TASCAM「DR-40」、X-Y/A-B方式切り替え可能な内蔵マイク&XLR/TRS入力搭載し4トラックモードも備えたレコーダー
TASCAM「DR-40」は、24ビット/96kHz対応のレコーダー。A-B方式とX-Y方式を切り替えて使用できる可動型単一指向性ステレオコンデンサーマイク搭載で録音時のまさにその場の音を残せるほか、ファントム電源対応のXLR入力搭載で外部マイクの利用も可能。さらに録音の失敗を防ぐほかさまざまな使い方ができる4トラックモードも搭載する。
◆TASCAM「DR-40」拡大画像
本体サイズは「手のひらに収まる」というよりも「がっちりつかめる」という感じで、レコーダーとしては大きめ。これは本機の特徴である外部入力端子搭載のためなので、仕方のないところ。しかし、その分ボタンなどのレイアウトにも余裕があり、無理なく使用できるという印象だ。
録音中は録音ボタンの周囲が赤く点灯するほか、液晶パネルの左右に録音モードを示すインジケーターや、歪む直前に赤く点灯するピークインジケーターが配置されるなど、状態を把握するのも容易だ。操作パネルは液晶と同じ面に集中するが、外部入力の設定、入力レベルの設定は左側面に用意される。本体ボディは樹脂製、側面と裏面の一部にはシボ加工が施され手が滑るのを防いでいるが、デザイン的には好みが分かれそうだ(個人的には非常に男らしいデザインだと思う)。
■SD/SDHCカード対応、三脚用ネジ穴も用意
記録メディアとしては2GBのSDカードが付属、購入後すぐに録音が楽しめる。SDHCカード対応で長時間の収録も可能だ。電源は単3形電池3本で20時間以上の駆動が可能(EVOLTAアルカリ乾電池使用、16bit/44.1kHz、内蔵マイク録音で2チャンネル録音時)。パソコンとのデータのやりとりに使うUSB端子からの給電も行えるし、純正のACアダプターも用意。電源面での不安はない。
SDカードスロットは右側面、電池ケースは裏面に配置。裏面には三脚用のネジ穴も用意、これがデジタルカメラと同じ1/4インチ規格なのがうれしいところ。デジカメ用として販売される三脚は低価格でコンパクト、種類も豊富。こうした三脚と組み合わせて使えば、いろんな角度からしっかりと音源をねらうことができる。
▲左側面には外部入力のモード切り替え、誤操作を防ぐホールドスイッチ、入力レベル調整用のボタン。右側面にはUSB端子とSD/SDHCカードスロットを配置。
一方、三脚なしでテーブルの上などの平らな位置に置くと内蔵マイクはちょっと下を向いてしまう。これをカバーするために、三脚のネジ穴にはめこむ「チルトフット」というゴム製のパーツも付属する(溝は切られていないので、押し込んではめる)。小さなパーツなのでなくしてしまいそうだが、使用しない時には電池ケース裏に収納することができるようになっている。
■A-B方式&X-Y方式でねらった音を
「DR-40」のルックスを印象づけている最大の要素が上部に備えられた可動式の内蔵マイクの存在。もちろん、これが機能面でも大きな特徴となる。2つのマイクを左右に開くA-B方式、向かい合わせるように配置するX-Y方式の切り替えで、録音したい音源や求めるサウンドにあわせて最適な方式がチョイスできる。
A-B方式なら広がりのあるサウンドが得られるし、X-Y方式なら中抜けしにくくねらったポイントをしっかり収録可能。コンサートのステージならA-B方式、自身の楽器演奏の記録ならX-Y方式といった感じでさまざまなシーンに対応できるし、両者の違いを比べてみるのもおもしろい。
今回は試す時間がなかったが、スペック的には「音圧125dB SPLの大音量を確実に捉える耐高音圧設計」ということで、大音量のライブでも安心して使えそうだ。
▲マイクが外を向いた「A-B方式」(左)と、内側を向いた「X-Y方式」(右)。対象を捉えるマイクの左右が入れ替わることになるが、マイク角度の変更が検出され、入れ替えるかどうかが尋ねられる。任意の方向にセットすることも可能。
■外部マイク/ライン入力搭載、4チャンネル録音も
▲XLRバランスタイプのアナログマイク、TRS標準ジャックのバランスアナログ入力端子のコネクター部は、NEUTRIK社製ロック付XLR/TRSコネクターを採用。
