【インタビュー】SUGIZO、LUNA SEAとソロを語る「最も重要な要素は“音”そのもの」

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■何十年も一緒にやってこれていることが
■どれだけ奇跡なことなのか

──えー? クラシック畑という意味ですか?

SUGIZO:クラシックを学んできたし、ヴァイオリンやトランペットや鍵盤も演りましたけど、要は自分の中にありとあらゆるアイディアがあって、完結できてしまうからです。どちらかというと「人と共存して共同作業することで、アイディアが具現化する」というタイプじゃないんです。むしろ本当は触られるのがイヤだったり、共同作業がイヤだったりするタイプですよ。たぶんね、もともとは、みんなでアイディアや才能を出し合ってひとつのものを作るというタイプじゃなかったんですね。

──そう言われれば、分かるような気がします。

SUGIZO:そういう僕だから自己主張も強いし、自分のアイディアもはっきりあるけど、バンドだとそれを他のメンバーが薄めてくるわけ。

──LUNA SEAは個性の強い5人ですから、5分の1ずつになりますね。

SUGIZO:そう。もう薄まっちゃってるだけ。最小公倍数のようにかけ合わさるとバンドのレンジは広がるけれど、僕のアイディアも、おそらく他のメンバー発信のアイディアも、最大公約数のように合うところでしか交われなくなってしまった。終幕直前のLUNA SEAっていうのは「つまんないバンドだな」と思うんです。

──そんな……。

SUGIZO:お互いの可能性を小さくし合ってるんですよね。

──そんな……気がした?

SUGIZO:した。今思うと、当時の作品は素晴らしいし、音楽として楽曲としてすごくいいものを作ってきていた。それは、僕らが今も最前線でやっている理由のひとつだとも思う。ただ、あの頃は、各メンバーの可能性/ポテンシャル……あらゆる意味で、お互いを打ち消し合っていたように思う。縛り合っていたり、お互いの可能性を潰しちゃっていたりとか。「俺にはこの面がないけど、ヤツにはある。だからあいつの面をより引き出そうよ」ってみんなが思っていれば、バンドというのはすごく巨大になっていくんだけど、「俺の持っていないところをあいつは持っている。あの要素は邪魔だ、いらねえ」となってくると、お互いを否定し合うことになる。終幕前のLUNA SEAはそういう状態だったと俺の記憶には残っていてね……それ以降は「二度とこんなことはやりたくない」「こんなバンドはやりたくない」と思っていました。

──才能がぶつかりあうと、そういう事態になることもあるかもしれない。

SUGIZO:お互いの可能性を殺し合ってる感じ……そういう心情でした。

──でもまた再始動を果たすわけで、もともとはリスペクトするメンバー達だからこそ、一緒にやりたいと思う気持ちも嘘じゃないでしょう?

SUGIZO:成功したいとか目標に達したいとか、目的があってはじめてバンドは転がっていくわけで、そういう大きな共通目的の前では、多少の人間性の違いとか趣味嗜好の違いなんて問題じゃない。ただ、LUNA SEAも例に及ばず、目標が達成され成功を手に入れ目的意識が薄くなっていくと、お互いの違いがうざったく感じたり、思うように進まないことや自分のアイディアがそのまま通らないことにだんだんストレスを感じ始めるわけ。まあバンドはみんなそうなんですよね。で、共同作業がうざったくなる。

──なるほど。

SUGIZO:だいたい「音楽性が合わなくなった」って言うんだけど、実は違うんです。音楽性なんて、もともと人間が違えば合わないんだから。そうじゃなくてね、そういう細かいことに合わせられなくなってくるんですよね。ワガママにもなるし自信もつくし。

──それが終幕の頃か。

SUGIZO:でもね、それを越えると、今度はそういう細かい問題もどうでもよくなって、「ただこいつらと一緒に音を出せることだけがどんなに尊いか」「何十年も一緒にやってこれていることが、どれだけ奇跡なことなのか」がやっとわかってくるんです。僕らも20年、25年やってきてわかったことで、結成10年ではわからなかった。20年になってくると、お互いに対するイラつきやストレスなんて、家族の中の小競り合いや、ちょっとしたボタンの掛け違いでしかない。同じバンドで同じメンバーで、多くの作品をこれからも生めることがどれだけ奇跡的なことなのか、それを痛感せざるを得ないですよ。今は、本当にバンド活動=感謝でしかないです。

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