【インタビュー】ステレオフォニックス「ワクワクしながらやる、それが僕の目標かな」

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ニュー・アルバム『Keep The Village Alive』が初登場で全英1位に輝いたステレオフォニックスのフロントマン、ケリー・ジョーンズと話をする機会に恵まれた。

◆ステレオフォニックス画像

デビューから早くも18年。何年も前にUKでは国民的バンドの地位を確立しており、その力強さや安定感は不動のもの。ぶれることなく、信頼を裏切らないバンド、ステレオフォニックス。硬派で骨太な彼らの音楽同様、実直で真摯なケリーが、音楽への熱い想いを語ってくれた。

――新作『Keep The Village Alive』の1位獲得おめでとうございます。これで6枚目の全英No.1ですね。

ケリー:ありがとう。いい気分だよ。その前に1位になったのは2008年か2007年だったからね。それに、自分のレーベルから出したものが1位になるなんて嬉しいよ。(前作の)『Graffiti On The Train』と『Keep The Village Alive』は僕ら、音楽に集中し、本当に一生懸命作ったんだ。だから、他の人たちも同じ気持ちでいてくれたっていう結果が出たのは、嬉しいし励みになる。20年やってて、1stや2ndが好きだった人達といまでも繋がっていられるなんて素晴らしいよ。

――どの曲も違うエネルギー、世界観を持っていて本当にいいアルバムだと思います。どうしたら20年間もこれほど高い水準を維持し続けられるのでしょう?


ケリー:うーん…、『Graffiti On The Train』と『Keep The Village Alive』に限って言えば、いつもと違う方法でレコーディングしたんだ。大抵は、レコーディングするとなると8週間とかスタジオを押さえて、その期間で終わらせる。でも、この2枚では可能な限りスタジオへ入って、音楽を聴いたり曲を作ったり、常にクリエイティヴなモードでいた。全部で40~45曲くらい作ったよ。その中から力強いものだけ選んでアルバムにしたんだ。『Keep The Village Alive』はちょっとミックステープみたいな感じになった。どの曲も違うメッセージを持ち、違うスタイルだ。でも全部、高揚感があっていい気分にさせるっていう共通点がある。

――それって、ポール・マッカートニーが「毎日、曲を作れ。書くことがないと思ったときでも」と言っていたのを思い出しました。あなたのライティング・スタイルもそんな感じなのでしょうか?

ケリー:そうだね、毎日スタジオへ行くと、ますますクリエイティヴになれると思う。間を空けるっていうのも大事だけど、新曲作るって決めたら、どんなアイディアでもいい、つまらないって思ったものでも、それを展開してみたら、まるで想像していなかった結果になるかもしれない。それは、毎日やらなきゃ経験できないことなんだ。僕はそのプロセスを楽しんでるよ。

――『Graffiti On The Train』をリリースしたとき、3部作になると言っていましたが、『Keep The Village Alive』はその第2章と考えていいのでしょうか?


ケリー:たくさん曲を作ったからね。パワフルなものがいっぱいあって、それは全部リリースしたいと思っている。だから、これを3部作と呼ぶべきなのかわからないけど、共通点はあるんだと思う。どうなるかな。まだ、曲は残っているけど、新しく作る必要もある。だから、どう展開するか見てみようってとこだね。

――いつもアルバムのタイトルは、アルバムが出来上がってからつけると聞いたのですが…

ケリー:『Graffiti On The Train』のときは最初につけた。でも、『Keep The Village Alive』はあとからだったね。18~19歳のときの僕の思い出から取ったんだ。小さな村で、平日はみんな、工場なんかで働いてて、タフな仕事をしていた。それで週末になるとパブに集まってライヴ・ミュージック聴きながら、“この村を元気にしよう”って叫んでいた。すごくポジティヴな時間と場所だった。小さな村で、仕事の面でチャンスが巡ってくる確率は少なかったかもしれないけど、僕はあの村やそこに住む人たちが大好きだった。

――1997年にデビュー以来、1枚を除きいつも2年に一度アルバムをリリースしていますが、それを自分に課している?

ケリー:ハハ、そういうサイクルで動いているってだけだよ。1年ツアーやって、1年かけてアルバムを作る。いまのとこ、自分にとってはそれが心地いいんだ。

――でも、長い休みを取りたがる人も多いですよね。もしかして仕事中毒とか?

ケリー:ハハハ、そうは思わないけど、それしか知らないんだよ(笑)。休みを取るより仕事してるほうが、気が楽なんだ。長い休みを取ったら何かトラブルが起きるかも(笑)。

――ってことは、やっぱり(笑)。そして、もうひとついいニュースがありましたね。赤ちゃんが誕生するとか。おめでとうございます。

ケリー:そうなんだ、ありがとう(笑)。

――1人目ではありませんが、新しく赤ちゃんが生まれることで仕事の仕方が変わってくる?


