【インタビューVol.1/5】ウリ・ジョン・ロートと“聖地”中野サンプラザ

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ハード・ロック・ギターの現人神、ウリ・ジョン・ロートが映像作品/CD『トーキョー・テープス・リヴィジテッド~ウリ・ジョン・ロート・ライヴ・アット・中野サンプラザ』を8月31日に発表する。

◆ウリ・ジョン・ロート画像

2015年2月20日、東京・中野サンプラザでの映像/音源を軸にした本ライヴ作品は、ウリのスコーピオンズ時代の名曲の数々を披露。しかも名盤『蠍団爆発!!スコーピオンズ・ライヴ/Tokyo Tapes』(1978)が収録されたのと同じ“聖地”中野サンプラザでのライヴということで、日本のファンにとって重要な意味を持つ作品となっている。

この作品にはウリも並々ならぬ情熱を注ぎ込んでおり、日本を訪れて映像を監修・編集。細部までのこだわりを見せている。

都内で行われた直撃インタビューも大作主義のウリらしく、全5回構成となった。第1回では『トーキョー・テープス・リヴィジテッド』と1978年のスコーピオンズ来日公演について語ってもらおう。

──2015年2月に行われた『スコーピオンズ・リヴィジテッド』ジャパン・ツアーについて、どんなことを憶えていますか?

ウリ・ジョン・ロート:とにかく楽しかった。東京・大阪・名古屋とそれぞれの公演のムードが異なっていたけど、お客さんとの関係は素晴らしいものだった。その前、2008年の日本公演では、機材のトラブルがあったりして、すべてのショーでハッピーというわけにはいかなかった。でも2015年のツアーはどの公演も良い出来だった。プレイ自体は大阪がベストかな?でも中野サンプラザ公演も強力だった。『蠍団爆発!!スコーピオンズ・ライヴ/Tokyo Tapes』(1978)で思い出深い会場だからね。自分にとって特別な会場だし、お客さんの反応も良かった。とても満足しているよ。

──中野サンプラザを世界的に有名なコンサート会場にしたのはスコーピオンズですよね。

ウリ・ジョン・ロート:うーん、どうだろうな。スコーピオンズによって有名になったかはともかく、私たちは西洋のロック・バンドで中野サンプラザでライヴ・アルバムを録った最初のバンドのひとつであることは確かだと思う。大きすぎず小さすぎず、音響も素晴らしい。最近インターネットで検索したら近い将来、解体するんだってね?伝統のあるライヴ会場が残されないのは残念だよ。ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールには100年以上の歴史があるし、多くの音楽家たちが演奏してきた。中野サンプラザも同じで、文化財として残されるべきだと思う。

──今回、中野サンプラザのバックステージは当時と同じものでしたか?

ウリ・ジョン・ロート:基本的には変わらなかったよ。ただ、1978年に瞑想用に使った小さな部屋が見つからなかった。あれはどこに行ったのかな…一人でロウソクを灯して、集中したんだ。1978年の来日では、会場そのものから強力な霊気を感じた。だから良い演奏するために、瞑想は有効だったよ。

──2015年と1978年、どちらの日本公演も「オール・ナイト・ロング」からショーを始めましたが、どんなこだわりがありますか?

ウリ・ジョン・ロート:「オール・ナイト・ロング」はライヴのオープニングには最適の曲だ。ひとつしかリフがない、ストレートきわまりない曲だけど、ライヴのオープニングには最適だよ。ライヴのムードに一瞬で没頭していくんだ。これは認めるけど、「オール・ナイト・ロング」は 私のスコーピオンズ時代のフェイヴァリット・ナンバーというわけではない。決してメインコースではないけど、前菜としては素晴らしく美味だ。誰かと会話をするには、まず挨拶から始まるだろ?「オール・ナイト・ロング」は理想的な挨拶だな。

──『蠍団爆発!!スコーピオンズ・ライヴ/Tokyo Tapes』はハード・ロック史上に残るライヴ・アルバム名盤のひとつと呼ばれていますが、そんな名演の直後に脱退したのは何故ですか?

ウリ・ジョン・ロート:最大の理由は、スコーピオンズの向かう道と、私の道が分岐していったからだ。ルドルフ・シェンカーとクラウス・マイネが偉大なソングライターであることは間違いないけど、私にとって興味を持てる曲ではなかったし、私の書く曲もスコーピオンズにとって“奇妙”過ぎるものになっていった。今でも憶えているよ。1978年、中野サンプラザのステージ上で、サウンドチェックをしているときに「アースクエイク」のオープニングのフレーズを弾いてみたんだ。これは明らかに“スコーピオンズの曲”ではないと確信していた。違う世界の音楽だったんだ。だから一番良い選択は、私がバンドを去ることだった。もし、あのまま残っていたら、お互いに欲求不満が募って、友人でいられなくなったかも知れない。でも私が脱退したおかげで、今でも彼らとは友人関係を保っていられるんだ。

──1978年と2015年のセットリストはかなり似通ったものでしたが、演奏するときのメンタリティはどのように異なりましたか?

