【インタビュー】BREAKERZのAKIHIDE、アルバムに「“自分の居た場所がある幸せ”を感じる物語」

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BREAKERZのギタリストAKIHIDEが2月18日、4thオリジナルアルバム『月と星のキャラバン』をリリースする。2013年6月の1stソロアルバムリリースからわずか約1年8ヵ月の間に、4枚ものフルアルバムを発表するスピードは驚異的だが、それ以前に、作品をつくるたびに高まるAKIHIDEの創作意欲は驚きを超えて称賛に値する。今作も全曲の作曲はもとより、アート性/ストーリー性の高いブックレット制作は自身のアイデアをもとに行なわれた。

◆<AKIHIDE Special Live 月と星のキャラバン ~旅の終わり、そして始まり~>WEB SPOT

加えて、レコーディングの過程はこれまでと異なるもの。同インストアルバムは、初披露の新曲が中心となったツアー<Premium Night Show -月と星のキャラバン->のステージ演奏を通じて、未発表新曲を育んだ後にレコーディングが行われている。アルバムに収録された迫力あるサウンドやアレンジ、高度なアンサンブルや演奏は、すべてステージ上のメンバーと客席との呼吸によって産み落とされたものでもあるわけだ。制作方法の他にも新しさや挑戦はまだある。これまでギタリストAKIHIDEの代名詞となっていたSGは使用せずにES-335がメインとなったほか、バンドサウンドに耳を向ければ叙情的なアコーディオンの音色がアルバムを優しく包み込む。

『月と星のキャラバン』のテーマはずばり“旅”だ。ギター、ベース、ドラム、アコーディオン、サックスといった楽器が、世界旅行へ誘うかのような楽曲群はフランスやブラジル、ニューヨークやバリ島など、世界各地の音楽からの影響も色濃く、ノスタルジーも未来空間も、哀愁も希望もロマンも映し出して、距離や時間を超えた“旅”に胸がときめくばかり。AKIHIDEがアルバム『月と星のキャラバン』に描いた景色はソロワークという旅路の集大成であり、新たなる始まりを告げるものかもしれない。そのすべてを語ってもらったロングインタビューをお届けしたい。

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■知らないジャンルを聴くと素敵な音楽がいっぱいあって
■僕の中ではずっと好きなことをしている感覚なんです

▲<AKIHIDE LIVE TOUR 2014 “RAIN MAN”>

──アルバム『月と星のキャラバン』の制作は、どんな風に始まったのでしょう?

AKIHIDE:コンセプトありきという作り方でした。去年夏の全国ツアー<AKIHIDE LIVE TOUR 2014 “RAIN MAN”>が終わった段階で、冬にジャズクラブサーキットを開催することが決まっていたんです。そこで何をやろうかなと考えた時に、“月と星のキャラバン”という言葉と、あるイメージが浮かんできて。それが今回のメンバーの基本編成になっているベースとドラム、アコーディオン、サックスというバンドのイラストだったんです。それに、“キャラバン”は旅を象徴する言葉なので、次作は旅をしているようなアルバムにしようと決めました。

──アコーディオンプレイヤーがバンドに参加するのは珍しいですよね。

AKIHIDE:そうかもしれません。でも、キャラバンという言葉にピッタリですよね。それに僕はアコーディオンという楽器が好きで、今までのソロ作品やBREAKERZの自作曲で入れたこともありましたし。音色も見た目もすごく素敵な楽器なので、今回はキーボードではなく、生の蛇腹のアコーディオンならではの音を自分の音楽に採り入れることにしました。今回手伝ってもらった丸茂睦くんはまだ若いですが、アコーディオンで頑張っているミュージシャンです。

──良い出会いがありましたね。では曲作りの話をしましょう。“旅をしているようなアルバム”というと、イメージが広がりすぎて収集がつかなくなることもあると思うんですね。収録されたインストナンバー全10曲は、どういう風に揃えていきましたか?

▲アルバム『月と星のキャラバン』ブックレットより

AKIHIDE:“月と星のキャラバン”というテーマが最初に浮かんだ時、まずそれに沿ったストーリーを考えて、言葉で伝えたい部分は絵本に落とし込もうかなと思ったんです。それがアルバムに同封されているブックレットです。ストーリーの軸を作り上げた後、それに合わせて曲を作っていくことにしました。絵本は10章で構成しているので、それぞれの話に合わせた楽曲や、アレンジアプローチを考えていくという作業でしたね。

──一番最初にできた曲は?