ケリー:そんなことないかな。3人目になるわけだけど、上の2人の子たちは僕のやっていることが大好きで、すごく応援してくれているんだ。ツアーの合間もできるだけ家に戻るようにしている。娘達と2週間以上離れたことないよ。彼女達も妹か弟ができるのをすごく楽しみにしてるんだ。

――ステレオフォニックスのファンとしては、常にアルバムをリリースし続けてくれるのは嬉しいのですが、最近、ザ・プロディジーのリアムは「もうアルバムは作らない。時間がかかり過ぎるから、この先は代わりにEPを出す」と話していました。この考え方はどう思いますか?

ケリー:ミュージック・シーンは常に変化しているし、どんなタイプの音楽を作っているかにもよるんじゃないかな。ザ・プロディジーはEPでも上手く行くのかもしれない。フー・ファイターズでさえ、新作には8曲しかなかった。アーティスト次第だと思うよ。僕はアルバムを作る過程が好きなんだ。アルバムが持つ、どこかに連れ出してくれるようなあの感覚が大好きなんだ。でも、1曲だけダウンロードしたいって人がいても、いいと思う。僕も4曲作って、それをリリースしたいと思ったらEPにするかもしれない。いままでそういうケースはなかったけど。

――1996年、22歳のときですか、レコード契約と脚本の執筆、同時期に2つのオファーが舞い込んだと聞きました。迷うことなくレコード契約を選んだのですか?

ケリー:そうだよ。そのときすでにバンドを6~7年やってて、情熱を持っていたからね。脚本を書くのは歳を取ってからでもできるって思った。そっちはいつでもできる。歳取っていろいろ経験したほうがいいもの書けるはずだしね。だから、ロックンロールの道を選んだんだ(笑)。

――でも、歳取ってロックンローラーでいる自分の姿も想像できる?


ケリー:できるね。自分が音楽を作るのを止めるとは思えない。何着てるかは、わからないけど(笑)。いまでも音楽には突き動かされるし、自分やバンドが新しいものに挑戦していくことにワクワクしている。自分のやってること、大好きなんだ。

――アルバムにリンクする映画を作っていると聞きましたが…

ケリー:ああ、脚本を書いているとこだよ。

――ドキュメンタリーのようなもの、それともドラマになるのでしょうか?

ケリー:ドラマだよ。これからしばらくツアーだし、いつ完成するかはわからない。急いではいないんだ。でも、僕の書いてるものに興味を持ってくれている人たちもいるし、いつか映画を作りたい、それに没頭したいって思っている。

――バンドを結成したとき目指していたことのいくつかは達成したと思いますが、次の目標は?

ケリー:1stや2ndアルバムにいまだ共感を覚える人は多いし、自分がこれまでやってきたこと全てを誇りに思っているけど、僕は前へ進み続けたい。新しいことに挑戦していきたい。それが何であれ、ワクワクしながらやる、それが僕の目標かな。自分の仕事が大好きで、毎日それを楽しみながらやる、それこそが最大の目標だ。

――この20年のハイライトは?

ケリー:うーん……、最大のハイライトは、ものすごく小さな村で育った、チャンスがいっぱいあるとは言えなかった3人の子供が世界に羽ばたいたことだね。バンドのメンバーやスタッフと素晴らしい友人関係を築き、その友人たちと世界を旅し、毎晩パフォーマンスするなんて、最高の仕事だよ。おまけに、自分のアイドル、ザ・ローリング・ストーンズやデヴィッド・ボウイ、エアロスミス、U2、AC/DCに会えるなんて、もう夢としか言いようがないよ。

――では、良くなかったことは?

ケリー:疲れること。20代のときは目まぐるしくて、自分が何やってるかわからない中、次から次へとこなしてた。やらなきゃよかったって思うものもあったし。でもいまは、ありのままの自分でいられて気が楽だよ。

――2017年はデビュー20周年になりますが、何か計画していますか?


ケリー:アルバムをリリースして、多分、大きな公演を開いて20年を祝うと思う。いま、いろいろと計画中なんだ。ドキュメンタリーなんかも作ると思うし、すごくエキサイティングだよ。

――日本へは?

ケリー:来年、行きたいと思ってるよ。日本のファンは、1997年に初めて訪れたときからずっと素晴らしい。僕らの音楽を聴き続けてくれて、ありがとう。またすぐに会えるよ。

Ako Suzuki

『Keep The Village Alive/キープ・ザ・ヴィレッジ・アライヴ』

2015年9月9日発売
SICX-6 ¥2,400+税
1.セ・ラ・ヴィ
2.ホワイト・ライズ
3.シング・リトル・シスター
4.アイ・ウォナ・ゲット・ロスト・ウィズ・ユー
5.ソング・フォー・ザ・サマー
6.ファイト・オア・フライト
7.マイ・ヒーロー
8.サニー
9.イントゥ・ザ・ワールド
10.ミスター・アンド・ミセス・スミス
11.セ・ラ・ヴィ(ライヴ・フロム・ザ・ロイヤル・アルバート・ホール)
12.マイ・オウン・ワースト・エネミー(ストリップト 2015)
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