【インタビュー】WEAVERがベスト盤『ID』から語る、未来への扉を開けるための大きな決意

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楽曲が生まれたときの想いを、今、改めて刻み込んだベストアルバムがリリースされる。収録曲それぞれにWEAVERの確かな足跡があって、だからこその『ID』。この作品をひとつの区切りとして、彼らは現在留学中のロンドンから、その音楽に新たな風を吹き込んでいくだろう。つまり今作は、バンドの未来への扉を開ける重要なキーでもあるのだ。

ロンドンに行くことだったり、今年でデビュー5年目を迎えるっていうことだったり、
バンドにとって節目と言えば節目なんですよね


──留学先のロンドンで作る曲は、やっぱり今までとは違っていますか?

杉本:そうですね。曲の質感は変わってきたかなって自分たちでも思いますね。それはイギリスの天候だったりに影響されてるせいなのかな、と。よく言うじゃないですか、だからイギリスの音楽は曇り空が似合うんだ、とか。そういうのってイメージでしかなかったんですけど、実際にロンドンで暮らしてみて、実感としてわかるようになりましたね。それが曲にも少し出てきてるのかもしれないです。

──現地に行くと本当に、その音楽がその場所で生まれた理由がわかるんですよね。

杉本:ホントに、ホントに。僕はジェイムス・ブレイクだったり、ジ・エックス・エックスだったり、どんよりした音楽が好きなんですけど、ああ~こういうことなんだなっていうのが感覚でわかりました。かといって、どんよりした曲ばかり出来ているというわけでは当然ないんですけど(笑)。

奥野: WEAVER暗くなったねとか言われても困るしね(笑)。

河邉:でも2人が作ってくる曲は、確かに今までとは手触りが違いますよ。変わろうとしている意思も見えるし。それもあって、今すごくワクワクしてますね。

杉本:とにかく、その瞬間瞬間に感じたものを残さないとと思っていて。日本に帰ってきてから記憶を頼りに作ったとしても、それはきっと最初に望んだ形にならないと思うんですよね。感じた瞬間に形にする大切さっていうのは、今までやってきて身をもって感じていることでもあるんです。

──すでに完成している楽曲もあるんですか?

杉本:曲自体はいくつかできてますね。あとは歌詞を乗せてアレンジをしてっていう作業は残っているんですけど、着地点ははっきりと見えてきてます。曲だけじゃなくて、ライブ全体の演出だったりパフォーマンスだったりを含めて今後はより新しいものを見せていきたいので、そういう強度を増していくためにも、曲作りの段階からイメージをしっかり持つようにしてやりたいなという意識でいますね。

──多かれ少なかれ今後のWEAVERが新しい方向へ動き出すのだとすれば、正直ちょっと早い気がしたけれど、ベストアルバムをこのタイミングで出すのは悪くないのかもしれませんね。

杉本:ああ、そうですね。僕らもそういう捉え方をしています。ロンドンに行くことだったり、今年でデビュー5年目を迎えるっていうことだったり、バンドにとって節目と言えば節目なんですよね。そこにさらに、新しいものを作り上げていくっていう大きな決意があるので、今回はこれを出すことに決めました。

──時期尚早だという考えは、やはりメンバーの中にもあった?

奥野:それはもう。早すぎると思いましたよ、正直なところね。

杉本:だからこそ、出すからには意味を持たせたかったんです。リリース順とかシングルだけを並べるっていうんじゃなく、楽曲を作った順に並べたのもそういう理由なんですよね。このとき自分たちがどういう風に思っていたかっていう、そんなライナーノーツというか、言葉を添えてベストアルバムというひとつの作品にできたらな、と。

──まさにWEAVERの歴史ですね。

杉本:そうなんです。1曲目の『66番目の汽車に乗って』はセカンド・シングルの『笑顔の合図』のカップリングに入れた曲なんですけど、僕らがいちばん最初に人前で披露して、自分たちで最初にCDにした曲なんですよ。高校2年生のときだっけ、作ったの?