AKIHIDE:「月と星のキャラバン」だったんです。この曲は、僕が子供の頃に聴いたことのある「遠き山に日は落ちて」や「夕焼け小焼け」とかに近い印象があって、故郷を持っている感じが表現できているんじゃないかなと思ってます。アルバムを締める曲ができたという意味でも完成したときはモチベーションが上がりましたね。他にもたとえば、「Aurora」という曲は冒頭の疾走感のあるギターが最初に浮かんだんです。元になっている物語は4匹のウサギがワクワクして旅に出るという章なので、これはピッタリだなと。ただ、旅立つ時は故郷を離れる淋しさもどこかに同時にあるものだから、ちょっと切ないメロディーを入れたり、月から飛び立って地球に着陸するストーリーだから、大気圏突入を表現するために後半にノイズを入れたりと、アレンジに物語が反映されることが非常に多かったですね。

──表現したいものに合わせた曲作りができるのは、大きな強みと言えますね。それに、「月と星のキャラバン」はガットギターでアルペジオを弾きながらメロディーを奏でるというクラシックギターの技法を活かしているじゃないですか。そういう奏法はいつ頃身につけたのでしょう?

AKIHIDE:僕は元々バンドミュージシャンなので、クラシックをやっていたわけではなくて、そういうことと向き合うようになったのは、ソロ活動を始めてからです。自分が表現したいことを形にするためにはクラシックやジャズのアプローチのほか、ロック以外のリズムを勉強する必要があったんです。そうしないと言語化できない状態というか、ソロ活動で一緒に演奏する他のミュージシャンとコミュニケーションが取れなかったので、自分なりに勉強しました。

──ソロ活動をする場合、自分が好きなことや自分が得意なことだけで勝負してもいいと思いますが、そうはしたくなかったんですね。

AKIHIDE:いえ、僕は好きなことをしているんですよ(笑)。どんどん新しいことをやっていきたいと思うし。当たり前のことですけど、自分が知らないジャンルを聴くと素敵な音楽がいっぱいあって。自分もこういう音楽をやりたいと思うからこそ、自分なりに勉強して吸収していきたい。だから僕の中ではずっと好きなことをしている感覚なんです。

──根っからの音楽好きですね。実際『月と星のキャラバン』にもいろいろな曲が入っていて、たとえば「Electrical Pirates」は、オリエンタルな味わいが印象的です。

AKIHIDE:“Pirates=海賊”という言葉から、船のイメージが湧いてきたんですけど、それが木で作られたチープな船で。だからブックレットの物語にも、たくさんのものを手に入れた船がだんだん重くなっていって、最終的には沈んでしまうことを描いている。そういうところで浮かんできたのが西洋ではなくて、東南アジアだったんです。曲の冒頭に人の声が入っていますけど、あれはバリ島で生まれたケチャという音楽をモチーフにしていて。他にも、アジアっぽい音もたくさん使っていますね。ただ、“Electrical”なので、ギターのアプローチはちょっとモダンに、電子音を入れたりしてハイブリッドさせました。ちょっとエキセントリックな雰囲気も出したかったので、ギターサウンドは笛みたいなテイストを意図的に多用しています。ギターだけどギターじゃない感じが僕は好きなんですよ。ギタリストとして一筋縄でいかない感じというか。

──すごく面白いです。そこはかとなくラテンテイストを漂わせた「Starlight Wizard」は、旅情感を見事に表現していますね。

AKIHIDE:この曲はアンデス山脈とか南アメリカ大陸のイメージです。サックスの(中村)尚平くんがリコーダーを吹いてくれたんですけど、そのリコーダーは彼が小学校時代に使っていたもので(笑)。でもすごく綺麗にフィットしましたね。ブックレットのこの章は、文明がどんどん切り替わっていくことには良いところも悪いところもあるということを描いてて。そのストーリーを踏まえてギターは最初にアコースティックギターで始まって、だんだんジャズっぽいアプローチへ、最後はロックギターに移り変わるというアプローチをとることで時代の変化を表現しています。これもストーリーがあったからこそ導かれたアプローチですよね。

◆インタビュー(2)へ
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