SteinbergがCubase Pro 8発表、作曲サポート、スタジオ品質の編集・ミキシングなど数多くの新機能を搭載して登場
ヤマハミュージックジャパンは、Steinberg Media Tchnologies GmbHが開発した音楽制作用デジタル・オーディオ・ワークステーション・ソフトウェアのフラッグシップモデル「Cubase Pro 8」と、その機能を厳選して搭載したミッドレンジグレードである「Cubase Artist 8」を12月下旬に発売する。
「Cubase Pro 8」と「Cubase Artist 8」は、「Cubase 7.5」シリーズの後継として開発されたソフトウェア。新バージョンの「Cubase 8」シリーズは、上位の2グレードから登場。最上位グレードはこれまで「Cubase」という名称だったが今回より「Cubase Pro」と改められた。3日に行われた発表会では、「“Pro”という名称には日々作業をしているクリエーターやミュージシャン、エンジニアの方々にプロフェッショナルなツールを約束するという意思が込められています。」と説明された。
▲発表会では新名称「Pro」について説明。コンポーザー、クリエイター、エンジニアそれぞれに向けた新機能が紹介された。
「Cubase Pro 8」と「Cubase Artist 8」ともに最新のオーディオテクノロジーと次世代の音楽ツールを融合し、直感的なワークフローを実現。複数のパッドに任意のコードを割り当ててMIDIトラックやコードトラックの入力に使用できる「コードパッド」、近接コードと五度圏のコードパレットを追加しさらに便利になった「コードアシスタント」機能、オーデイオやMIDIトラックをカンタンにバウンスできる「インプレイスレンダリング」など音楽制作環境を快適にする機能を新たに搭載。さらに「波形メーター」「ダイレクトルーティング」「バージンテリトリー」といった業務用DAW「Nuendo」の機能がCubaseにも実装されることとなった。
発表会では新機能をいくつか紹介。その中でコンポーザー向けの機能として最初にスポットが当てられたのが、「コードパッド」だ。「Cubase 7」から搭載された「コードトラック」をさらに便利にするもので、画面上の1オクターブ分のパッドに任意のコードを割り当てて、MIDIトラックやコードトラックの入力に使用できる。テンションの指定や、転回形、オリジナルのボイシングの割り当てが可能。ギターのボイシングも選択できる。画面上のパッドをクリックして演奏やレコーディングができるほか、MIDIキーボードにもパッドが割り当てられ1キーでコードの演奏・入力ができる。鍵盤が苦手なユーザーにもうれしい機能だ。
▲画面左の下に並んでいるのがコードパッド。コードエディター(右)でそれぞれのパッドに割り当てるコードが指定可能。
▲パッドの外側のボタンでテンションやボイシングをカンタンに変更可能(左)。画面のクリックだけでなく、MIDI鍵盤での演奏・レコーディングが可能(右)。
直前のコードを考慮してその場所に適したコード進行を提案してくれるコードアシスタント機能もさらに進化。近接コードと五度圏のコードパレットが新たに追加(近接モードはProのみ)され、実際にサウンドを聴きながら理論的に破綻しないコードを視覚的に選択することができる。こちらもクリックすることで音が確認できるほか、コードをトラックにドラッグすることでノートを並べられる。ここからコードパッドへのアサインも可能だ。
▲コードアシスタントは画面左のコード間(X)だけでなく、並んだコードの後の進行も提案。画面中・右は提案されたコード。数多くのコードがリストアップされる。緑~黄色~オレンジと色分けされ、上のほうがよりベーシックなコード。
▲近接コードパレット(左)は下の中央に示されたコードに近いものほどベーシックなコードで、円の外側に向かう直線上にあるものが同系統のコードとなる。五度圏のコードパレットはコード理論の本などでおなじみのもの。絵と音でコードが学べるようになっている。
インプレイスレンダリングは、オーディオやMIDIトラックをカンタンにバウンスする機能。MIDIトラックをいったんオーディオに書き出すことで切り刻んで新たなフレーズを作ったり、リバーブの余韻のコントロールを行うといった昨今のオーディオ編集主体のサウンドメイクのワークフローにぴったりの機能となっている。元のトラックに施されたエフェクトなどをオーディオに含めるのか、トラックに引き継ぐかを細かく設定することが可能。バスを作ったり不要なトラックをミュートしたりといった、書き出し時にこれまで行ってきた手間は不要だ。オーディオファイル自体はドライで書き出し、トラックのエフェクトを引き継ぐことで再生音自体は変わらないといった処理が難なく行える。
