【インタビュー】植田真梨恵、2ndシングル完成「ふたつでひとつになっている思想が好き」
■よりドラマティックに作りたい
■無駄な音はなるべく今回もない
──以前のインタビューでディズニーなどが好きだっていうお話をしていたので、今の話は納得する部分でもあるんですけど、これまでの曲のイメージでいうと、ちょっとそういったファンタスティックな恋愛観は意外な感じもありますね。もっとぶっ飛んでいるんじゃないかっていうのは、どこかであったんですけど。
植田:私は今24歳なんですけど、運命の人とか、ディズニーや童話的な考え方って、子どもの頃にあって疑わなかったもので。でも、そういうのって大人になるに連れて、どうなん?って思ってくるところですよね(笑)。恥ずかしいと思ったり、自分が決めて選んでいくことだったり、自分の行動ひとつで変えられるものだっていう気持ちももちろん芽生えていったんです。そのなかで、もう一回、思い直したというか。「ザクロの実」ができた後、たまたま映画の『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』を観たら、映画の中で、「愛の起源(The Origin Of Love)」という曲が使われていて。その曲の内容と歌っていることが近くて。映画を見ながら、そういうことそういうことって思ったんです。人はもともと、生まれた時は4本足で歩いていて、そこに雷が落ちてふたつに別れてしまったみたいな歌なんですけど。そういうところを描きたいって。
──そうなんですね。歌にはそういうピュアな思いが素直に出てしまうんですね(笑)。
植田:ははは、そうですね。感覚的に好きな語感だったり、好きな言葉を並べていたので。意図してそういう曲にしたというよりは、そういうところが出てしまったというか。
──なるほど。改めてアレンジのお話ですが、メジャーデビューシングル同様、この曲もアレンジはバンドで“いっせーのーせ”で作られてますよね。感覚的に作り上げたものをバンドで編曲するにあたって、植田さんのなかでこういうサウンドにしたいっていう具体的な方向性もあったわけですよね。
植田:デモがピアノのバージョンで既に完結していたので、このままバンドにして、サビは4つ打ちでというイメージはありましたね。あとは、後半に行くに従って、ボリューム感をグッと上げて、よりドラマティックに作りたいっていうこと。無駄な音はなるべく、今回もないっていう。
──確かにドラマティックで音数の少ないアレンジが際立ってます。歌唱の部分では、前半のサビがファルセットを駆使して伸びやかに聴かせているのに対して、最後のサビは極力ファルセットを使わないパワフルな歌い方に変えてますよね?
植田:はい。そこは堰を切ったようにしたかったので。
──ギターが入っていないピアノ、ベース、ドラムというバンド編成にも驚かされました。でも、奥行き感もキレも力強さも、ギターがなくても必要十分なサウンドになっていますね。
植田:この曲を作った時期はちょうど、音楽をやるのがもう一段階楽しくなった時期なんです。ピアノの西村さんの話になるんですけど、リハやスタジオを重ねるとその人の持ち味というか、こういうピアノが得意なんだなって見えたりするじゃないですか。そういうところに合わせてというか、持ち味を出す曲があったほうが、ライブがよりよくなるだろうなってことは思っていて。なので、呼吸で歌えるような柔らかいAメロがあって、叩くようなタテのセクションがあってとか、ピアノのいいとこどりの曲を作りたいっていうイメージは最初にありましたね。
──2曲目の「ハイリゲンシュタットの遺書」。このタイトルは何だろうと思っていましたが、ベートーヴェンが親族に宛てた、実在する手紙のことなんですね。
植田:タイトルは後付けなんです。今回のシングルは、先に「ザクロの実」と3曲目の「朝焼けの番人」を収録することが決まっていて。もう1曲必要だってことになって、新しく書いた曲なんです。「ザクロの実」も「朝焼けの番人」も切なさが一貫してあったので、これは切ないシングルにしようと。なので切なく悲しいテーマを持ったまま、でも耳をもっと楽しくしたいって。だから、音楽的にピコピコいっていたり、「ザクロの実」の真摯さとは離れた色とりどりな音を入れようと。
──歌詞の部分は?
植田:ひたすらいい曲を書きたかったので。自分の恋人が先に死んでしまったとしたら、という思いを書いていきました。
──そこから、このタイトルにした理由とは?
植田:たまたま図書館に行った時に、目に入った本のタイトルが『ハイリゲンシュタットの遺書』だったんです。
──ピンときた感じ?
植田:そうですね。なのであまり深い意味はないんです。これはおまけなんですけど、1曲目が「ザクロの実」、3曲目が「朝焼けの番人」なので、“~の”で繋ぐ言葉がいいなと漠然と思っていて(笑)。
──そういった繋がりと、この意味深な言葉がしっくりきたと。
植田:そうですね、ちょっと死の匂いがしたりとか。歌詞のなかでは、死を連想させることは一言も言っていないので、タイトルでほんの少しだけそういう匂いがするといいなと思って。とてもバランスがよかったんです。
──アレンジはdoaの徳永暁人さんが手掛けたものですが、doaとは異なるエレクトロ色の強いポップなアレンジに驚いたんですが。
植田:そうですよね。
──アレンジにあたっては、徳永さんとどのような話を?
植田:徳永さんにはこれまでも何曲かアレンジをお願いしたことがあったんですけど、去年、徳永さんのライブに呼んでいただいてお話をした時に、すごくユニークな方だなとか、歌心のある方だなという印象を持ったんですね。それで、この曲ができて、アレンジのタイミングで徳永さんに「お願いしたいです」って話をしたんです。アレンジしていただいたものを聴いて、とても早いレスポンスでいい感じに仕上がっていたので、とてもビックリしたんですけど、色とりどりで、ゴリッときてて注文通りであって、徳永さんの人柄通りだなと思いました。
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