【ライヴレポート】サカナクション<SAKANAQUARIUM 2014 “SAKANATRIBE”>2014年3月16日(日)TOKYO DOME CITY HALL
サカナクションの全国ツアー<SAKANAQUARIUM 2014 “SAKANATRIBE”>が、3月16日(日)東京・水道橋のTOKYO DOME CITY HALLでおこなわれ、光と音の贅沢な空間で放たれる唯一無二のダンス・ロックで満員の観客を踊らせた。
◆サカナクション~拡大画像~
開演時間を少し過ぎたあたりで会場が暗転すると、メンバーがゆっくりとステージ上に。遅れて山口がステージに上がり、深々と客席に頭を下げる。意外なほど静かで何気ない登場の仕方に戸惑う観客たち。山口がドラムに向き合い、ギターが刻む8ビートにシンセのキラキラしたフレーズがリフレインする静かなオープニング。まるで海辺でさざ波を聴いているようだ。静かに体を揺らす観客たち。これから何が起ころうとしているのかを凝視している。5分程経った頃だろうか、リズムと音量が大きくなり、照明が灯台のサーチライトのように客席を照らしだすと、どよめきにも似た歓声が挙がる。長い長いオープニングだ。
ようやくリヴァーブがかったボーカルで歌い出す山口。オープニングは「サンプル」。後半、4つ打ちのリズムにのり暗闇から一斉に手を伸ばす観客たちの姿は、まるで深海に群生する生物のように見える。2曲目は「アルクアラウンド」。「みんないくぞ~!」と静寂を破るかのように山口が叫ぶと、待ったましたとばかりに「ウォ~!」と爆発的に盛り上がる観客たち。サビでは一斉にジャンプする。
立て続けに「セントレイ」では、点滅する照明に合わせて観客たちが手拍子。エレクトロ・サウンドのイメージがあるサカナクションだが、ライヴを観ていると土着的な本質が伺い知れる。シンセのイントロから「表参道26時」、久しぶりの演奏となった「哀愁トレイン」では鍵盤の音色に、アンドロイド+トレイン=『銀河鉄道999』なんていう連想をしてしまった。
サビのストロボ連射にテンションが上がった「Klee」から「エンドレス」ではギターを置いた山口がマイクスタンドに向かう。ブルーのライトがステージから観客に挑むように伸びていく。「シーラカンスと僕」では歌う山口の上からグリーンの灯りが回転しながら山口を包み、まるでUFOに連れて行かれるかのような演出も。
この日の開演前の観客の姿を映した映像がスクリーンに挿入された「ユリイカ」を終えると「一緒に踊ろう!」と始まった「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」ではバルコニー上の観客まで腕を振り上げ踊っている。両手でアクションしながら、ブレイク時に岡崎英美(key)を指さすとバッハ・フレーズで応える岡崎。「SAKANATRIBE」とスクリーンに映ると高く腕を突き上げる山口。真っ赤に染まったステージを前に一斉にジャンプする観客の姿はトランス状態だ。
「モノクロトーキョー」から“みんなまだ踊れる!?”と「夜の踊り子」へ。続けて“一緒にいくぞ~!”と「アイデンティティ」のイントロが鳴り、1、2、3、4とカウントから大合唱、左右に腕を振り盛り上がる。この日一番のヒートアップだ。終了と同時にグリーンのレーザー光線が頭上を飛び交い、岩寺基晴(Gt)と草刈愛美(Ba)が全面に出てスティックを握りフロアタムを叩く。「ルーキー」で本編は終了。
しばしのインターミッションの後、雨の音が響き渡るとラップトップを前にサングラス・ヘッドフォン姿の5人登場。ステージ上のブースに並び、「Ame(B) -SAKANATRIBE MIX-」でEDMに振り切ったパフォーマンスを披露。恐らく日本のロック・バンドではサカナクションにしか実現できない光景だ。ディスコティックな照明に照らされながら泡が舞い、アンコールはそのまま「ミュージック」、「Aoi」と続く。サビに合わせてステージ両方の袖から青い布が筒状に放たれ客席に。映像や照明のハイテクな印象に比べ手作り感がある演出で、何か微笑ましい光景であった。
この日初めてのMCを始める山口。“今日は本当はファイナルだったはずなんですが…テヘペロ。”とおどける山口に観客は爆笑。インフルエンザになり延期した仙台公演について話すと、“でも今日は東京での最後の公演なので、気合いを入れて演奏しました!”の声に大きな拍手が起きた。アルバムのリリース・ツアーとは違い古い曲を存分に演奏できたというこのツアー、メンバー1人ひとりに「ツアーで育った曲」を尋ねる場面も。そしてオープニングの演奏に関しては“0から100のボリューム”を体現したことを解説。実際に生音とPA有りのサウンドをバンドの演奏で聴かせてみせ、PAや照明に頼らないバンドのクオリティの高さを示した。
2013年末の紅白に出場したことにより、新しいお客さんに来てもらえるようになったこと、ライヴ会場に来てもらうことこそロックの未来に繋がる、という思いを吐露した後“これからも“チームサカナクション”は邁進して行きますので、よろしくお願いします!”との真摯な挨拶から歌われた最後の曲は1月にリリースされたシングル「グッドバイ」。演奏を終え手を繋ぎ一礼してステージを後にした5人。エレクトロとロックを融合させたサウンドとそれを魅せる演出が印象的だったが、何よりも際立って聴こえたのは楽曲の良さだ。それこそがサカナクションの最大の魅力であり、だからこそ新しく獲得したファンがライヴ会場にまで足を運んでくれているのだろう。
取材・文●岡本貴之
写真●石阪大輔(hatos)
★セットリスト
SAKANAQUARIUM 2014 "SAKANATRIBE" @ TOKYO DOME CITY HALL
1.サンプル
2.アルクアラウンド
3.セントレイ
4.表参道26時
5.哀愁トレイン
6.Klee
7.エンドレス
8.シーラカンスと僕
9.流線
10.ユリイカ
11.『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』
12.インナーワールド
13.三日月サンセット
14.SAKANATRIBE
15.モノクロトーキョー
16.夜の踊り子
17.アイデンティティ
18.ルーキー
EN1.Ame(B) -SAKANATRIBE MIX-
EN2.ミュージック
EN3.Aoi
EN4.グッドバイ
◆サカナクション オフィシャルサイト
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