、歩いてたどり着いた先に、本当に花があるのか?それを咲かせられるのか?お前は、っていう曲です。

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──なるほど。歌唱法もギターの質感も含めて、「砂漠の果てに咲く花」はクールですよね。“サバク”という言葉から想像する“灼熱感”ではなく、さきほどおっしゃったとおり“乾いた”感じ。

植田:心は淡々としている、そういう感じが出たらいいなと思って。一歩踏み込んでひんやりしている部分と、ずっと太陽に照らされて暑くてじわっとしてる部分。それが同時に見えたらいいなって。

──楽曲構成はいわゆるAメロが1回しか出てこないですが。

植田:はい。これはもう戻って歌いたくなかったんですよ、Aメロに。“仕方ないか”って歌ったあとに、“歩いて歩いて”とは絶対にならない。そこからはダークな沼みたいな、蟻地獄みたいな砂の中に埋まっていくようなイメージをコーラスワークで作っているんです。「REVOLVER」もそうなんですけど、インディーズ時代は曲構成のなかでセクションがどう動くかっていうことにはこだわってなかったので。むしろ、私にどう歌ってほしいか、というところに重きを置いていたから、“戻らない”という部分に関しては、そういうイメージで書きましたね。

──「REVOLVER」もそうですが、楽曲構成も含めて歌詞とサウンドのコンセプチュアルな世界観が絶妙なマッチングです。

植田:うれしいです。こういう曲があっても楽しいですよね。絵を描くみたいにみんながイメージを膨らませてくれるというか。1本の短いアニメを観るくらいの気持ちで曲を聴いてくれるというか。で、ライブでやると意外と楽しい、カッコいいっていう。

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