【インタビュー】J、20周年記念ベスト盤を語る「走り続けてきた理由」
■歌い直したのは過去を消す作業じゃない
■思い描いた完成形にさらに近づけるため
──ベーシストであり、ソングライターであるLUNA SEA時代のJが歌に向かい合ってきたヒストリーが詰まった1枚だとも思ったんです。アッパーな曲もスローな曲も、必ず歌はメロディックで音の真ん中に存在している。
J:そうですね。ソロ活動を始めて20年経って思うのはベースを弾くことと同じように歌うことがすぐそばにある。始めたばかりの頃は歌う経験もなかったし、今みたいにうまくできなかったかもしれないけれど、俺自身がイメージしたメロディや言葉を、俺自身が形にすることがいちばん理想の形に近くなるだろうと思っていたから。歌うことに関しては未だに想いが先に来ますけどね。スキルやテクニックにはあまり興味がなくて、昂ぶる気持ちのまま歌えてるかなとか(笑)。
──近年の歌の説得力、迫力、包容力には驚きますけどね。今回のベストアルバムでも「Go with the Devil」(2017 New Vocal Version)のキレと凄みがある歌とか「Heaven」(2017 New Vocal Version)の色気のある歌とか。
J:今回、歌い直したのは過去を消す作業じゃなくて、もともと描いていた絵にさらに描き足して「俺がやりたかったことってこうなんだ」って完成させていく感じだったんですよ。
──そもそも描きたかったことを今なら形にできるというか。
J:そう。それはすごく長い月日のなかで見えてきたことかもしれないし、当時ではできなかったことかもしれない。曲によって違うんですけど、思い描いた完成形にさらに近づけるために歌い直しましたね。
──今なら近づけると思う曲を?
J:そう。でも、全部歌を新しくしたわけじゃないんですよ。なかには昔のヴァージョンのままの声も入っている歌もあって。
──つまり、当時のヴォーカルテイクと、2017年に歌い直したテイクを1曲のなかに混在させているものもある?
J:混ざってるんです。
──それは昔の歌も残したかったから?
J:そう。その時にしかできなかったことだったり、高鳴る想いをわざわざ消す必要はないと思ったので。そこが「過去を消すやり方じゃない」というところですね。さらに絵を濃くしていくのか、もっと大きいものにしていくのか、すごく大変な作業だったけど、楽しかったですよ。声ってその日の精神状態や体調とかいろんなものを全部含んで発散するものだから、1日として同じ歌はないんです。だからこそ、その時にしかできなかったこと、今しかできないことをミックスさせて20年というものを繋げたかった。
──こだわりにこだわってますねぇ。らしいですけど。
J:ははは。実はいちリスナーとしてReレコーディングとかReテイクとか好きじゃない人なんですよ。
──あの時のあのままがいいと思うタイプなんですね。
J:だからこそ、「ACROSS THE NIGHT」とかも今のバンドのメンバーで録り直して、もちろんすごいものが録れると思ったからトライしたわけだけど、やってみて昔のテイクのほうが良かったら「やーめた!」って言えばいいか、みたいな(笑)。
──「ACROSS THE NIGHT」を最初に録ってからそれこそ20年の月日が流れているけれど、新しいテイクもヒリヒリしたところは変わっていない。そこは大事にしているところなんだろうなって。
J:ですね。過去のヴァージョンも俺は大好きだし、今回、Reレコーディングしたヴァージョンも存在するということは2つのテイクが楽しめるわけだから、そう考えたら「いいなぁ」って。
▲『J 20th Anniversary BEST ALBUM <1997-2017> W.U.M.F.』【2CD】 |
J:1stアルバムを作った時かな。「これが俺なんだ」という絶対的な名刺を作ろうと思っていたよね。「このアルバムの曲/サウンドはオマエ自身がずーっと鳴らせる音なのか」って自分に問いただしていた日々だったから。デモも何十曲も作って、この1枚で終わってもいいと思ってた。そうじゃないならソロなんかやる必要ないと思うタイプの人間だったから。「人気が出たバンドのメンバーのソロです」じゃなくてね。そういう意味では1stがターニングポイントかもしれない。
──イチからやる気持ちで臨んだソロだからですか?
J:そうそう。歌のうまい人を連れてきて、みたいなものにはしたくなかったし、俺自身が全てを引き受けるっていう想いで向かっていたから。
──なるほど。ソロ始動がJにとって大きいものだったことは『PYROMANIA』というアルバムを大切にしていることからもわかるんですが、続けていくうちでの変化みたいなものは?
J:LUNA SEAが終幕した直後かな。あの頃は反動も含めてLUNA SEAから遠のこう遠のこうと思っていた自分がいたかもしれないですね。
──自分の内側に入り込んで制作した2ndアルバム『BLOOD MUZIK』とか?
J:うん、そのあたりですね。でも、いろんな時期の全てが今という場所につながってきたわけだから、1つとして辛かったこと、ネガティブだったことはないですよ。20年思い返したら、そりゃあ、いろいろあるけどさ(笑)。
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