さて、この外部入力。内蔵マイクの代わりにステレオ録音に使えるのはもちろん、内蔵マイクと合わせて4チャンネルの同時録音も可能だ(4CHモード)。小規模な楽器演奏の収録なら楽器やボーカルに外部マイクを使い全体の音は部屋鳴りも含め内蔵マイクで押さえる、より大きなステージなら内蔵マイクで会場全体の音を収録しつつXLRにPAミキサーからのライン録音も押さえる、といった使い方が可能だ。内蔵マイクと外部マイクを使う際には、その距離からくる位相差が音に影響を及ぼすが、それを吸収するためのディレイも調整可能となっている。
4チャンネル録音といっても作成されるファイル自体は特殊なものではなく、2つのステレオのWAVファイルであり、パソコンに持っていって活用する際にも不安はない。「DR-40」本体でも4チャンネル同時再生が可能、しかも各ステレオトラックを個別に再生したり音量調整をすることも可能となっている。
この4チャンネル録音は、「DR-40」が持つリニアPCMレコーダーとしてはユニークな仕様により実現している。というのも、「DR-40」は通常のステレオトラックのほかにもうひとつのステレオトラック録音が可能。これを生かした便利なモードがさらに2つ用意される。
■録音失敗を防げるデュアルレコーディング
まずは「デュアルレコーディング」(DUALモード)。高音質で録音するには、機器の録音レベルをできるだけ高く設定することが重要だが、入力される信号がオーバーしてしまえば歪んでしまう。デュアルレコーディングでは、高い録音レベルを設定する一方で、低いレベルによるバックアップ録音を同時に行うことで、それを回避する。1つのソースで2種類の入力レベル設定のファイルを作成するというわけだ。
▲通常の録音に加え、-7dBの録音も同時に行っている画面。下のレベルメーターの振れが小さいことに注目。
■MTRライクに使えるオーバーダビング
最後は再生ファイルに新たな音を加えて録音する「オーバーダビング」(OVERDUBモード)で、さらに2つのモードに分かれる。1つめは再生音と入力音をミックスして新しいファイルを作成する「MIXモード」。TASCAMの低価格機種でも見られるもの(「GB-10」なども同様)で、カラオケの歌唱をオケとともに録音する感覚でファイルが作成される。
▲SEPARATEモードで収録したファイルの構成。末尾S12が再生ファイル、それに合わせて録音したファイルがS34。V34t1、V34t2はその前に録音したテイク。
同時再生できるファイルは再生音と最後の録音ファイルの2つに限られるものの、MTRに近い使い方が可能。録音後にバランスや定位を調整してミックスダウン(新たにファイルを作成)することまで本体で行える。
同時再生するファイルはメニュー操作で入れ替えることもできるが、テイクを重ねた場合は操作がちょっと面倒になる。最良のテイクを選ぶ場合も、ミックスするにしてもパソコンに持って行って作業したほうがいいだろう。こうした作業を前提とすれば、複数パートのレコーディングも本機で行えるということになる。MTRほど操作が難しくなく、とにかくどんどんテイクを残していける。これは「DR-40」ならではの魅力だろう。こんなふうにいろいろ使い方を考えるのも楽しい。
ちなみに録音モードの変更には、「REC MODE」というボタンが独立して用意される。メニューの深い階層をたどることなく、さまざまな録音モードが試せる。これはほかの機能にも言えることで、少ないステップで目的の設定画面に到達できるよう配慮されている。「DR-40」本体のボタンの数を見て難しそうと敬遠する人もいるかもしれないが、慣れるほど速く操作できるようになるので心配は無用だ(そんなの当たり前と思うかもしれないが、慣れても操作の速度が上げられないユーザーインターフェイスは意外と多い)。このダイレクトな感じが気持よくなってくる。
■録音・再生に多彩な機能を搭載、0.5~1.5倍の変速再生も
