【ライブレポート】ベルフェゴール、ラウドパークを地獄の穴に叩き落とす

ポスト

2014年で第9回目を迎えた鋼鉄の祭典<LOUD PARK 14>が、10月18日(土)・19日(日)の2日間にわたって開催された。米・英・ヨーロッパ・日本からさまざまなタイプのメタル・アーティストが総登場したが、あらゆるスタイルがひしめく中で、ひときわ異彩を放っていたひとつにベルフェゴールがある。

◆ベルフェゴール画像

オーストリアの古都ザルツブルクから初来日を果たした彼らは、ブラック・メタルとデス・メタルの最もエクストリームな部分を抽出した“ブラックンド・デス・メタル”で知られるバンドだ。2日目のまだ日中、“アルティメット・ステージ”にアルバム『コンジュアリング・ザ・デッド/屍者召喚』のジャケット・アートの悪魔ヤギをあしらった垂れ幕が掲げられると、観衆からどよめきが洩れた。

バンドのギタリスト兼ヴォーカリストのヘルムートは来日前、「<LOUD PARK>では「日本のメタル・ファンを地獄に叩き落とす」と宣言していたが、「フィースト・アポン・ザ・デッド」から彼らのライブが始まると、それが決して誇張ではなかったことがわかってくる。

「イン・ブラッド~ディヴァウワー・ディス・サンクティティー」は前作『ブラッド・マジック・ネクロマンス』(2011)のオープニング・ナンバーだ。同作の時点で彼らは日本ではカルト宗教的な支持を得るに留まり、まさか日本盤CDが発売され、来日までが実現してしまうとは誰も思わなかった。それは彼らの音楽がまったく妥協なく、極限を追求しているからだ。ギター・リフの轟音の塊とブラスト・ビート、呪詛と憎しみを込めたデス・ヴォイスなどは、一般メタル・ファンが足を踏み入れてはいけない禁忌に満ちている。

そのビジュアル性もまた、鮮烈なインパクトを持つものだ。ブラック・メタル然とした白塗りメイクに黒レザーといういでたちに加えて、ヘルムートは頭から血をかぶっている。本人曰く「鮮血には血糊と異なる暖かみがある」そうだが、血を見たことでさらに精神が昂ぶったのか、その演奏は激しさをエスカレートさせていった。

ヘルムートのマイクスタンドにはガスマスクが掛けられているが、それは新作の1曲目である「ガスマスク・テラー」と合わせたものだろう。これから長く続くであろうベルフェゴールと日本との血の契りの始まりとなった曲に、観衆は我を失ってぐるぐる走り出し、今年最大規模のサークル・ピットが生まれた。

バンドの自己紹介ソングといえるのが「ベルフェゴール~ヘルズ・アンバサダー」だ。この曲でも起こったサークル・ピットの中央には、地獄が口を開いているように見えた。デス声の「トーキョー」「ラウドパーク」を除くと、ステージMCは抑えめだった彼らだが、曲紹介を伴ったのが「コンジュアリング・ザ・デッド」だった。もちろんデス声のため、MCの内容はほとんど聞き取れなかったものの、初めて日本を訪れた喜びと、観衆に対する感謝は伝わってきた。アリーナの観客たちはさらに激しく暴れることでそれに応える。

ベルフェゴールの生のライブを見て、改めて思い知らされるのは、その演奏能力の高さだ。ヘルムートのギターとセルペントのベースは、「ルシファー・インセスタス」などで怒り猛りながらも、ツアー・ドラマーのマルティンによる爆速ブラスト・ビートと一糸乱れぬプレイで魅せる。同じくツアー・メンバーのショフトも単なるセッションの域を超えたギター・プレイでバンドに厚みをもたらしていた。

“フェス仕様”ということで、4作目『ルシファー・インセスタス』(2003)以降のアルバムからほぼ満遍なくセットリストを組んでいた彼らだが、最新作からはスローなイントロから爆速ビートへと変異を遂げる叙事詩「恐るべき御稜威の王よ」も演奏された。

「ボンデージ・ゴート・ゾンビ」は、ベルフェゴールのメッセージを最も判りやすく日本のファンに伝える曲のひとつだろう。“緊縛、悪魔ヤギ、ゾンビ”という3つのアイコン、「ヘイル・サタン!」と吼えるコーラス、そしてブラスト・ビートが駆り立てるブラックンド・デス・メタルと、彼らの個性が網羅されている曲だ。

最後に演奏されたのは、「ブリーディング・サルヴェイション」だった。2005年のアルバム『ゴートライク・フレッシュカルト』のジャケットには、縛られて十字架を突き立てられた尼僧が映っているが、そんな背徳感を音に込めたこの曲はラストを飾るに相応しいものだった。

まだ午後2時という時間帯、約40分の決して長くないライブだったが、そのインパクトは衝撃ですらあった。ベルフェゴールは死の舞踏の疫病のように、日本のメタル・ファンを侵食していったのだ。

ベルフェゴールは2015年の日本再襲来の言葉を残しオーストリアへと召喚した。

文:山崎智之



ベルフェゴール『コンジュアリング・ザ・デッド~屍者召喚(ししゃしょうかん)』
オフィシャルTシャツ+初回限定盤CD+DVD 5000円(税抜)
【メンバー】
ヘルムート(ヴォーカル/ギター)
セルペント(ベース)
1.ガスマスク・テラー
2.コンジュアリング・ザ・デッド
3.イン・デス
4.恐るべき御稜威の王よ
5.ブラック・ウイングド・トーメント
6.ジ・アイズ
7.リージョンズ・オブ・デストラクション
8.フレッシュ、ボーンズ・アンド・ブラッド
9.ルシファー、テイク・ハー!
10.永遠の契約
初回限定盤DVD
メイキング・オブ・コンジュアリング・ザ・デッド(約15分)
・リハーサル:ベース / ドラムス / ギター
・リハーサル:ヴォーカル
ブルータル・ライヴ・リチュアル(約25分)
・アンジェリ・モーティス・デイ・プロフォンディス(ライヴ・イン・リヴァプール)
・ディアボリ・ヴィルトゥス・イン・ランバー・エスト(ライヴ・アット・メイ・サフ・オープン・エア)
・イン・ブラッド - デヴァウワー・ディス・サンクティティー(ライヴ・イン・モスクワ)
・フィースト・アポン・ザ・デッド(ライヴ・アット・アイントホーフェン・メタル・ミーティング)
・ボンデージ・ゴート・ゾンビ(ライヴ・アット・パーティ・サン・フェスティバル)
・ジュスティーヌ・ソークト・イン・ブラッド(ライヴ・アット・ウメア・ハウス・オブ・メタル・フェスティバル)
・バックステージ(レクヴィ・フェスティヴァル)
サイトシーイング・カルト・プレイシズ(約10分)
・アグシュタイン城(オーストリア)
・セドレツ納骨堂(チェコ)
タトゥー・アンド・アート・セクション(約3分)
・フォト・スライドショウ
リハーサル・バンカー(約8分)
・インサイド・ザ・バンカー
・シュワルティ“スヴァインフィーヴァー”
コンジュアリング・ザ・デッド(ビデオ・クリップ)(約7分)
・オフィシャルビデオクリップ
・メイキング・オブ

◆ワードレコーズ・ダイレクト「ベルフェゴール」サイト
この記事をポスト

この記事の関連情報