【インタビュー】J、メディアを語る「面白い時代。すべてが人の感覚にかかってくる」

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■発信していく側は己を磨いていくしかない
■絶対楽しいと思うけどな、ポジティヴに考えたら

──それこそ食事にしても、健康的に生きていくために必要な栄養素を摂取できればそれで満足できる、というものではないはず。刺激物とか、本当は身体には良くないとわかっているものがどうしても欲しくなったり。そういった人それぞれの嗜好性を満たすものというのは、実は無駄な要素なのかもしれませんね。だけどもそれが、そのもの自体を特徴づけることになるというか。

J:だからそれぞれの処理能力、それぞれの個性みたいなものが本当に問われるようになるんじゃないかな。情報が何層にも分かれているなかで、ライヴが終わってすぐに上がる事実関係だけのニュースというのは、多分、“電車が3分遅れてます”みたいな情報と同じものなんだと思う。その情報って役に立つし、それを必要とする人もいるわけです。ただ、俺たちが泳いでる層というのはおそらくもっと深いところだろうと思うんです。音を探求したり、それを基に何かを企んでいたりする自分たちのいる場所というのはね。

──だからこそ情報を発信していく側にも、その層のあり方というものを意識していく必要があるわけですよね。最初に出すべきもの、少し時間をおいてから伝えるべきもの、さらに後になって誰かの主観による分析や解釈を経たもの、というふうに。

J:そこでのさじ加減というのは、その作者たち、メディアの人たちに委ねられているわけです。

──責任重大ですよね。フィルターの精度と質を問われることになってくる。フィルター云々という部分については、音楽を作る人たちも似ていますよね。さまざまな刺激を吸収して、自分のフィルターを通過させながらそれを昇華させていこうとするわけで。

J:だからそのフィルターの風通しの良さが大事になってくるわけですよね。それはすごく感じます。ミュージシャンの場合も、やっぱりこれだけ時代が進んでくると、いろんな情報を簡単に手に取れるようになってるわけですよ。あのエフェクターはいいとか悪いとか、そういう情報もね。実際に試さなくても情報だけは手に入ってしまう。でも、自分のサウンドを作り上げていくのに何が必要かっていうのは、やっぱりそのプレイヤーの感覚で判断するしかないことだから。それが最新のものだろうが古いものだろうが、自分の音を表現するために何が必要かっていうものを各々が見つけなきゃいけない。俺のまわりにいるとんでもないミュージシャンたちは、やっぱりみんなそういう選択をしてるし。

──そうして必要なものの取捨選択を日々繰り返している。それもまた、編集ですよね。たとえばLUNA SEAの場合は5人ぶんの物語もあるわけで単純には例にしにくいところもあると思うんですけど、Jさんのソロ活動については、やりたいことがそれこそ1枚目で全部見えていたともいえる。それを貫いていくうえでの取捨選択を続けてきた20年だった、ということでもあるわけですよね?

J:そうですね。そう思います、俺は。

──だからこの店には開店当初からの秘伝のタレもいまだにある。この20年の間には引っ越したり改装したり新しい試みをしたりもしてきた。で、味は変わっていないように思えるんだけども、実は少しずつ変化を重ねてきたからこそ変わらずに済んでいる部分もあるというか。

J:そうやって続けてきて、いまだに熱いものに飢えてるやつらと向き合えてるというか。昔の俺みたいなやつらが今もまだまだたくさんいると思うし、自分たちが鳴らすサウンドによって新しい世界が広がっていくような感覚を味わってるやつ、同じ気持ちを共有できているやつが大勢いると思う。そういうやつらに向かって音を放てるというのは、すごく幸せなことでもあるしね。もっと簡潔な言い方をすれば、多分、そういうやつらの集まりが“ロック”なんですよね。何かやっぱり思うところがあるからこそ、手にした音楽であるはずだと思うから。それを膨れ上がらせて、より自分たちが理想とする時間を生きていけるような、ひとつの切っ掛けになり得るもの。そういうものを放ち続けていきたいから、俺は。

──そして、そうした“切っ掛けになる”という役割をメディアの側も担っていかなければならない。しかも、新しいシステムにだけ対応していけばいいというわけでもない。

J:だから2WAY持っていたほうが、絶対いいはずで。

──変な話、CDが売れにくくなっているといわれる昨今、アナログ盤がよく売れていたりもするわけで、それにもちょっと似ていますよね、現象として。

J:アナログ盤どころか、今の流行りはカセット・テープですしね(笑)。

──音楽雑誌というのは今や、カセット・テープぐらい古めかしいフォーマットなのかもしれません。だけどもそれならではの良さを見つけ、それを求める人も出てくるわけですよね。たとえば音楽サイトはともかく、最初に届けるべき記事を伝えるのがWEBだとすれば、少し時間をおいて精査したうえで背景まで伝えるのが雑誌。しかしそのアーティストが10年後に刊行した自伝本には“実はこうだった”という本当の事実が書かれていたりもする。もちろんそれが、書き手自身が都合良く修正した事実である場合もあるでしょうけど(笑)、事実というものにもそうやって何層もあるわけですもんね。