録音に関するフィーチャーはさらにある。まずは自身の演奏録音に便利なセルフタイマーレコーディング機能。カメラのセルフタイマー同様、5秒もしくは10秒後に録音を開始することができる。また、別売りのフットスイッチ、リモートコントローラーによるコントロールも便利。ハンズフリーでのトランスポートコントロールや、本体から離れた場所での録音操作が行える。空調機器などの不要な低音をカットするローカットフィルターは3段階を用意。そして、M-Sステレオマイクの使用にも対応。全指向性と双指向性マイクの組み合わせによるステレオ録音方式に対応するために、M-Sデコード機能を搭載している。
▲変速再生やループ再生はPB CONTボタンで設定画面がすぐ呼び出せる。カーソル上限で速度を、ENTER/MARKボタンでループ範囲を指定する。
パソコンから好きな曲のMP3ファイルを「DR-40」に取り込んで楽器練習のお供に、まずは変速再生でゆっくりと、オリジナルと同じ速度で演奏できるようになったらレコーディングして出来をチェック、そんな使い方もバッチリだ。
再生関連ではこのほか、ばらついた音量を均一にするレベルアライン機能(会議録音の聞き取りに便利)、音質調整できるイコライザー、範囲指定によるループ再生機能、再生中の再生ボタンで数秒前に戻るジャンプバック機能も用意。
さらに楽器用にチューナーを搭載するなど、まだまだ書ききれないほど多くの機能を備えた「DR-40」。高音質フォーマット対応、高品位マイク搭載の基本は押さえつつ、多彩な機能で幅広いシーンで活用可能、かつ遊べるレコーダーでもある。内蔵マイク&外部マイクを使ってさまざまな録音方法を手軽に試しめるので、宅録初心者ならまずはチェックしてほしい機材だ。
<おもな仕様>
記録メディア:SDカード(64MB~2GB)、SDHCカード(4GB~32GB)
ファイルシステム:FAT16/32
ファイルフォーマット:WAV、BWF、MP3
WAV / BWF:サンプリング周波数 44.1kHz/48kHz/96kHz、量子化ビット数 16/24ビット
MP3:サンプリング周波数 44.1kHz/48kHz、録音ビットレート 32k/64k/96k/128k/192k/256k/320kbps、再生ビットレート 32k~320kbps、VBR対応、ID3TAG Ver.2.4対応
チャンネル数:4チャンネル(2ステレオ)
再生スピードコントロール(VSA):0.5倍~1.5倍(0.1倍単位)、※44.1kHz/48kHz時のみ
内蔵マイク:単一指向性、ステレオ、A-BポジションとX-Yポジションを切り換え可能
EXT MIC/LINE IN:XLR/TRSコンボジャック(1:GND,2:HOT,3:COLD)
PHONES/LINE OUT:1/8(3.5mm)ステレオミニホンジャック、アンバランス
内蔵スピーカー:0.3W、モノラル
ローカットフィルター:カットオフ周波数 40Hz/80Hz/120Hz
USB:Mini-Bタイプ、フォーマット USB2.0 HIGH SPEED マスストレージクラス
REMOTE:2.5mmTRSジャック
エフェクター:リバーブ、入力信号または再生信号にかけることが可能、プリセット数 6(HALL 1、HALL 2、ROOM、STUDIO、PLATE 1、PLATE 2)
チューナー:測定範囲 C1~B6 、A4キャリブレーション範囲 435Hz~445Hz(1Hz単位)
三脚取り付け用穴:1/4インチ・カメラネジ
電源:単三形電池3本(アルカリ乾電池またはニッケル水素電池)、USBバスパワーから供給、AC100~240V・50-60Hz(別売ACアダプター PS-P515U)
消費電力 2.5W(最大時)
外形寸法:70(幅)×155(高さ)×35(奥行き)mm(マイク閉状態)
90(幅)×155(高さ)×35(奥行き)mm(マイク開状態)
質量:213g(電池を含まず)
動作温度:0~40℃
付属品:2GB SDカード、Mini USBケーブル
◆DR-40
価格:オープン(オンラインストア価格:21,800円)
◆DR-40 製品詳細ページ
◆タスカム
◆BARKS タスカムチャンネル
◆BARKS 楽器チャンネル
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