【インタビュー】見田村千晴「この作品に収録されている曲って、一瞬で消えてしまう感情とか、ちょっとした心の揺れを描いているんです」
■音楽から逃げない、あきらめないっていう宣言でもあって
■それも含めて私の理想とか願望が曲になっています
──作品のタイトルにした理由は?
見田村:このフレーズがすごく気に入っていたというのもありますが、この作品に収録されている曲って、一瞬で消えてしまう感情とか、ちょっとした心の揺れを描いていると思ったんです。それで、このフレーズがタイトルにピッタリだなって。
──サウンドは繰り返しのピアノのフレーズが頭に残るし、ヒップホップを意識したアレンジが新鮮ですね。
見田村:言葉数が多いこの感じってラップにもつながるし、私自身もそういうのが好きだったりもするので、スタッフともヒップホップテイストのものをやってみたいという話になって。
──曲は、さらに自分を見つめ直すような「砂のお城」や「MUSIC」と続いて、より深く見田村さんの心の中に入り込むような流れになっていきますね。特に「MUSIC」は、音楽に携わっている人間としての葛藤や本音がストレートに伝わってきて共感しました。
見田村:音楽が無ければ生きられないってわけではないし、ライヴを観に行くにしても、自分が強い状態のときじゃないと行きたくないんですよ。小さい頃からそうでした。今はアイドルが好きなんですけど、小さい時に紅白とかで唄ってるアイドルを見て、なんで私はあそこで唄えないんだろう?って悔しくて泣いてましたし(笑)。ライヴを始めたときも、自分がぜんぜんできなくて、他の人が良い歌を唄っていたり、楽器がうまかったりするのを観ると“帰りたい!”と思ったんですよ。
──それでもやっぱり音楽をやるっていうのは?
見田村:意地ですね(笑)。
──音楽なんか聴きたくないって唄ってても、音楽への愛情がにじみ出てますもんね。結局は聞こえてきたノラ・ジョーンズに感動して泣けたりしてしまうっていう。
見田村:聴きたくないって思ってても、音楽はやめられないし、ずっと続けていたら、ノラ・ジョーンズのようになれるのかもしれないって思うんです。恋焦がれていたいし、そうありたいんですよね。“音楽なんか聴きたくない”と唄ってる後ろで“ラララ……”って聞こえると思うんですが、これも、音楽から逃げない、あきらめないっていう宣言でもあって。それも含めて、私の理想とか願望が曲になっています。そうなりたい。
──この次の「花嫁」からは世界観がガラッと変わりますね。
見田村:これは2013年の夏頃、高校の同級生の結婚式で唄うために書いた曲なので、方向性が違いますよね。
──自分だったら結婚する相手にこんなことを言いたいなっていうところもあるの?
見田村:うん。それもあるし、ファンタジックな雰囲気を出して、強気な花嫁を書いてみました(笑)。最初は、さだまさしさんの「関白宣言」の女性バージョンみたいな曲にしたいと思ったんです。披露宴で新婦さんに唄ってほしいですね。
──結婚する相手に対して唄う曲は今までもありましたが、この曲は、まさに結婚式の最中に新婦が新郎に唄うシチュエーション。自分の結婚式でも唄う?
見田村:いや、それは恥ずかしくてできないですね。きっと、結婚式自体しないと思う(笑)。
──「センチメンタル」「だいたい思った通り」ではまた自分に戻りますね。特に「だいたい思った通り」は弾き語りで、より見田村さんの「個」が強くて。このミニアルバムの性格を濃く表した曲で締めるという感じですね。
見田村:また内にこもっていくという(笑)。
──この曲のように、過度な期待をすると、それがダメだったときに落ち込むのがわかっているから、期待せずに“まぁ、そんな感じだよね。だいたい思った通り”って、あきらめながら生きている人って多いと思うんですよね。私も共感しました。
見田村:完全に強がりなんですけどね(笑)。
──ネガティヴなことを言っているわけではないっていうのも面白い部分ですよね。
見田村:そこはやっぱり、私の根っこはポジティヴだからなんでしょうね。
──この曲に限らず、作品自体、パーソナルなことを唄っているけど、これって、今の社会の状態でもあるのかなと思いました。
見田村:全体を通してそう思ってもらえたら良いなって思いますね。こうした方がいいよとか、こうなったらいいじゃんっていうことは言ってないというか。……っていうか、まだ言えないので(笑)。私はこうだけど!って言ってることで、「私も一緒だ」って安心してもらえたら良いかなって思っています。
取材・文●大橋美貴子
『寝そべった夕暮れを切り裂いてバスはゆく』
2014.04.16リリース
VICL-64146 \1,800+税
01.レプリカ
02.もう一度会ってはくれませんか
03.砂のお城
04.MUSIC
05.花嫁
06.センチメンタル
07.だいたい思ったとおり
<ワンマンライブ@渋谷>
5/10 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
<FM802×FM COCOLO FUNKY MARKET>
5月3日(土・祝) 万博記念公園自然文化園お祭り広場・下の広場(大阪モノレール・万博記念公園駅下車)
<ライブ>
★出演:井手綾香/USAGI/桐嶋ノドカ/CREAM/指田郁也/Salley/Suzu/NIKIIE/見田村千晴(50音順)
◆見田村千晴 オフィシャルサイト
◆ミタムラチハルブログ