河邉:うん、2006年。若かったね(笑)。

──とはいえ、そのわりに完成度が高いのがね、憎たらしいというか(笑)。

杉本:だってこの頃、1年に1曲ぐらいしか作らなかったですから。すべてがこの曲に注ぎ込まれているんです(笑)。

奥野:そう考えると、よくバンドやれてたよね(笑)。

杉本:でも、そのおかげで、昔の曲もいつ作ったものなのかちゃんと覚えてるんじゃないかな、と。

奥野:いい風に言うと、そういうことです(笑)。でも不思議とちゃんと覚えてるんですよね、その頃何を考えてたとか、そのときの情景とか。

◆ベストが出ることとか、秋のツアーで新しいことやろうよって話している感じとかを
踏まえて、今の僕らならこういうことを歌えるんじゃないかっていうのが出てきた


──3人それぞれに思い入れのある曲も違うだろうから、選曲はけっこう大変だったのでは?

杉本:それが、3人とも候補曲を出してきたんですけど、違ったのは2曲ぐらいかな。ほぼ同じでしたね。バンドを結成してから、悩んだ時期もたくさんあったんですけど、そのぶんそれぞれがバンドに対してしっかり考えてきたので、ポイントになる時期とか出来事とかが同じだったのかな、と。

──16曲収録というのも、最初から決まっていたの?

杉本:いや、全然。

河邉:CDの容量を超えなければいい、ぐらいの。

奥野:ま、入れられるだけ入れようと。

──結果、WEAVERといえばコレだよねという曲が、だいたい入ってますね(笑)。

杉本:そうですね、だいたい入ってます(笑)。ほんとに結果的にですけど、ベスト盤っぽいベストになった気がします。

──アルバムのラストに収録された未発表曲『Hope~果てしない旅路へ~』が、いちばん新しい楽曲ということですね。

奥野:完成させたのが最近なんですよ。楽曲自体は3年前に出来ていたんです。僕が曲を書いたときは、WEAVERでやりたいというよりは、趣味で書いたような曲で。スケール感があって、シンプルだけどメロディのきれいな曲っていうところにこだわって作ったものなので、バンドのカッコよさを見せるっていう方向性にマッチしなかったんですよね。バンドと曲との距離感がうまくつかめなかったというか。だから、歌詞もうまいこと見つけられなくて、形にできずにいたんです。それがロンドンに行った経験だったり、ベストアルバムっていうタイミングを得て、ようやく完成させることができました。

──大時代的なサウンド感で、いつになく埃っぽいというか、男っぽいというか。

奥野:だからなんか、出しどころがなかったんですよね。すっごいカッコいい曲だけど、どうすればいいんだろうって。今になって、僕らがやっと楽曲の価値を表現できるようになったってことなのかなと思いますけどね。

河邉:3人ともこれはいい曲だって思ってたんですけど、自分たちの立ち位置と楽曲が求めてくるものがなかなかうまく繋がらなくて、歌詞も文字通り書いては消しての繰り返しだったんです。でも今、ロンドンにいることとか、ベストが出ることとか、秋のツアーで新しいことやろうよって話している感じとかを踏まえて、今の僕らならこういうことを歌えるんじゃないかっていうのが出てきたので、それでやっと書けた曲ですね。

──これがまた、途中で違う曲が入ってくるかのような展開なんですよね、しかも変拍子で。

奥野:ああ、転調しすぎっていう(笑)。最初に作ってたときは変拍子になったりしないパターンだったんですけど、杉本がこういうことやったら面白いんじゃないのって提案してくれて、いろいろ試していたらひと味違う曲になりました。

──もうね、WEAVERの小憎たらしいところがこれでもかと入っている曲ですよ(笑)。

奥野 ありがとうございます。なんか、すっごい褒められた気がする(笑)。

──この曲に限らず、ポップでキラキラとした世界観の楽曲でさえ、途中でおっ!?と思わせるという、WEAVERならではの密やかなる遊びがあって。

奥野:そういうことをせずにいられないんですよね。

杉本:とくにライブだと、歯止めが効かなくなるようなところがあって(笑)。

──『Hope~』は間違いなくライブで尺が延びますね。

奥野:延びますねー、ついつい。

杉本:これはそうなる可能性が高いですね。早くやりたいな。

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