ウリ・ジョン・ロート:当時と今では、私のメンタリティはまったく異なっている。それは良いことだと思う。人生、いつも同じ場所に留まっているのは良いことだと思わない。過去から自分自身を解き放ち、頭とハートが旅立つ必要があるんだ。成長し、拡大し、実験をして、視野を拡げていくべきなんだよ。それはリスナーについても言えることで、1978年当時のスコーピオンズ・ファンは、人生の次のステップに旅立ってしまったのかも知れない。中野サンプラザのステージ上で、「1978年の日本公演を見た人はいる?」と訊いたら、あまり手が上がらなかったことに驚いたよ。もっといるかと思っていたんだ。もちろん、若い世代のファンが来てくれたのは嬉しいけどね。次回日本でプレイするときは昔からのファンと新しいファン、両方に会場に来て欲しい。『蠍団爆発!!スコーピオンズ・ライヴ/Tokyo Tapes』の曲目は、1977年から1978年にかけてのスタンダードなセットリストだった。あの時期は「ハウンド・ドッグ」や「のっぽのサリー」などのロックンロール・スタンダードをプレイしていたんだ。2015年の私は、それよりもジミ・ヘンドリックスの曲をプレイしたい気分だった。それで「見張塔からずっと」「リトル・ウィング」をやっているんだ。

──『蠍団爆発!!スコーピオンズ・ライヴ/Tokyo Tapes』から長い年月が経つにも関わらず、あなたが書いた音楽は世界中の人々に感動を与え続けています。それは何故だと考えますか?

ウリ・ジョン・ロート:その質問に答えるのは難しい。私自身も、自分に対して同じ質問をすることがあるんだ。でも、その答えはわからないとしか言いようがない。ただ考えられるのは、ある種の音楽には、他の音楽よりも長い寿命があるということだ。単なるエンタテインメントの音楽は1年で寿命が尽きてしまうけど、ある種の音楽は10年生き続けるし、20年、100年、それ以上生きる音楽だってある。今、我々が聴いているクラシック音楽には、数百年も前に書かれたものでも、今でも変わらぬ感動を与えてくれるものがある。スコーピオンズの曲も、他のバンドより少しばかり寿命が長いのかも知れない。『スコーピオンズ・リヴィジテッド』を発表してから当時の曲を私が再びライヴでプレイするようになって、あまりのポジティヴな反響に、私自身驚いたほどだ。日本だけではない。世界のあちこちで、当時の曲が熱狂的に受け入れられているんだ。日本やアメリカ、ヨーロッパ、どこで演奏するときも、これらの曲に対する反応は毎晩、素晴らしい。これほど好意的に迎えられるとは予想すらしていなかった。昔書いた曲をプレイするのを楽しんでいるところだよ。

取材・文 山崎智之
Photo by Emily Muraki


ウリ・ジョン・ロート『トーキョー・テープス・リヴィジテッド~ウリ・ジョン・ロート・ライヴ・アット・中野サンプラザ』

2016年8月31日 発売
【500セット通販限定スーパー・プレミアムBlu-ray or DVDボックス】¥18,000+税
【初回限定盤Blu-ray+2CD】¥7,800+税
【初回限定盤DVD+2CD】¥6,800+税
【通常盤Blu-ray】¥6,000+税
【通常盤DVD】¥5,000+税
2015年2月20日 中野サンプラザ
1.オール・ナイト・ロング
2.炎を求めて
3.クライング・デイズ
4.カロンの渡し守
5.サン・イン・マイ・ハンド
6.ヴァージン・キラー
7.荒城の月
8.空を燃やせ
9.イン・トランス
10.レインボー・ドリーム・プレリュード
11.フライ・トゥ・ザ・レインボウ
12.トップ・オブ・ザ・ビル
13.自由への叫び
14.暗黒の極限
15.ダーク・レディ
16.幻の肖像
17.キャッチ・ユア・トレイン
18.見張塔からずっと
19.リトル・ウィング
2015年2月19日 名古屋ボトムライン
1.オール・ナイト・ロング
2.炎を求めて
3.クライング・デイズ
4.カロンの渡し守
5.サン・イン・マイ・ハンド
6.ヴァージン・キラー
7.荒城の月
8.空を燃やせ
9.イン・トランス
10.レインボー・ドリーム・プレリュード
11.フライ・トゥ・ザ・レインボウ
12.トップ・オブ・ザ・ビル
13.自由への叫び
14.暗黒の極限
15.ダーク・レディ
16.幻の肖像
17.キャッチ・ユア・トレイン
18.見張塔からずっと
19.リトル・ウィング
2015年2月22日 梅田クラブクアトロ
1.オール・ナイト・ロング
2.炎を求めて
3.クライング・デイズ
4.カロンの渡し守
5.サン・イン・マイ・ハンド
6.ヴァージン・キラー
7.空を燃やせ
8.イン・トランス
9.レインボー・ドリーム・プレリュード
10.フライ・トゥ・ザ・レインボウ
11.トップ・オブ・ザ・ビル
12.イエロー・レイヴン
13.自由への叫び
14.暗黒の極限
15.ダーク・レディ
16.荒城の月
17.幻の肖像
18.キャッチ・ユア・トレイン
19.ヘルキャット
20.見張塔からずっと
21.もしも もしも
22.リトル・ウィング

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