タワレコはなぜCDを売らずゴミ袋を配るのか?【検証】フジロックが20年愛され続ける理由 ~TOWER RECORDS編~

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■フェスを皆で大切にする気持ちは
■社会を大切にする気持ちと似ているかもしれない

──広くて全部まわれないのは、一回じゃ攻略できないテーマパークと同じですね。いろんな発見があるタワレコ店舗も同じかもしれない。

坂本:そうかもしれませんね。だから「また行きたい」って思うんじゃないかな。タワーレコードとフジロックの根本的な部分での共通点は「“自分で選ぶ事”をできる人がいないと成り立たない」ということなんです。グリーン・ステージを観たかったけど、歩いていたら他にいい音楽があったから立ち止まってそれ聴いちゃったみたいな話、よくあるじゃないですか。それと同じで、決まったCDを買うつもりで店へ行ったけど、店内で流れていた音楽を気に入ってそれを買うとか、試聴して他のを買っちゃうとかね。チャート上位だから買うのではなく、自分でいいと思ったものだから買う。そういう自分の多様性を認めるマインドを持ったタワーレコードのお客様とフジロックへ行く人たちのマインドは似ている気がするんです。

──わかります。

坂本:オープン・マインドで自分で選ぶことのできる人、選んだものに責任を持つ。「あっちが観たかったけどこっちがよかったから今日はよし」みたいに、自分の選択をポジティブに捉えられる感覚を育てることが大切だと思うんです。<NO MUSIC, NO LIFE.>は、渋谷に店舗を構えた頃、HMVさんやVIRGINさんなどの外資系の大型店舗が多くオープンした時代に始めたものなんです。外資系大型店という括りの中での差別化として、「音楽カルチャーに役立つこと」をしていこうという想いが込められたものなんですけど、フジロックとの関わり方も同じかもしれません。フェス文化を日本に残すためには、CDを販売しなくても、ゴミ袋を作ったり協賛してサポートするのもいいんじゃないの?って。大きな外資系のお店はいっぱいありますけど、そういうことができるのは我々くらいでしょう!というプライドを持つことも大切だと思います。

──フジロックファンもタワレコファンも、<NO MUSIC, NO LIFE.>な人々ですもんね。


坂本:実は今年、フジロックが20周年なので<NO FUJI ROCK, NO LIFE!>というキャンペーンをやるんです。タワーレコードとも縁の深い忌野清志郎さんのフジロックでの写真を使わせていただきました。

──忌野清志郎とフジロックは深い関係ですし、ロックへの敷居を低くしてくれたスーパースターですからね。

坂本:本当は毎年は出られないのに、名前を変えて出続けたっていう(笑)。

──日本最高峰のフジロックに日本最高峰のロック・スターが出続けていたわけですが、まるで「清志郎が苗場に帰ってきた」みたいです。

坂本:20年=成人ですから、若い人にはぜひ清志郎のような大人を目指して欲しいと思っています。フジロックは山なので虫に刺されるとか雨が降るなどのハードルは確かにありますけど、逆に簡単に行けないからいい面もあると思うんです。

──他のフェスとフジロック…何が違うんでしょう。

坂本:目的や行く理由を皆がそれぞれ持って向かうのがフジロック。そして、目的は違ってもフジロックという空間を大切にしているのは同じなんです。自分も楽しむし他の人も楽しんでいる…その場所を継続させたいという共通意識やその環境を大切にしようという想いが基本にある人たちが参加しているので、ゴミの分別なども協力的です。スタッフがいなくても、お客さん自ら行ってくれるのはそういった意識の現れに他ならないです。そういう点でも、フジロックは敷居が高いと言われているのなら、それは一般的な「敷居が高い」の意味とは少し違うと思います。

──人間力も試されますね。

坂本:具合の悪い人がいた時に素通りするかしないか…電車の中でおばあちゃんに席を譲るかどうかと同じですけど、非日常だからこそ、自分が試されるような自分自身に向き合わなければいけないシーンがフジロックにはたくさんあると思うんです。そこでの経験を日常に戻ってからも持ち込めたら素敵ですよね。

──山での体験が人生経験そのものですね。

坂本:フェスを皆で大切にする気持ちは社会を大切にする気持ちと似ているかもしれない。ゴミを分別するとか、困った人を助けるとかね。それが日常に反映できれば、逆に、行くのも億劫じゃなくなる。ああいう環境なので、みんなで創り上げる/成功させるという気持ちがないとなかなか大変なことだと思うんです。“フェス”と名前が付いているものはたくさんありますけど、ただの大型イベントじゃないの?みたいなのもたくさんありますから。お祭りはみんなで作るものですよ。

──本来、「フェス=お祭り」ですもんね。子供も大人も持ち分があって、やぐらを囲んでみんなで踊る。みんなで作る空間なんだということが分かります。

坂本:やぐらと言えば…前夜祭の目玉として大抽選会があるんですが、毎年チケット3日通し券分の金券というタワーレコード賞を出しているんです。私がプロレスのマスクをつけてタワーマスクをやっていまして…。

──そんなことまで坂本さんが?

坂本:若手スタッフが部署異動になり、2年前から私が(笑)。最近タワーマスク太ったな、とか思われているかもしれません(笑)。メガネも掛けられないし、ここ数年のフジロックでは、あれが一番のプレッシャーなんです(涙)。

──前夜祭の楽しみがひとつ増えました(笑)。

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“敷居が高い”とも言われるフジロックが支持され続ける理由を検証しているこの特集において、フジロックは「簡単に行けないからいい面もある」という坂本氏の言葉には、考えさせられるところがあった。「自然と音楽の共生」を掲げるフジロックは、私達の日常から逸脱した異空間であることは言わずもがな。だがそれと同時に、人間力を試され、人間の本能を呼び起こさせてくれる原始的な環境でもあるのだ。そこに身を置いてみることは、紛れもなく重要な人生経験のひとつだと言える。

そして、その現場で「物を売ること」ではなく「日本にフェス文化を残すため」に、CD屋がCDを売らずにフジロック参加者の一員として育んできた信頼関係は、<FUJI ROCK>と<NO MUSIC, NO LIFE.>を交流させた<NO FUJI ROCK, NO LIFE!>という極上のコラボ・コピーを誕生させた。これまで両者が音楽産業の中で支え合ってきた証であり、これからも共存していこうという互いへの最大級のリスペクトであることは誰の目にも明らかだろう。

「そこに人がいるから行く」と坂本氏は語っていた。フジロックへ向かうのもレコードショップに向かうのも、そこに人との出会い、そして音楽との出会いがあるからだ。シンプルで力強い衝動。そこには、フジロックとTOWER RECORDSが多くの人々から愛され支持される共通した想いが渦巻いている。

取材・文=早乙女“ドラミ”ゆうこ、BARKS編集部

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※FUJI ROCK FESTIVAL会場や越後湯沢駅、タワーレコード全店にて掲出(7月上旬より予定。)

<FUJI ROCK FESTIVAL'16>

2016年7月22日(金)23日(土)24日(日)
@新潟県 湯沢町 苗場スキー場
※各券種、受付などの詳細はオフィシャルサイトへ http://www.fujirockfestival.co

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