▲トラックを選択してレンダリングするだけで、トラックを個別に書き出し可能(左、写真では2トラック分を書き出している)。書き出し時の設定(右)は「別々のイベントとして」「ブロックイベントとして」「1つのイベントとして」から選択可能。その下の設定ではたとえばDryにすればオーディオデータにはエフェクトが含まれない。
エフェクトはギター用エフェクターのVST Amp Rackに加え、新たにベースアンプとエフェクターをシミュレートした「VST Bass Amp」が追加。ペダルエフェクト、アンプの種類、キャビネット、マイクセッティングが自由に設定できる。ベーシストだけでなく打ち込みのベーストラックにも最適と説明された。
ミキシングについては「VCAフェーダー」(Proのみ)が紹介された。これはすでにオートメーションを書き終えた複数のトラックをまとめてコントロールできるもので、ドラムブループ、ボーカルグループなど、セクションごとの音量管理に便利。VCAフェーダーにオートメーションを記録すると、コントロールされる側のフェーダーに記録されているオートメーションとマージする機能を持っているので、より複雑なオートメーションが実現できる。
▲ボーカルトラックをまとめてコントロールするためリンクグループを設定すると新たに緑のフェーダーが追加(左)、トラックには元のオートメーションとVCAフェーダーによるコントロールが付加されたエンベロープの両方が表示される(右)。画面の1番下のトラックがVCAフェーダーのオートメーション。
このほか、新たに書き込んだオートメーションデータと前後のオートメーションデータとの間に保管データが入力されなくすることで、オートメーションデータの開始点や終始展を自由に移動するといった編集が可能になる「バージンテリトリー」、トラックの信号を任意のバスに複数ルーティングし、ルーティングのON/OFFをオートメーションで記録できる「ダイレクトルーティング」(Proのみ)も紹介。「ダイレクトルーティング」は、曲中の一部にだけ異なるエフェクトをかける際に、バスでまとめたりやファイルを書き出したりといった面倒な手間をかけることなくできるという例が示された。
「Cubase 8」シリーズでは、これら発表会で紹介されたもののほかにも数多くの新機能が追加されている。一部を紹介すると、プラグイン関連ではエフェクトやインストゥルメントをグループ化できるプラグインマネージャーを搭載、ドラムワークステーション「Groove Agent 4」の「Acoustic Agent」から機能も追加されリズムトラック構築に威力を発揮する。ネットワーク経由でMIDIやオーディオをレコーディングを可能とするVST Connect SE 3(Proのみ)はGUIを再設計し、使い勝手が向上。インストゥルメント・ラックとメディアベイはプロジェクトウィンドウ右側にドッキング可能になり、メディアベイからトラックへのドラッグ&ドロップが効率的に行える。そして、これまでオーディオデータにしか適用できなかったテンポ検出機能がMIDIにも対応、ルバート演奏でレコーディングしたMIDIデータをタイムラインに合わせる作業が格段に向上している。
気になる価格だが、想定売価は「Cubase Pro 8」は55,000円、「Cubase Artist 8」は30,000円前後(いずれも税別)。パッケージ版の出荷開始は12月下旬予定、ダウンロード版は12月3日より販売開始となる。また、2014年10月15日以降にCubase 6/7シリーズをアクティベートしたユーザーはグレースピリオドとして、無償でそれぞれダウンロード版の「Cubase Pro 8」「Cubase Artist 8」にバージョンアップできる。バージョンアップ方法の詳細はスタインバーグのサイトで案内される。
▲発表会のデモ機はUR28Mとともに展示(左)。Cubase 8からCubaseがAdvanced Production System NUAGE(右)に対応したことも発表された。
◆Cubase Pro 8
価格:オープン(想定売価 55,000円前後 税別)
◆Cubase Artist 8
価格:オープン(想定売価 30,000円前後 税別)
発売日:2014年12月下旬
◆Steinberg 日本語サイト
◆ヤマハ
◆BARKS 楽器チャンネル
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