【インタビュー】ベルフェゴール、俺たちはヒツジの群れを襲うオオカミなんだ

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──ベルフェゴールのライヴは観衆が凄まじい盛り上がりでしたが、破壊、殺人、カニバリズム、ゾンビなどを歌詞の題材にすることについて、どんなポリシーを持っていますか?

ヘルムート:俺たちのメッセージはたったひとつ、自由な精神だ。俺の歌詞の題材を「邪悪だ」って嫌う連中は多い。でも絶対的な“悪”なんてものは存在しないんだ。あるのはモラルや宗教、法律による抑圧だけだ。牛や豚は食べてもいいのに、カニバリズムは“間違っている”のか、一度じっくり考えてみた方がいい。俺たちの音楽は、リスナーが自分の頭で考えるためのヒントでもあるんだ。ベルフェゴールのファンは、ママに「あんなもの聴いちゃいけません!」と言われて聴くのを止めるようなヒツジ野郎ではない。俺たちの音楽を楽しんでくれる人たちは、世界中にいる。俺たちが日本までやってきたのは、それが理由なんだ。

──ベルフェゴールの音楽において、“悪魔”はどの程度重要でしょうか?

ヘルムート:とても大事だ。キリスト教世界において、悪魔は屈服しない精神の象徴なんだ。みんなが教会に行くから自分も行く…というのは、羊飼いの子供に追い立てられるヒツジだ。俺たちはヒツジの群れを襲うオオカミなんだ。ディーサイドのグレン・ベントンとメイヘムのアッティラ・チハーもオオカミだよ。『コンジュアリング・ザ・デッド~屍者召喚』の「リージョンズ・オブ・ディストラクション」で彼らにゲスト参加してもらったけど、彼らはシリアスに悪魔を捉えているし、知識もある。アッティラは知的で冷静で、グレンは攻撃的なタイプかな。彼らは社会の良識にもレコード会社にも屈服しない。俺自身、彼らのことをリスペクトしている。

──ライヴで披露された「ボンデージ・ゴート・ゾンビ」は“緊縛・悪魔の山羊・ゾンビ”という三大要素がタイトルで、しかもコーラスが「ヘイル・サタン!」という、まさに完璧なメタル・ソングですね。

ヘルムート:そうだろ(笑)?どれも俺が大好きなものばかりだ。俺たちはフヌケたラヴ・ソングなんて絶対に歌わない。ただ、俺たちは中学生ではないから、「イェー、悪魔だ。クールだろ?」とか、そんな頭の悪いことも歌うことはない。俺の歌詞はもっとディープな内面から生まれるんだ。ベルフェゴールの歌詞の多くはまったくの絵空事ではなく、現実を歌っている。その一方で、文芸作品から着想を得ることもある。たとえば「ジュスティーヌ:ソークド・イン・ブラッド」はマルキ・ド・サドの『ジュスティーヌあるいは美徳の不幸』からインスパイアされたんだ。さらに歌詞も英語・ドイツ語・ラテン語を使い分けて、異なったディメンションを表現している。エンタテインメントであるのと同時にアートであり、文芸なんだ。

──ベルフェゴールの世界観は映画的、シネマチックであるとも言われますね。

ヘルムート:その通り、さまざまな映画からインスピレーションを得てきたよ。ユニバーサルのクラシック・ホラー映画は全部好きだし、影響を受けている。『ドラキュラ』『フランケンシュタイン』『狼男』とかね。それから『エクソシスト』や『悪魔のいけにえ』からもインスピレーションを得た。

(ここでベーシストのセルペントが乱入)

セルペント:『Regoregitated Sacrifice』はグロで良かったね!シュールな作品だったらヤン・シュヴァンクマイエルの『ルナシー』がおすすめだ。日本映画だったら三池崇史の『殺し屋1』や『極道恐怖大劇場 牛頭GOZU』…素晴らしい映画がたくさんあるよ。

ヘルムート:あと『うずまき』も日本映画だよね?あのアイディアは凄いと思った。

──今後の予定を教えて下さい。

ヘルムート:日本の後にはインドのフェスティバルに出演するんだ。ナパーム・デスと一緒のフェスで、すごく楽しみにしているよ。それから夏はヨーロッパのフェスティバルにいろいろ出ることになっている。ドイツ、スウェーデンとかいろいろね。これまで世界のあちこちでプレイしてきたけど、オーストラリアとアフリカ大陸ではまだライヴをやっていないんだ。今年は難しいけど、次のアルバムのツアーではぜひ行きたいと考えている。でも、生水を飲まないように気をつけないとな。以前ブラジルで酔っ払って水道水をガブ飲みして、肺チフスになって開胸手術をしたんだ。6時間の手術で、(胸をはだけて)ほら、悪魔の刺青の真ん中にキズがあるんだよ。もう二度とギターを弾けない可能性もあったんだ。

──次のアルバム用の曲はもう書き始めていますか?

ヘルムート:いや、まだ書いていない。でも今年の終わりに曲を書いて、来年初めにはレコーディングするつもりだよ。今回はさらに時間をかけて、ベストなものに仕上げるつもりなんだ。そうしたら、日本で幾つもの都市を回るツアーをやりたい。また日本を地獄のどん底に突き落とすのが楽しみだよ。

取材・文 山崎 智之
Photo by Mikio Ariga

ベルフェゴール『コンジュアリング・ザ・デッド~屍者召喚』

50セット限定!来日記念直筆サイン入りCD+DVD 3,500円+税
CD+DVD 2,750円+税
CD 2,000円+税
1.ガスマスク・テラー
2.コンジュアリング・ザ・デッド
3.イン・デス
4.恐るべき御稜威の王よ
5.ブラック・ウイングド・トーメント
6.ジ・アイズ
7.リージョンズ・オブ・デストラクション
8.フレッシュ、ボーンズ・アンド・ブラッド
9.ルシファー、テイク・ハー!
10.永遠の契約
初回限定盤DVD収録内容
「メイキング・オブ・コンジュアリング・ザ・デッド」(約15分)
・リハーサル:ベース / ドラムス / ギター
・リハーサル:ヴォーカル
「ブルータル・ライヴ・リチュアル」(約25分)
・アンジェリ・モーティス・デイ・プロフォンディス(ライヴ・イン・リヴァプール)
・ディアボリ・ヴィルトゥス・イン・ランバー・エスト(ライヴ・アット・メイ・サフ・オープン・エア)
・イン・ブラッド - デヴァウワー・ディス・サンクティティー(ライヴ・イン・モスクワ)
・フィースト・アポン・ザ・デッド(ライヴ・アット・アイントホーフェン・メタル・ミーティング)
・ボンデージ・ゴート・ゾンビ(ライヴ・アット・パーティ・サン・フェスティバル)
・ジュスティーヌ・ソークト・イン・ブラッド(ライヴ・アット・ウメア・ハウス・オブ・メタル・フェスティバル)
・バックステージ(レクヴィ・フェスティヴァル)
「サイトシーイング・カルト・プレイシズ」(約10分)
・アグシュタイン城(オーストリア)
・セドレツ納骨堂(チェコ)
「タトゥー・アンド・アート・セクション」(約3分)
・フォト・スライドショウ
「リハーサル・バンカー」(約8分)
・インサイド・ザ・バンカー
・シュワルティ“スヴァインフィーヴァー”
「コンジュアリング・ザ・デッド(ビデオ・クリップ)」(約7分)
・オフィシャルビデオクリップ
・メイキング・オブ

◆ベルフェゴール『コンジュアリング・ザ・デッド~屍者召喚』オフィシャルサイト
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