J:だからもう、発信していく側としては己を磨いていくしかないし。でも、絶対楽しいと思うけどな、ポジティヴに考えたら。とんでもないやつらがまだいっぱい世界中にいるはずだし。“俺、増田さんがまだ目を付けてないすげえバンドを発見しちゃったんですけど”みたいなことが日常的に起こり得るわけだから。

──悔しいですね、それは(笑)。僕もそれに負けないように頑張ります。機能性だけじゃなく、無駄さも大事にしながら。

J:ははは! でもこんなに何回も“無駄”って言葉の出てくるインタビューもめずらしいですよね(笑)。

取材・文◎増田勇一



■<J 20th Anniversary Live 2017 W.U.M.F -Special 3 Nights->

2017年8月11日(金・祝) 赤坂BLITZ
OPEN 18:00 / START 19:00
(問)SOGO TOKYO 03-3405-9999
2017年8月12日(土) 赤坂BLITZ [FC限定公演]
OPEN 17:00 / START 18:00
(問)F.C.Pyro. 03-5759-1488(平日14:00~18:00)
2017年8月13日(日) 赤坂BLITZ
OPEN 17:00 / START 18:00
(問)SOGO TOKYO 03-3405-9999
▼チケット
前売¥5,300(税込/ドリンク代別)
一般発売日:2017年6月24日(土)~
※8月12日はファンクラブ限定公演のため一般発売はありません

■『J 20th Anniversary BEST ALBUM <1997-2017> W.U.M.F.』

2017年3月22日(水)発売
【2CD】TCD-20062~3 3,800円+消費税
【2CD+DVD (MUSIC VIDEO)】CTCD-20058~9/B 6,000円+消費税
【2CD+Blu-ray (MUSIC VIDEO)】CTCD-20060~1/B 6,000円+消費税
【スペシャルBOXセット(2CD+DVD+BAND SCORE+PHOTO BOOK)※初回生産限定盤】CTZD-20054~5/B 12,000円+消費税
【スペシャルBOXセット(2CD+Blu-ray+BAND SCORE+PHOTO BOOK)※初回生産限定盤】CTZD-20056~7/B 12,000円+消費税
【F.C.Pyro.×mu-moスペシャルBOXセット(2CD+DVD+BAND SCORE+PHOTO BOOK)※初回生産限定盤】CTC1-20064~5/ B 12,000円+消費税
【F.C.Pyro.×mu-moスペシャルBOXセット(2CD+Blu-ray+BAND SCORE+PHOTO BOOK)※初回生産限定盤】CTC1-20066~7/ B 12,000円+消費税
※“F.C.Pyro.×mu-moスペシャルBOXセット”は、スペシャルBOXセットにシリアルナンバープレートが装着されたFC会員限定仕様
<DISC-1>
01. BURN OUT (2011 Mix Version)
02. PYROMANIA (2011 Mix Version)
03. Die for you (2011 Mix Version)
04. Feel Your Blaze (2011 Mix Version)
05. Sixteen (2017 New Vocal Version)
06. GO with the Devil (2017 New Vocal Version)
07. break
08. Evoke the world (2017 New Vocal Version)
09. Go Charge
10. RECKLESS
11. addiction
12. Vida Rosa
13. here we go
14. If you can see me
15. NEVER END
16. one reason ※新曲
<DISC-2>
01. ACROSS THE NIGHT (2017 Re-Recording Version)
02. Heaven (2017 New Vocal Version)
03. Graceful days (2017 New Vocal Version)
04. Tomorrow (2017 New Vocal Version)
05. NOWHERE (2011 Mix Version)
06. When You Sleep
07. Blank
08. Mirage #9
09. walk along -Infinite mix-
10. ray of light
11. white
12. baby baby
13. Endless sky
14. Everything
15. I know
<DVD / Blu-ray>
※新曲+全MUSIC VIDEO作品収録
01. BURN OUT
02. BUT YOU SAID I'M USELESS
03. alone
04. go crazy
05. Feel Your Blaze
06. Go with the Devil
07. NOWHERE
08. GET READY
09. break
10. Fly Away
11. TWISTER
12. walk along -Infinite mix-
13. RECKLESS
14. SALVAGE
15. I DON'T KNOW
16. Vida Rosa
17. BURN OUT -2011 ver.-
18. here we go
19. NEVER END
20. I know
21. one reason ※新曲
<BAND SCORE>
※リクエスト投票で各カテゴリー1位となった12曲と新曲「one reason」の計13曲収録
01. ACROSS THE NIGHT (2017 Re-Recording Version)
02. Die for you
03. Graceful days
04. Go with the Devil
05. NOWHERE
06. Evoke the world
07. Mirage #9
08. addiction
09. Vida Rosa
10. Endless sky
11. NEVER END
12. I know
13. one reason ※新曲
<PHOTO BOOK>
※最新撮り下ろし写真に加え、デビューから20年の歴史を彩ったアーティスト写真やライブ写真を未公開ショットも交えてパッケージしたフルカラー写真集


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