【ライヴレポート】BREAKERZのAKIHIDE、「桜の花が咲く頃に新作とライヴを」
BREAKERZのAKIHIDEが12月4日、キリスト品川教会グローリア・チャペルにてクリスマス公演<AKIHIDE Premium Night Show 2015 夢見る海月のクリスマス>を開催した。先ごろ公開した速報レポートに続いて、新たな写真を加えた詳細レポートをお届けしたい。
◆AKIHIDE 画像
クリスマスのイルミネーションに彩られた駅前を抜け、教会の中に足を踏み入れると街の喧騒が嘘のように思える静けさだ。場内にはクリスマスソングのBGMが流れ、壇上の十字架、パイプオルガンの金属パイプを見上げる厳かな雰囲気に、集まったオーディエンスも心なしか緊張気味のように思えた。ちなみに本公演はAKIHIDEにとって初の教会でのライヴ。名古屋、大阪、神奈川の各地ジャズクラブにて開催された<AKIHIDE Premium Night Show 2015 夢見る海月のオーケストラ>を締め括るものでもある。
ライヴはパイプオルガン奏者による「クリスマスメドレー」から幕を開けた。その荘厳でドラマティックな音色に自然と拍手が沸き起こり、フォーマルな衣装に身を包んだAKIHIDEが登場。バッハの「主よ人の望みの喜びを」をガットギターでつまびき、パイプオルガンとのレアな共演が繰り広げられた。聖なる調べが教会の中に響きわたっていく。
「みなさん、ようこそ」──AKIHIDE
AKIHIDEの挨拶の後にサポートメンバーの杉直樹(Key)、二家本亮介(B)、山内陽一朗(Dr)が呼びこまれ、4ピース編成となって最初に演奏されたのは、まるで季節のグリーティングカードのような新曲「待雪草」だ。和を感じさせる旋律と軽やかなリズムが心地よく溶け合っていく。
「今日は癒しの空間を音の波でみなさんにお届けしたいと思います。クラゲは“海月”と書くのですが、次にお贈りする曲はその漢字からモチーフを得て、まずは“月”で「Moon Dancer」、そして“海”の青さから「Lapis Lazuli」。この2曲を続けてお聴きください」──AKIHIDE
穏やかなMCも癒しを増幅させる。全曲アコースティックギターによる初のインスト集にして2ndアルバム『Lapis Lazuli』から届けられた「Moon Dancer」は、月夜の下で何かが起こりそうなトキメキを感じさせてくれるナンバーだ。AKIHIDEの宙を舞うようなセンシティブなギターのフレーズが月や星の輝きを連想させてくれる。続いて奏でられた「Lapis Lazuli」では二家本がウッドベースからエレキベースへと持ち替え、スラップ奏法を披露。AKIHIDEもギターのボディを叩きながら弾くパーカッシヴなプレイを展開する。セクションによって表情を変えていくギターの音色と確かなスキルに惹きつけられずにはいられない。
「少し早いクリスマスライヴなんですが、サンタさんを信じている人ってどれぐらいいるのかな?」と問いかけ、「幼稚園ぐらいまではサンタクロースの存在を信じていたけれど、あるときに“ホントは親父なんじゃないかな”と思って、欲しいものを黙っていてもプレゼントが届くかどうかを試してみたら、念願のオリンピックゲームをもらえた(黙ってはいたものの、オモチャ売り場で熱心に見ていたらしい)」という微笑ましいエピソードを披露したAKIHIDE。その後はこの日のスペシャルプレゼントとして「White Christmas」のカヴァーが披露された。温かくちょっぴりブルージーなオトナのクリスマスソングが教会を幸せな空気で満たしていく。
中盤では新曲「ジェリーフィッシュ」と「氷雨」が届けられた。「クラゲが海の中をふわふわ漂って増殖していくイメージで展開していく曲」とAKIHIDEが説明した「ジェリーフィッシュ」は、まさに青い海の中にいるような浮遊感と躍動感が心地いい曲だ。「この季節にピッタリです」と贈られた「氷雨」は美しさとダイナミズムが同居するナンバーで、鍵盤とベースの絡み、AKIHIDEの情緒的なギターソロも印象的だった。ガットギターという奥の深い楽器で静と動を使い分けるプレイに、思わず手元を凝視してしまった人も多かったのではないだろうか。
「ガットギターって音は柔らかいんですが、激しい音も出る。非常に難しいんですが、このギターで演奏しています。そしてこの教会のパイプオルガン、会場全体が楽器の一部となっているんですね。空気を取り込んで音を鳴らすっていう。僕自身、初めて聴きましたが、非常に素敵な音色でした。今日はいろいろ新しい挑戦をしていますが、“癒し”というテーマがありつつ、次の曲は新曲の中でも、ちょっと“狂気”を孕んだ楽曲になっております。タイトルは「桜の森の満開の下」。ご存知の方も多いかもしれませんが、坂口安吾さんの非常に奇妙で美しく切ない小説にインスパイアされた曲です。気が狂うような桜の綺麗な木の情景を思い描いていただけたら幸いです」──AKIHIDE
