【インタビュー】SUGIZO、LUNA SEAとソロを語る「最も重要な要素は“音”そのもの」
■形だけキレイなものは簡単に作れるけど
■それは僕のやり方じゃない
──一方で、SUGIZOはまたどえらいソロアルバムを生み出しましたよね。アルバム『音』は自身の「怒り」とも「排泄物」とも言っていましたが、それはどういうことですか?
SUGIZO:もう何年も社会に対して、周りに対して、シーンに対しての不満やイラつきや憤りがずっと溜まっていて、それを覆い隠してキレイな作品を作ることが難しくなってきたんです。いろんな活動はしてるけれども、ムカつくことはムカつくし、頭にくることは頭にくるし、それを出していかないと自分が壊れてしまう。でもそれをLUNA SEAやX JAPANでやみくもに表現するのもどうかと。
──表現するべきキャンバスが違う気がしますね。
SUGIZO:そうそう。原発のこと、テロのこと、難民のこと……言いたいことはたくさんあるけど、それをLUNA SEAをキャンバスにしてやるべきかどうかは、すごく微妙なこと。例え僕がそう思っていても、他の人間はそう感じてないことも多々ある。自分の精神性や主義主張を、すべてバンドに投影させるものでもないので、自ずと自分のソロワークがパーソナルな表現のはけ口になってしまう。今回それをやらずにいられなかったのは、来年は「美しいもの」を作りたかったから。来年のソロ20周年ではやりたいことがあるし企画も進んでいますけど、それを気持ちよくやるためにも、自分の毒を1回出さないとダメだ、と。
──「美しいもの」の構想は、すでに頭の中にあるんですね?
SUGIZO:もうある。アルバムの半分ぐらい曲もできている。なので……それをやる前に、一度自分の中で汚いものをすべて清算しないと嘘になってくるんです。形だけキレイなものは簡単に作れますけど、でもそれは僕のやり方じゃない。
──そんなアルバム『音』は、どんな作品になりそうだと思っていたんですか?
SUGIZO:すごく醜悪なものになると思ってました。これは耳もあてられないぞ、みたいな(笑)。
──売ることも考えてないってこと?
SUGIZO:あまり考えてない。作っている最中は「誰もわかんなくていい」と思ってましたし。逆に「わかってたまるか、これが」というか、簡単にわからせたくないというか、「俺の心情なんかわかんないでしょ、どうせ」っていう感じ。でも不思議なもので、できあがってしまったらすごく気に入って、これはひとりでも多くの人に聴いてもらいたいっていう気持ちにシフトしました。
──SUGIZOの目から見て、「同じような思いから生まれたのではないか」と思しき作品って世の中にありますか?
SUGIZO:ありますね。例えば多くの現代音楽作家の作品とか。今回意識的に近かったのが(アインシュテュルツェンデ・)ノイバウテンや、音楽性は全然違うけどナイン・インチ・ネイルズやソニック・ユース、昔だったらヴェルヴェット・アンダーグラウンド……。
──同じようなパワーを感じる?
SUGIZO:音楽性は全然違うけど、インディー時代のニルヴァーナとかマイ・ブラッディ・ヴァレンタインとかもね。今は、市場に出ている音楽や表現やアートが、すべてエンターテイメント化しすぎてしまって、何も考えなくても瞬時にわかるものじゃないと受け入れられなくなっている。わかりやすいもの/簡単なもの/すぐに覚えられるもの/すぐに歌えるもの/すぐに踊れるもの。そこに思考を必要とさせない。ちょっとでも思考というクッションを置こうものなら、これはもうわかりにくい/マニアックだ/面倒クサイで跳ねのけられる。もはやチャート上では、バカがわかるものしか求められない。
──んー。
SUGIZO:ジョン・ケージは亡くなったけど、スティーヴ・ライヒは今も生きています。現代音楽もそう、プログレッシブ・ロックもそう、変拍子の音楽もそう。実験的なアートとか実験的なフィルムとか、現代アート/現代コンテンポラリーダンス、あらゆる表現……精神性を表現する為に存在しているアートの多くは、一般の人には難解に感じ一発では理解できない。映画もそうね。わかりやすいドンパチのハリウッド映画ばかりが求められる世界で、ちょっとでも理解する為には頭を使い、学ばなきゃいけない。そういうものがこれ以上淘汰されるべきじゃないと思いません?
──ええ。
SUGIZO:世の中簡単すぎて、結果バカしか育たない。もちろん屈託のないエンターテイメントも人が楽しむには必要なものだけど、現代音楽がアートとして評価されるのではなく、チャート上で評価されて、販売枚数が少ないという理由で淘汰され、アーティストが食っていけずに世の中から必要とされてないとジャッジされる。アーティストにとって生産性と経済性のバランスが破綻してしまった今のエンターテイメントの世界が許せない。音楽シーンのみならず、カルチャーに関して世の中に危機感を感じていますよ。
──それは重い……。
SUGIZO:だから僕は「バカは聴かなくていい」もしくは「聴いて勉強してくれ」というものを作りたい。もちろん僕は、その人たちの100倍勉強しなきゃいけないけれど、幸いに30年間音楽の学びを続けているので、自分の感性も知性も肉体もフル動員して本気で臨めば、20歳下の人が学べるものは作れるはずだと思う。だから「考えなきゃわからないもの」「理解しなきゃ踊れないもの」を作りたいんです。
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