この新曲「桜の森の満開の下」は本ライヴのひとつのクライマックスだった。ギターとベースのテクニカルなフレーズのユニゾンに始まり、軽くリズムをとりながら弾いていたAKIHIDEがこの曲では椅子に座りながら身体を激しく揺らす。ぐるぐる回るループするフレーズ、意表を付くようにインしてくる激しいドラムがまさに“狂気の風景”を描き出していった。後半に向かうに従ってカオスになっていくプレイは鳥肌もので、エンディングでAKIHIDEは思わず生声で「イエーッ!」と叫び声を上げ、拍手と歓声が場内に響いた。
「癒しなのに熱いメンバーを紹介させてください」と素晴らしいプレーヤーたちに触れたAKIHIDEは、今回の<Premium Night Show2015>のために自身でイラストを描き、読める絵本のような気持ちで1年かけて作ったというグッズのひとつ『夢見るカレンダー 2016』について語った。そして、海にちなんで、自身が愛するジブリ作品のひとつ『魔女の宅急便』から「海の見える街」がカヴァーされ、場内は再び癒しのムードに包まれた。
本ライヴのもう1つのクライマックスを作ったのが後半の「小さなカーネーション」だった。教会に入ったときに椅子の上にさりげなく置かれていた“赤と銀の2種類の鈴”が、オーディエンスに用意された楽器だったのである。立ち上がったAKIHIDEが「自分が右手を挙げたら赤の鈴を持っている人が鳴らし、左手を挙げたら銀の鈴を持っている人が鳴らす」ようにリクエスト。オーディエンスは“夢見る海月のオーケストラ”と名付けられた。海のような照明の中、ファンタジックなコラボレーションが場内の空気を完全にひとつにする。上手下手へと移動し、ギターを奏でるAKIHIDEは、みんなの鳴らす鈴の音に何度も笑顔を浮かべていた。この瞬間にしかないドラマを生み出し、最初は緊張気味だったオーディエンスもすっかり解放のベクトルに。スパニッシュなテイストのナンバー「Gypsy Sweets」ではハンドクラップで盛り上がり、本編ラストは七夕の織姫と彦星の心境を音に置き換えた「星祭りの夜に」で締めくくられた。
アンコールでは杉直樹のピアノをバックに「感謝の気持ちを込めてこの曲を贈ります。大切な曲です」と「Namida」を演奏。最後のMCも胸に染み入ってきた。
「夜、眠れない時に目をつぶると自分の鼓動の“ドンドンドン”という音が聞こえてきます。それは時の音のようにも思えます。時間を刻む時計の音も生命を刻む胸の音もうれしい時、悲しい時、リラックスしている時で回るスピードが変わります。今日から明日へ、そして未来へ、みなさんの日々が、その時計が健やかに回り続けることを願って。そして僕自身、この胸の時計が回り続ける限り、みなさんに音楽をお届けできるよう願いを込めて、この曲を贈ります」──AKIHIDE
ガットギターをアコースティックギターに持ち替えて演奏されたのは「この時計が止まるまで」。奏でる音でさまざまな風景や心情を描き出し、癒しと豊かな時間をプレゼントしてくれたAKIHIDE。すべての演奏を終え、感謝の想いを伝えてメンバーと並んで挨拶。「来年の桜の花が咲く頃には、新しい作品とライヴをしたいと思います」と報告し、集まったファンをさらに笑顔にさせた。
取材・文◎山本弘子
■<AKIHIDE Premium Night Show 2015 夢見る海月のクリスマス>
2015年12月4日@キリスト品川教会グローリア・チャペルSETLIST
02.主よ人の望みの喜びを
03.待雪草
04.Moon Dancer
05.Lapis Lazuli
06.White Christmas(カバー)
07.ジェリーフィッシュ
08.氷雨
09.桜の森の満開の下
10.海の見える街 (カバー)
~MC~鈴のオーケストレーション
11.小さなカーネーション
12.Gypsy Sweets
13.星祭りの夜に
<アンコール>
14.Namida
15.この時計が止まるまで
◆『夢見る海月のオーケストラ』特設サイト
◆AKIHIDE オフィシャルサイト
◆AKIHIDE オフィシャルTwitter
◆BREAKERZ オフィシャルサイト
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